「アリータ バトルエンジェル」とは日本のSFマンガ『銃夢』を原作にしたハリウッド映画。ジェームズ・キャメロン製作、ロバート・ロドリゲス監督のSFアクション作品です。
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『アリータ:バトル・エンジェル』の予告編
『アリータ:バトル・エンジェル』のスタッフ・キャスト
監督
ロバート・ロドリゲス
脚本
ジェームズ・キャメロン
レータ・カログリディス
ロバート・ロドリゲス
原作
木城ゆきと
『銃夢』
製作
ジェームズ・キャメロン
ジョン・ランドー
製作総指揮
デヴィッド・ヴァルデス
出演者
ローサ・サラザール
クリストフ・ヴァルツ
ジェニファー・コネリー
マハーシャラ・アリ
エド・スクライン
ジャッキー・アール・ヘイリー
キーアン・ジョンソン
『アリータ:バトル・エンジェル』のあらすじ
ザ・フォールと呼ばれる没落戦争後の世界。
一部の選ばれた人間はザレムとよばれる空中都市に暮らし、それ以外の人間は地上で暮らしていた。
ある時、医師としてアイアンシティでサイボーグ修理業を営むイドはスクラップの中から少女のサイボーグを見つける。
サイボーグを持ち帰ったイドはラボで修理し、目覚めた彼女に亡くした娘と同じ「アリータ」という名前をつける。
目覚めたときアリータは自身の記憶をなくしていたが、アイアンシティに暮らす少年、ヒューゴとの出会いによって、新しい人生を楽しみ始める。
アリータが興味をもったのはモーターボールというスポーツ。イドは反対するが、アリータはとともに街でモーターボールに興じる。
しかし彼女には自分自身が本当は何者なのかという疑問が常につきまとうのだった。
ある時、アリータはイドが左腕を負傷していることに気づく。奇しくも巷を賑わせている連続女性殺人事件の新たな犯行が行われた夜の翌日であり、アリータはその夜にイドがこっそり外出していたことに気づいていた。
アリータはイドへの疑いを深め、ある夜再び外出するイドを尾行する。
イドが武器を準備し、女性を襲おうとしているところに割って入るアリータ。
突然のことに驚くイドの周辺にサイボーグ達が集まってくる。
実はイドの正体は賞金首の犯罪者を狙うハンター戦士であった。
イドの襲おうとしていた女性や、集まってきたサイボーグもすべて犯罪者であり、イドは逆に窮地に陥ってしまう。
そんなイドをアリータは命を懸けて助けようとするが、その戦闘能力はスバ抜けており、一人でサイボーグをほとんど壊滅させてしまう。アリータはその戦いの最中に記憶の一部が蘇り、自分がかつて戦士であったことに気づく。
感想・レビュー
泣きました!
泣きました!ストーリーとかではなくて、あれだけのクオリティのバトルアクションを実現してくれたロバート・ロドリゲスに泣きました。
また今作の『アリータ:バトル・エンジェル』は2000年からジェームズ・キャメロンが企画を暖めていた念願の作品でもあります。当初はキャメロンが監督も行う予定でしたが、先に『アバター』をやることになり、またその続編も監督することになったため、ロバート・ロドリゲスに打診が回ったそう。
ロバート・ロドリゲス
日本の宣伝をみていると、キャメロンばっかりフィーチャーされてますが、ロドリゲスも凄いんだよ!と声を大にして言いたいですね。
いい意味でバカバカしくて、残酷描写もギャグにしてくれるのがロドリゲスの良いところ。
『アリータ:バトル・エンジェル』でも街の風景がメキシコや南米の雰囲気を感じさせるのはロドリゲスの作品らしい分かりやすい記号ですね。
それと、アンドロイドとはいえ、バラバラに切り刻んじゃうのもロドリゲス。(たからPG-12指定になったのかな?)
アクションシーンのカットを細かく切るのと、そこにギャグ絡ませるのもロドリゲスらしさが垣間見れました。
このように『アリータ:バトル・エンジェル』はロバート・ロドリゲスらしさなくて成立しなかった作品とも思います。
ジェームズ・キャメロンの書いた脚本から素直に物語を辿ればツッコミどころかなりあるんだけど、それでも許せるのはキャメロン作品ではなく、ロバート・ロドリゲスの映画と思えばこそ!
原作SFマンガ「銃夢」
原作となる「銃夢」は木城ゆきと氏による日本のSFバトルマンガ。「ビジネスジャンプ」で1990年から1995年まで連載されていました。
映画版では「アリータ」となった主人公の名前ですが、原作では「ガリィ」となっています。
これは「ガリィ」が英語では Gully(渓谷という意味)になるためだそう。
確かなキャスト陣!
