このサイトも最初は映画のレビューを中心にと考えていましたが、映画って作品だけでなく、作品を観る場所(映画館)や形態(DVDやストリーミング)なども映画体験を形付ける重要な要素ですよね。
例えば、ひとつの作品に対してもあらゆる幅広い解釈や感想が成り立ちますが、その広がりの理由として、ビデオやDVDなどの記録媒体の普及によって、かつては公開当時に映画館で観るよりなかった作品が時と場所を越えていつでもどこでも観れるようになったことも大きいと言われています。
そりゃ、いろんな時代の人がいろんな場所で同じ映画を観ると、その環境の違いによっても、映画の感想が異なってくるのは当然のことでしょう。
さて、前置きが長くなりましたが、今回は1930年代のアメリカで誕生し、ちょうど娯楽の中心が映画からテレビへ移行する時に隆盛を極めた映画館の形態、『ドライブインシアター』をご紹介。
当時は特許をとるほど画期的なシステムだったドライブインシアターですが、その光景は今見るとなかなかシュール。
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ドライブインシアターとは?
出典:COBBY
ドライブインシアターとは屋外で車に乗ったまま映画を観るスタイルの屋外映画施設のこと。
土地が広大で、どこにいくにしても車が必要だったアメリカの社会と、また車に載ったまま映画を観るということで、プライバシーが保たれる(例えば赤ん坊が泣き出したとしても車内なので他の観客に迷惑をかけないなど)が特徴です。
ドライブインシアターの始まり
その始まり1930年代のアメリカ。1933年6月6日にリチャード・ホリングスヘッド・ジュニアがニュージャージー州カムデン郡のペンソーケンに初めてのドライブインシアターをオープンさせました。車所有率の上昇と、また郊外に家を建てる層の増加により、1950年代末から1960年代初頭にははドライブインシアターの数も4000を超え、全米でピークを迎えます。
ドライブインシアターの問題点
しかし、ドライブインシアターには以下の問題点もありました。
・夕方~夜にかけてしか上映できない
屋外の映画施設と言うこともあり、周囲の環境が暗くならなければ、上映には不都合でした。そのため、夕方~夜にかけてしか上映できないことになり、経営上の大きな問題ともなりました。
・冬場の上映環境
冬場は寒さもあり、客足が遠のく季節でもありました。そのため、ドライブインシアターによってはプロパンヒーターなど暖房機の貸出しを行ったり、観客の車に冷気や暖気を送り込めるようにしたところもありました。
・音量
当初はトラックの上に置かれていたスピーカーから音声が流されていましたが、近くでは音量がうるさく、逆に遠くでは聞こえないという問題が起きました。
解決策として区画ごとにスピーカーを置くという方法がとられましたが、このスピーカーではステレオ音声は再生できないという問題もありました。カーステレオが登場してからはカーステレオを介して映画の音声を届けるという方法が採用されています。
・映画の種類
親子連れをターゲットとしているために、表現の過激なものは上映できませんでした。
今でいうレイティングの設定されているような映画ですね。
しかしながら中にはポルノ映画を上映したりするところもあったようです。
ドライブインシアターの衰退
テレビが普及し、家にいながら映画が楽しめる環境になると、ドライブインシアターは衰退していきました。1970年代のことです。
日本におけるドライブインシアター
日本では1981年、千葉県船橋市の「ららぽーと」にドライブインシアターが設置されたのをきっかけに90年代初頭には全国20か所ものドライブインシアターが存在するも、やはりアメリカと同じ問題点から衰退。2010年には国内のドライブインシアターの数は0となりました。
近年の日本のドライブインシアター
近年の日本のドライブインシアターはイベント的に開催されることが多くなっています。
2014年10月には静岡県浜松市で3日間限定のイベントとして「ドライブインシアター浜松」が開催されました。
熊本県での復活
2016年に起こった熊本地震の復興支援として熊本県にDrive in Theater Asoが開業。
不定期に週末に映画を上映しているようです。
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