【レビュー】ブレードランナー2049が問いかける「人間らしさ」とは

「ブレードランナー 2049」は2017年公開のSF映画。SF映画の金字塔、『ブレードランナー』の35年ぶりの続編になります。

監督は『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ、主演は『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリングが務めています。

今作は当初リドリー・スコットが前作に引き続き監督を勤める予定でしたが、結局のところは製作総指揮に回っていますね。ただ、リドリー・スコットの目下の興味はAIであるらしく、『エイリアン・コヴェナント』のインタビューでも「エイリアン自身の進化についてはほとんど描ききっているので、AIを題材とした別のストーリーに発展させたいと思っている」と発言しています。AIのテーマに最も近い『ブレードランナー』という題材。

公開時には徹底的にストーリーの内容を秘匿して宣伝されていた今作。
今作で果たしてAIはどのような姿を見せるのでしょうか?

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「ブレードランナー2049」のスタッフ・キャスト

監督

ドゥニ・ヴィルヌーヴ

脚本
ハンプトン・ファンチャー
マイケル・グリーン

原作 キャラクター創造
フィリップ・K・ディック
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

出演者
ライアン・ゴズリング
ハリソン・フォード
アナ・デ・アルマス
ロビン・ライト
ショーン・ヤング
ジャレッド・レト

「ブレードランナー2049」のあらすじ

プロローグ:ウォレス社の台頭

前作から30年後。レプリカントは度々反乱を起こし、製造禁止になっていた。製造元のタイレル社も倒産し、その代わりに合成食糧で世界の危機を解決した科学者ニアンダー・ウォレスの「ウォレス社」が台頭する。
ウォレス社は旧タイレル社の資産を手に入れ、レプリカント禁止法を廃止させ、より従順で寿命制御も可能な新型レプリカント「ネクサス9型」を製造開発し始める
寿命のないレプリカント、ネクサス8型を始末する捜査官は『ブレードランナー』と呼ばれていた。

サッパー・モートンの遺したもの

ブレードランナーのKは人間から「人間もどき」と蔑まれ、ウォレス社の家庭用AIである「ジョイ」を恋人として孤独をしのぐ日々を送っていた。

ある日Kはロサンゼルス郊外で農家として働いていたレプリカントのサッパー・モートンを8型の旧タイプだと見抜き、銃殺する。
サッパー・モートンは殺される直前に

『お前らは”クソな仕事”に満足している』
『奇跡を見たことかないからだ』

と言い残す。

KはサッパーからDNA情報となる目玉をくり抜き、その場を去ろうしたが、サッパーの庭にある枯木の根元深くより生体反応のある箱を発見。
中身を確認するとそれは人間の骨だった。
ロス市警に戻り、詳しく調べたところ、その骨には帝王切開のあとがあり、またレプリカント特有の製造番号まであった。

レプリカントが妊娠するなどあり得ない。

Kの上司のジョシ警部補(マダム)は社会的混乱を憂慮し、生まれた子供も含めて証拠の消去を命じる。

感想・レビュー

全体に大きなストーリーはあるのですが、それと同時に前作で語られなかった部分を補っている感じがしましたね。

ブレードランナー』はSF映画黎明期の傑作でしたが、その先駆性ゆえに公開当時興行的には失敗してもいます。

流石に35年もたつとダークなストーリーのSF映画もすんなり受け入れられていますね(笑) 決して派手な映画ではないですが、一貫して緊張感を保っているのであっという間に観れるのではないでしょうか?

20年後の未来

これだけVFXやSFのパターン・ジャンルが進化、多様化しているので未来風景は驚きませんが、人工知能が生活に溶け込んだ時の人間との関わり方は、より進化してるなという印象です。
その象徴が「ジョイ」。家庭用のホログラムAIです。
前作の主人公だったハリソンフォード演じるデッカードはオリジナル版では人間ともレプリカントとも明かされていませんでしたか、今作のライアン・ゴズリング演じるKは最初からレプリカントであることが明かされています。
その分、よりレプリカントの『人間らしさ』が強調されているんですね。
たとえばKはレプリカントでありながらジョイというAIの女性で孤独を紛らせています。
またジョイもAIでありながら、人間同様の肉体をほしがるなど彼女もレプリカント同様に人間への渇望を感じさせるキャラクターです。

人間とレプリカントの違い

人間とレプリカントの違いは何か?という前作での問いはより深く、今作ではレプリカントが繁殖能力まで獲得し、生物学的にも人間らしさが描かれています。

途中までKは自分自身が「生まれた子ではないか?」と考えていました。

ところが実際はそうではなく、落胆するシーンが見られます。

この事からもレプリカントは根元的には『人間になりたい』との思いに強く駆られているのです。

ジョイのいう

『製造されたではなく、「生まれた」』

この違いは とても大きいものです。

製造された存在であるレプリカントが新しい存在を生むことができるならば、人間とレプリカントの違いはどこにあるのでしょうか?

ジョイもまた人間らしさを求めるAIの一つ。

ウィル・スミス主演の映画、「アイ,ロボット」に計算式はいつ答えを求めるのか?という台詞がありましたが、、

レプリカントはいつ人間らしさをもとめるのでしょうか。

人間らしさとは

ウォレスはこう言います。『レプリカントは生まれた瞬間から死を恐れる』。

まるで人間と同様です。限りなく人間に近い存在でありながら決して人間にはなれないそれはまるで、飛ぶための翼を授かりながら、高く飛びすぎたために太陽に翼を焼かれた、イカロスのよう。

そんな世界のなかで、Kは唯一デッカードのみをレプリカントとして救いだします。

それはレプリカントとしての身分を抹消し(死んだことに偽造)、娘に会わせるということ。

それでも人間に反旗を翻そうとするレプリカントの集まりがあったり、ウォレス自身は健在であったりとまだ波乱の予感を感じさせるまま物語を閉じています。

リドリー・スコットはエイリアン・コヴェナントで描いたAIは、2001年宇宙の旅と同じ、人類の脅威としての役割でしたが、今作は人間に振り回される被害者のような側面を感じさせます。



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