今回は実話がもとになったおすすめ映画の特集です!
『シンドラーのリスト』
『シンドラーのリスト』は1993年のアメリカ映画。
スティーヴン・スピルバーグ監督、リーアム・ニーソン主演で、第二次世界大戦中のドイツで多くのユダヤ人をホロコーストから救った実在のドイツ人実業家、オスカー・シンドラーを描いています。
第二次世界大戦期のドイツ、ナチスによるユダヤ人迫害が熾烈を極めていた頃、実業家のオスカー・シンドラーは自社工場の労働者としてユダヤ人を雇い入れます。当初は単なる労働力として雇い入れたにすぎませんでしたが、次第にシンドラーの中には彼らを救いたいという想いが芽生えてゆきます。
『ホテル・ルワンダ』
『ホテル・ルワンダ』は1994年に起きたルワンダ虐殺を扱った映画です。
虐殺の中で自らが勤務するホテルに家族や難民を秘密裏にかくまい、1200人を虐殺から救ったポール・ルセサバギナの実話をもとにした映画です。
「アフリカのシンドラー」とも呼ばれる彼の物語は正に感動のヒューマン・ドラマそのもの。
しかし、劇中でも語られていたように西欧諸国とほぼ利害のないルワンダの虐殺は介入はおろか虐殺行為との認定もなかなか行われず、その結果として100万を越える死者を出す結果となってしまいました。
例えば9.11のテロ事件は100年後の世界史にも刻まれるでしょうが、100万人が虐殺されたこのルワンダ虐殺は果たして今後の歴史に覚えていてもらえるのでしょうか。
もちろん、数の大小ではないことはわかっていますが、 それ以上にアフリカという地域は軽視されているのだと感じます。
映画自体は高い評価を受けたにも関わらず、そのテーマとルワンダという日本人にとって馴染みのない場所だったことによって当初は日本で劇場未公開だった今作。
世界の無関心は日本も例外ではないということです。
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
『「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」』は2002年公開のトム・ ハンクス、レオナルド・ディカプリオ共演作品。監督はスティーヴン・スピルバーグ。
実在の天才詐欺師、フランク・アバグネイルの半生をコミカルに、そして鮮やかに描いた作品です。
親の離婚をきっかけに衝動的に家を飛び出したフランク・アバグネイル。まだ10代だった彼は、生活のために詐欺行為をくりかえすようになります。
ある時はパイロット、ある時は医者、ある時は弁護士と華やかな職業へ自分を偽り日々を暮らすアバグネイルだったが、FBI捜査官のカールは着実にアバグネイルに近づいていました。
二人の追いかけっこの中で独特の絆が生まれてくるのは見所のひとつ。
ちなみにこの映画でトム・ハンクスが演じたカール捜査官は実在の人物ではありません。ジョー・シアという人物をモデルに、複数の人物を織り混ぜて作られた架空の人物だそうです。
なお、劇中でフランクの父を演じたクリストファー・ウォーケンは、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、英国アカデミー賞では助演男優賞を受賞しています。
『エレファント・マン』
『エレファント・マン』は1980年公開のドラマ映画です。19世紀末のロンドン。「エレファントマン」と呼ばれたジョゼフ・メリックの生涯を描いた作品です。
かのマイケル・ジャクソンもジョゼフ・メリックの人生について「自分自身について考えさせられます。他人事だとは思えず、涙が出てきます」と発言。
監督は「カルトの帝王」と称されるデヴィッド・リンチ。主演は「エイリアン』の『ジョン・ハートと、『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスが務めています。
『ドリーム』
『ドリーム』は2016年公開のアメリカの伝記映画です。
アポロ計画の前身である、マーキュリー計画。そのマーキュリー計画に大きな功績を果たした3人の黒人女性たちの奮闘を描くヒューマンドラマ作品です。
舞台は1960年代初頭のアメリカ。まだ人種差別が色濃く残る時代、NASAに務める3人の黒人女性は、それぞれの現場で差別と直面しながらも、努力と才能によって、宇宙開発計画になくてはならない存在へと成長していきます。
さて、この『ドリーム』、劇場公開時には『ドリーム 私たちのアポロ計画』という副題つきで公開されたのですが、実際の映画の内容はアポロ計画の前身であるマーキュリー計画についてだったことから邦題詐欺では?との声も大きく、ソフト化される際に『ドリーム』というタイトルに改題されたという逸話があります。
『コンカッション』
タイトルの「コンカッション(concussion)」これは「脳震盪」を意味しています。アメリカの一大人気スポーツアメリカン・フットボールの選手に正体不明の症状が現れます。アルツハイマーにも似たその症状にナイジェリア人医師が立ち向かっていく、実話に基づく映画です。
原因不明の病気の解明、それは全米が熱狂し、大きな産業にもなっているアメリカン・フットボールの危険性に警報を鳴らすという、パンドラの箱を開けるにも等しい行為なのでした。
ウィル・スミス演じる主人公のベネット・オマルは優秀な検死官。ある日オマルの元に一人の遺体が運び込まれます。彼の名前はマイク・ウェブスター。フットボールのスター選手でした。
その華々しい名声と知名度の一方で晩年のウェブスターは頭痛とアルツハイマーにも似た症状に悩まされ続けていました。それでもなおウェブスターの名声は市民の間に生き続けており オマルの同僚のダニーはウェブスターの解剖に反対します。
