【感想レビュー】「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」実話を元にした感動作

「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」は2016年に公開された、メリル・ストリープ、ヒュー・グラント主演の実話を元にしたコメディ映画。

マダム・フローレンス~は邦題で、原題は「Florence Foster Jenkins」。

現代の通り、世界一音痴な歌手と呼ばれたフローレンス・フォスター・ジェンキンスの音楽をユーモラスに描いた作品です。

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「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」の予告編

「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」のスタッフ・キャスト

監督
スティーヴン・フリアーズ

脚本
ニコラス・マーティン

出演者
メリル・ストリープ
ヒュー・グラント
サイモン・ヘルバーク


「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」のあらすじ

フローレンス・フォスター・ジェンキンス、通称マダム・フローレンスは音楽を愛するニューヨークの社交界のトップ。
鑑賞したオペラに衝撃を受け、自分もあのように歌いたいとの夢を抱く。

幼い頃から音楽を愛し続けてきたマダム・フローレンスの夢を叶えるため、夫のシンクレアはリサイタル会場をおさえたり、ピアニスト・オーディション開催するなど、奔走する。

ピアニスト・オーディションで合格したコズメとの初練習の時、コズメはマダム・フローレンスが絶望的な歌唱力しか持ち合わせていないことに驚愕する。

ただ、梅毒に蝕まれ、常に死と隣り合わせのマダム・フローレンスを支え続けているのは音楽しかないことを夫のシンクレアは誰よりも分かっていた。

観客を知り合いで固め、批評家たちを買収など「万全の体制」を整えてフローレンス・フォスター・ジェンキンスのリサイタルは開催されたー。

感想・レビュー

思ってたよりコンパクトで、地味な感じの映画でしたね。

世界一音痴な歌手、フローレンス・フォスター・ジェンキンス。

演じているのはメリル・ストリープ。

メリル・ストリープ

メリル・ストリープの歌唱力はもちろんあれほどひどくはなく・・・というかメリル・ストリープ自身は絶対音感を持ち、また若い頃はオペラ歌手を目指していたということからもめちゃくちゃ歌は上手いです。(「マンマ・ミーア!」を観てもらえればわかるかと思います)

そんなメリル・ストリープ、今作では「オンチ」を特訓したというから驚きです。

「下手に歌うのは簡単だと思ったの。でも、想像したよりもずっと大変だったわ。フローレンスは一番難しいアリアに挑戦するのよ。しかもあのマリア・カラスが晩年に出すのを苦労した、ヘ長調の高音で歌うことができたの。思い切り大胆に音程を外すけれど、彼女には最後にはちゃんと歌えるんじゃないかと期待を持たせる何かがあったのよ。」  メリルはヴォーカルコーチとボイストレーニングを行い、上手く歌うことから始めたと語る。「そこからちょっとずつ、オンチになるように崩していったわ。本物のフローレンスならどう歌ったかは考えず、自分の中のフローレンスなら、どんな風にアプローチするかを考えたの。息を吸い込むタイミングが遅すぎて音程を外してしまうのだけれど、彼女の音楽に対する強い想いと愛情が感じられるはずよ。」

出典:映画『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』公式サイト | PRODUCTION NOT

以前「40歳で女優を辞めることを考えた」と言っていたメリル・ストリープ。

ハリウッドきっての演技派で知られる大御所女優のメリル・ストリープが、2011年にVogue誌のインタビューで語った記事によると、40代に突入した頃に突然、魔女役のオファーが3つ同時に来たのだとか。「母親の役目を終えた女性はグロテスクなモノとして、とらえられているのね」と彼女は冷静に分析している。

出典:30代は年を取りすぎ!?過酷な「年齢の壁」に声をあげたハリウッド女優たち

ですが、今作では年齢の縛りからも解き放たれて主役の座を手にしています。

マダム・フローレンスの魅力

マダム・フローレンスは恵まれた家庭に育つものの、その人生は波乱万丈。

父親からは勘当され、最初の夫からは新婚初夜に梅毒を移されその後50年間病気と戦い続けています。

その夫も亡くなり、現在の夫のシンクレアとは再婚です。

だからでしょうか。フローレンスが大切に持ち歩くブリーフケース、ぼろぼろになったそのなかにいつも入っているのは遺言状なんですね。

カーネギー・ホールでのコンサートの開始直前、今までのお礼のようにピアニストのこ名前を遺産相続人に加えるように遺言状に書き加えるマダム・フローレンス。

他にもラジオで聴いた兵士の戦死のニュースに心を痛め、また帰還兵士の間で自分のレコードが人気だと知るや、帰還兵をねぎらうため、1000人を自分のコンサートに招待するなど、その優しさは比類なきもの。

だからこそ、歌唱力とは離れたところで彼女のショーは愛されていたのだろうなと感じました。

ヒュー・グラント

そんなフローレンスを実直に支える優しい夫のシンクレアを演じているのが、ヒュー・グラント。

妻を支えたり少し頼りない男性を演技させたら右に出るものはいませんね。

個人的には『ラブ・アクチュアリー』のイメージが強いです。

今作ではフローレンスを支えながらも一方では愛人がいるという設定。

フローレンスが梅毒で夜ができないがために、フローレンス公認にもなっているのでしょうか?

劇中ではコズメに『愛人のことはフローレンスも認めている』といいながらも、後に愛人の存在をフローレンスには隠そうとするなど、恐らくは『フローレンスも認めている』というのはコズメをなだめるためのシンクレアの嘘なのでしょう。

ただ、フローレンスを気遣う想いもまた本物で、たとえ愛人と食事をしているときでもシンクレアの耳に発売されてないフローレンスのレコードが聴こえると、かけた相手からレコードを奪うように、徹底してフローレンスの自尊心を守り抜こうとしていました。

理想的とは言えないかもしれないけれど、それでも献身的な夫婦の姿が印象的な作品でしたね。


世界一オンチな歌手「フローレンス・フォスター・ジェンキンス」

フローレンス・フォスター・ジェンキンスは1868年ペンシルヴェニアで弁護士で銀行取締役もつとめる州議会議員チャールズ・フォスターの娘として非常に裕福な家庭に生まれました。
8歳の時にピアニストとして初のコンサートを開催します。その評判は高く、天才児とみなされ、ホワイトハウスに呼ばれ、歌を披露もしています。
その後も音楽への情熱を持ち続けたフローレンス・フォスター・ジェンキンスは43歳の時に初めて歌手として公の場で歌声を披露しています。
リサイタルなどへの出演が増えたのは53歳のころ。61歳の時にはコズメ・マクムーンをピアニストとして雇い、レッスンも始めています。映画で描かれているのはこの辺りからですね。
76歳の時に音楽の殿堂と言われるカーネギーホールの舞台でリサイタルを開催。その席には作曲家のコール・ポーターやソプラノ歌手のリリー・ポンス、ジプシー・ローズ・リーに加え作曲家のジャン=カルロ=
メノッティ、女優タルラ・バンクヘッドらがいたと言われています。

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