いつの時代にも、時代を越えて愛される映画があります。ですが、どの映画もそれぞれ作られた時代の空気をまとっています。あくまで私見ですが、70年代は今の映画の直接的な源流となった映画が多くつくられた時代と思います。
例えばSFホラーというジャンルを開拓した『エイリアン』や、数えきれないほど多くのフォロワーを生んだ『ゾンビ』や『悪魔のいけにえ』。いずれも今なお色褪せない作品です。
今回は70年代のおすすめ名作映画をご紹介!
『エイリアン』(1979)
SFホラーの元祖とでもいうべき作品ですね。
ダン・オバノンやリドリー・スコットなど、今や名匠と呼ばれる人たちのブレイク作でもあります。それだけにこの映画に込められた熱量やアイデアは半端じゃない。
終わったと見せかけて最後にもうひとつ山場を設けるストーリーも元祖はこの作品ではないでしょうか。
ギーガーの独特なクリーチャーデザインとともに今尚色褪せない作品ですね。
『悪魔のいけにえ』(1972)
1970年代の映画の中でも圧倒的に恐ろしい本作。
テキサスを訪れた若者が人の皮のマスクをかぶった殺人鬼「レザーフェイス」とその家族に襲われる様を描いた作品です。
その残酷さ、暴力描写ゆえに上映禁止国は多いですが、一方で作品のマスターフィルムがニューヨーク近代美術館に永久保存されるなど、その芸術性も高く評価されています。
『悪魔のいけにえ』の恐怖は今なお衰えず、私たちに迫ってきます。
『ジョーズ』(1979)
動物系のパニック映画は60年代以前から存在していました。その好例がアルフレッド・ヒッチコックの『鳥』ですが、その動物パニック映画の最高峰と呼べる作品がスティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』ではないでしょうか。
その衝撃と影響力の大きさは今現在になっても多くの亜流作品、フォロワーを生み出し続けていることからも明らかです。
『エクソシスト』(1973)
オカルトホラーも70年代には隆盛を極めました。その中でも最もヒットしたのはこの『エクソシスト』。
当初は神父ですら悪魔つきを否定するという物語が現代的で怖さを倍増させていると思います。
『時計じかけのオレンジ』(1972)
スタンリー・キューブリックの70年代の傑作といえば『時計じかけのオレンジ』でしょう。
管理された全体主義と、その中で暴力とセックスに明け暮れる若者の無軌道さのジレンマを描いた作品。その反社会的かつ個性的な作品でカルト映画の名作としても名高いです。
監督の意図とは別に「暴力を誘発する作品」とされ、いくつかの国で上映禁止になりました。
しかしニューヨーク映画批評家協会賞、ヴェネツィア国際映画祭などでの受賞もあり、名作と呼ばれる映画であることも確かです。
『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)
『ルパン三世 カリオストロの城』
高度経済成長期を抜けて、人々の暮らしが豊かになった70年代の終わり。そんな時代に『お宝』を盗むルパンというキャラクターを成立させられるのか、という問題のなかで、宮崎駿が出した答えは「ファンタジー」という舞台でした。
本作のルパンは他の作品と比べて年齢も高く設定されています
中年男と少女の古典的なファンタジー。
『ロッキー・ホラー・ショー』(1975)
映画化の際、監督のジム・シャーマンは大作の話を蹴り、自らの意思を貫き通す道を選んだそう。
映画は興行的には失敗作となりますが、その一方で熱心なリピーターを生み出します。彼らは今でいうコスプレをして集い、映画とともに歌い踊り、そして今も世界のどこかで上映されている、そんな作品。
この観客の熱狂ぶりを指して「世界で最初のカルト映画」という称号で呼ばれることもあります。
『ゾンビ』(1978)
今の視点から見ると「ホラー映画」としてはそんなに怖くないのですが、それでも今なお『ゾンビ』が名作と呼ばれ続けるのは、ホラー映画の裏にある、人間社会への風刺が今でも鮮烈なままだからだと思います。
「例えば生前の行動習慣のなごりでショッピングセンターに集まるゾンビ。これは社会に何の疑問も持たず、ただメディアに煽られて過剰な消費行動をとり続ける人々への揶揄です。
『ゾンビ』公開から20年後の90年代にもデヴィッド・フィンチャーが『ファイト・クラブ』で人々の過剰な消費についてより直接的な描写で批判しています。
そういった意味でもゾンビの持つテーマ性は今においても色あせてはいないのです。