【ネタバレレビュー】地獄でなぜ悪い

「地獄でなぜ悪い」は2013年公開の園子温監督によるコメディ映画・・・だと思うんですが、内容はコメディの枠を外れて過激な作品です。
この作品における「地獄」とはいったい何でしょうか?
長谷川博己、國村隼らの演技にも要注目です。

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「地獄でなぜ悪い」のスタッフ・キャスト

監督
園子温

脚本
園子温

音楽
園子温
井内啓二

主題歌
星野源
「地獄でなぜ悪い」

出演者
國村隼
長谷川博己
星野源
二階堂ふみ
友近
堤真一

「地獄でなぜ悪い」のあらすじ

ヤクザの組長・武藤(國村隼)は獄中にいる妻・しずえ(友近)の夢を叶えるために、本業そっちのけで娘・ミツコ(二階堂ふみ)を主演にした映画の製作を画策している。面会の度にしずえに対して、撮影は順調に進んでいると場を取り繕う武藤。しかし、肝心のミツコは男と逃亡中、そして、しずえの出所まではあと9日しかない。金に糸目をつけず、片っ端から撮影機材のレンタルをしながら、なんとか娘の身柄を確保した武藤は、ミツコから(実はすべて嘘なのだが)映画監督と紹介された駆け落ち男・公次(星野源)を監督に抜擢し、本格的に撮影準備を始める。映画監督として騙しながら映画を撮影しないと殺される公次は、右も左もわからぬまま、オールヤクザのスタッフの質問攻めに対応していくが、限界に達しその場を逃げ出してしまう。簡単に追っ手の組員に捕まってしまう公次であったが、そこに奇跡のような助っ人が現れる。それは「いつか一世一代の映画を撮りたい」と、少年期から映画監督を夢見る平田(長谷川博己)であった。映画の神様は自分を見捨てていなかったと、満を持して撮影内容の段取りを始める平田は、武藤と敵対するヤクザ組織の組長であり、過去の衝撃的な出会いからミツコに異様な愛情を抱く池上(堤真一)に協力を要請する。かくして、ホンモノのヤクザ抗争を舞台にした、スタッフ・キャストすべて命懸けの映画が、電光石火のごとくクランクインしようとしていた・・・。

出典:http://play-in-hell.com/story.html
映画『地獄でなぜ悪い』公式サイト

感想・レビュー

みんな!エスパーだよ!』にひきつづき、また園子温監督作です。

『地獄でなぜ悪い』は映画をテーマにした作品。

映画を復讐のキーアイテムにしたクエンティン・タランティーノの『イングロリアス・バスターズ』や、マフィアの抗争を映画撮影だと押しきった三谷幸喜のコメディ『ザ・マジックアワー』。

今作の『地獄でなぜ悪い』は映画をテーマにしながらも、それらを遥かに越える着地点に我々を導きます。

映画製作グループ、『ファックボンバーズ』。映画のこととなると倫理も目に入らなくなるほどの映画狂、平田。彼は30を目前にしても映画製作の夢を諦めきれないでいます。

『いつか映画の神が自分に微笑みかけてくれるかもしれない』

アクション担当の佐々木はそんな平田に愛想をつかし、「ファックボンバーズ」を脱退します。そんな災難にあいながらも変わらずに夢を見続ける平田に一本の電話が入ります。

平田を演じるのは長谷川博己。『シン・ゴジラ』では一転してリアリズムを重視する官僚の矢口を演じています。劇団員出身というキャリアもあるのか、演技の幅がとにかく広く、そして上手いです。

さて、平田のもとにかかってきた電話は、妻の出所祝いに娘を主演に置いた映画製作を望むヤクザの組長、武藤のもとで無理やり映画監督ということにさせられた、ただの素人の公次からでした。

映画で問題を解決するところは『イングロリアス・バスターズ』そっくりですし、それと知らずヤクザの組で映画を撮影するはめになってしまうストーリーは『ザ・マジックアワー』を思い出させます。

しかし、コメディであれば、例えば『主役格は死なないだろう』だとか、『そこまで残酷な描写はないだろう』だとか、知らず知らずのうちに想定するルールがあります(ホラーコメディとかでなければね)。

しかしそこは園子音監督。手足は飛び、首ははねられる、そんな一大スプラッターをクライマックスに持ってきます。

いつの間にかヤクザではないファックボンバーズまでマシンガンでヤクザを殺しまくっていたりとどんどん無軌道に、無秩序に映画はコメディに留まらない狂気を帯びてきます。

例えるなら『フロム・ダスク・ティル・ドーン』に近いかなぁ。。

ヤクザの組長、武藤役には國村隼。

アウトレイジとはまたひと味違ったヤクザを演じています。映画『模倣犯』レベルに唐突かつシュールな最期にも注目してほしいですね。

そんな武藤の娘、ミツコ役には二階堂ふみ。

福山雅治との共演作『SCOOP』では内気な記者見習いの役でしたが、今回は一転して気の強い女優の役。

気の強いというか、狂気すら感じさせますね。

とてもカラフルなさまざまな面を持った女優さんだと思います。

さて、討ち入りの抗争、床は血の海となり、障子は赤く染まり、そこらに人体の欠片が散乱する、まさに『地獄』なのでした。

しかし、平田にとっては格好の撮影の舞台なのでした。フィルムを回収しながら独り血まみれで狂喜する平田。その姿はまさに映画狂そのものです。

個人的にはカルト映画として評価されてもおかしくない作品。

この突き抜けたスプラッターには賛否あるかとは思いますが、どこにもない強烈な作品であることは確かです。

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