しかし、オマルはアルツハイマーとするにはウェブスターの死亡時の年齢(50歳)では若すぎることを指摘。自費を投入してでもこの病気の紹介を解明しようとします。
その原因はフットボールのプレーに起因する度重なる脳震盪が原因で脳内にキラータンパク質が発生し、少しずつ精神を蝕んでいくためでした。オマルはその病気に「CTE(慢性外傷性脳症)」と名をつけ、論文で発表することにします。
しかし、論文を発表した途端にNFLからオマルに論文撤回の圧力がかかるようになります。
相手は数千万人が熱狂する人気スポーツ。莫大な金と雇用を生む一大ビジネスを「危険」と告発することは、どんな事なのか、フットボールに疎いオマルは気づいていませんでした。
裁判を題材にした映画だと「エリン・ブロコビッチ」や「告発の行方」などがありますが、そのどちらも裁判の結末までしっかりと描かれます。高のカタルシスを与えてくれます。
しかし、『コンカッション』は解決までの道のりが始まったところで幕を閉じます。
それこそがこの真実の重さを伝えているように思います。現実での映画的なエンディングを待たずに、今すぐに伝えなければならないことがある。
『コンカッション』からオマルの戦いに加えてそんなメッセージを感じます。
『ザ・ウォーク』
『 ザ・ウォーク』は1974年、フランスの大道芸人のフィリップ・プティが行ったワールド・トレード・センターでの綱渡りの挑戦を描いた実話を元にした作品です。
序盤はフィリップ・プティの成長や恋愛、師弟の確執などプティの人生を丁寧に楽しく見せてくれます。
しかし、WTCへの挑戦(当然ながら違法)へ一気にストーリーが加速すると、まるで『「オーシャンズ11」』や『ミッション:インポッシブル』のような雰囲気へ変貌していく。
そして実際の綱渡りの画面になると、そこは壮大な時間の流れる、ただひたすらに美しく息をのむ圧巻の映像美に包まれます。
これも公開当時に映画館で観ましたが、上映中、ずっとスクリーンに夢中になれた、本当におもしろい映画でした。さすがはロバート・ゼメキス監督。
退屈さはこの映画には存在しないといってもいいくらいです。本当におすすめのエンターテインメント映画です。
『黒い司法 0 からの奇跡』
『黒い司法 0%からの奇跡』は2020年に公開されたデスティン・ダニエル・クレットン監督のドラマ映画。主演は『フルートベール駅で』でも主演を務めたマイケル・B・ジョーダン。
今作は貧しい死刑囚のために弁護士活動を行う弁護士ブライアン・スティーヴンソンが2014年に発表したノンフィクション『黒い司法 死刑大国アメリカの冤罪』を原作としています。
『黒い司法 0%からの奇跡』ではマイケル・B・ジョーダン演じるブライアン・スティーヴンソンが無実の死刑囚であるウォルター・マクミリオンの冤罪を晴らすために挑戦するさまが描かれます。
今作におけるウォルター・マクミリオンの冤罪は事実なのですが、恐ろしいのはこれが80年代末に起きた事件だということ。アラバマ州は人種差別が最も激しかった場所の一つだとは言え、黒人が法の下での平等を勝ち取って20年余りたっていてもまだ司法までゆがめるほどの差別が残っているのかと愕然とします。
「現在も冤罪の可能性のある死刑囚の10人に1人しか釈放されていない」という衝撃的な事実。そしてその裏に黒人をはじめとする特定の人種への根深い差別意識が横たわっています。
元アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマも「2019年のベスト映画リスト」に本作を選出したことからも、重大な社会的メッセージと差別問題への気づき、そして感動を与えてくれる名作だと思います。
『42 〜世界を変えた男〜』
『42 〜世界を変えた男〜』は黒人初のメジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンの実話をもとにした映画です。野球映画としてはオープニングの成績の新記録を樹立。
アメリカを今なお覆う人種差別の問題ですが、この映画は戦後すぐのアメリカ社会が黒人にどういう対応をしていたかが垣間見れる作品となっています。
今作は野球そのものよりも、野球で生活する中でどのような差別や妨害があったのかに焦点が当てられています。50~60年代を舞台にした映画を観ているとしばしば人種隔離政策であったり、有色人種への差別が描かれています。
作中、もっとも我々観客からの殺意を受けたであろう、フィリーズの監督のジャッキーに対する人種差別発言の数々。
短気を抑えること、という言葉を守りながらも、怒りや悔しさに耐えきれず、バックヤードで感情を爆発させるジャッキー。
その中でどうあきらめずにジャッキーは生きぬいてきたのか。
そのジャッキー・ロビンソンの偉大な功績から現在アメリカの全球団で背番号42は永久欠番になっています。
差別の中で戦い抜いてきた実話をもとにした作品だからこそ、この映画は強く胸を打ちます。
『7月4日に生まれて』
『7月4日に生まれて』は1990年に公開されたオリバー・ストーン監督の戦争映画。主演はトム・クルーズ。ベトナム戦争で脊髄損傷となった実在のベトナム戦争帰還兵のロン・コーヴィックを演じています。
『プラトーン』『7月4日に生まれて』と合わせて『ベトナム三部作』とも呼ばれています。
原作はロン・コーヴィックの同名著作『7月4日に生まれて』。
トム・クルーズ演じるロン・コーヴィックが自国の正義を信じて戦ったベトナム戦争と、祖国に帰ってきて戦場で負ったPTSDに苦しみながら、国内でのベトナム戦争への評価のギャップに戸惑う姿を通して、ベトナム戦争とは何かを問いかけます。
90年代の作品でありながら、そう思えないほどのリアルさがあるのは自らも従軍経験を持ち、実際にベトナム戦場を体験したオリバー・ストーンだからこそでしょう。