さて、この『アリータ:バトル・エンジェル』は俳優陣も要所要所に実力派の方々がいるので安心。主演のローサ・サラザールに加え、アカデミー賞受賞者のクリストフ・ヴァルツとマハーシャラ・アリを紹介します。
アリータを演じるのは「メイズ・ランナー: 最期の迷宮」のローサ・サラザール。
ローサ・サラザールは1985年生まれ、カナダ出身のアメリカ合衆国の女優です。
アメリカ・メリーランド州グリーンベルト育ち。幼少期から女優を目指し、そのためにニューヨークへ引っ越し、24歳の時にロサンゼルスへ移っています。
2010年から女優としてドラマ出演をスタート。
映画では2013年の映画「メアリーと秘密の王国」で声の出演という形でデビューしています。
2015年の映画『メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮』から『メイズ・ランナー』シリーズに参加したことでブレイク、注目を集める女優の一人となりました。
アリータの創造者かつ保護者役には名優クリストフ・ヴァルツ。クエンティン・タランティーノ監督の2009年の映画『イングロリアス・バスターズ』で悪役のラングを演じたことでブレイク。この作品でアカデミー賞助演男優賞も受賞。さらに2013年には、同じくタランティーノ監督作の『ジャンゴ 繋がれざる者』でアカデミー賞助演男優賞を短い期間で2回受賞しています。
悪役のベクターを演じたのは『ムーンライト』で高い演技力を評価されたマハーシャラ・アリ。
『ムーンライト』での出演時間はわずか12分程度でしたが、その演技は絶賛され、第89回アカデミー賞では助演男優賞を獲得。今作のベクターは『ムーンライト』で演じたフアンほど複雑なキャラクターではないのですが、やはりマハーシャラ・アリの存在感は際立っています。
2019年3月には主演作『グリーンブック』も公開。こちらでは60年代のアメリカを舞台に黒人天才ピアニストのドクター・シャーリーを演じています。
なんとマハーシャラ・アリは『グリーンブック』でもアカデミー賞助演男優賞を受賞。
実力派の俳優として人気も急上昇しています。
『アリータ:バトル・エンジェル』
話を映画に戻しましょう。
映画全体の印象としてはすごくテンポのいい作品。
イドがアリータをスクラップから拾い、アリータが目覚め、に出会う、ほんとサクサク進んでいきます。
ハンター戦士になりたいというアリータですが、アリータを自分の娘のように思うイドは危険なことにアリータを巻き込みたくないと考え、アリータの考えを認めません。
アリータも頑なに自分のことは自分自身で決めて行動しようとします。
イドに内緒でハンター戦士へ登録。
賞金稼ぎの集うバーへ立ち寄りますが、そこで以前取り逃がしたサイボーグがグレードアップしてアリータに襲いかかります。
今作、ストーリーとかすべてを吹き飛ばすレベルでアクションが素晴らしいんですが、このとのバトルもその一つ。
手から無数の触手を出して襲いかかる、いかにもロドリゲスが好きそうなガジェット搭載のサイボーグなのですが、それをよけながら戦うアリータのアングルや演出が素晴らしいです。
若干、アリータが強すぎて、スティーブン・セガール感がありますが(笑)。
アリータ自身のテーマ
アリータ自身のテーマはバトルではなく、あくまで『自分は誰か』でどう生きるかなのだと思います。
イドはそんなアリータを一人の人間として認め、彼女の意思を尊重するようになります。
アリータも終盤、イドを『お父さん』と呼びます。
このあたりの擬似的な親子関係が映画の中で構築されるのはジェームズ・キャメロン監督の『エイリアン2』を彷彿とさせます。
メインの悪役が微妙
しかしながら 正直、アリータの戦う相手がイマイチというか、別に世界の支配者と戦うとかじゃないんですよね。
メインの悪役のベクターがあまり強くないというか、その辺のチンピラのボスみたいな感じです。下界の人たちの娯楽であるモーターボールの勝敗をコントロールしているくらいなものでしょう?
もちろん、ザレムにいるノヴァが真の黒幕であって、彼がただの仕え人であることはわかるんですが、じゃあノヴァの目的は何か?悪役たる理由は何か?があまり見えないんですよね。
世界観は確固たるものがありますが、設定が説明不足。
当初、キャメロンが書いてきた脚本を短くすることがロドリゲスの仕事だったらしいのですが、短くしすぎたのでは。。
アリータ、僕は好きだからもう少し映画の尺長くてもよかったよ!
せっかくサイボーグ化させてまで生き延びさせた彼氏も無茶やってすぐに死んじゃうし。。(2回目の死があまりに早くて、これにはびっくり。原作通りらしいですが)
ラストもボスを倒すのかと思いきや、スポーツ選手になってるし(笑)
そりゃザレムへのパイプを登ったら罠があったけど、モーターボールで優勝したからといってザレムに行ける保証もないじゃん!
全てを吹き飛ばすバトルアクション
ただ、エンターテインメントなので全然この辺には目をつぶりますよ。
映画館で観たんですが、正直脚本の穴より、エンターテインメントの感動のほうがはるかに大きかったです。
やはりアクションシーンやモーターボールは凄いです。それとアリータって今回CGで制作されているのですが、本当にそれがわからないほどの最高峰の表現レベルなんですね。
こういう細かく繊細なクオリティにはやはりジェームズ・キャメロンの力を感じさせます。
アクションとかエンターテインメントそのものに感動することはあまりないのですが、『アリータ:バトル・エンジェル』はとにかくエンターテインメントに感動できる作品です。