ロバート・デ・ニーロは1943年生まれのアメリカ・ニューヨーク出身の俳優です。ハリウッドを代表する名優の一人であり、『ゴッドファーザー PART II』『レイジング・ブル』でアカデミ-賞を獲得しています。
16歳でステラ・アドラーの下で演技を学び、またアクターズ・スタジオにも通うようになります。やがてオフ・ブロードウェイなどで舞台を経験。一時期はヨーロッパに出向き、各国を渡り歩きながら演技の修行をしていたこともあったそうです。
無名であった頃は『キャリー』や『ミッション・インポッシブル』で知られるブライアン・デ・パルマ監督とよくコンビを組んでいました。
ロバート・デ・ニーロがデビュー作を語っているインタビューを見つけたので紹介しますね。
初めてギャラをもらった作品は、ブライアン・デ・パルマ監督の映画『御婚礼/ザ・ウェディング・パーティ』だ。彼の長編初監督作品だったよ。出演が決まったとき、僕はまだ19歳。未成年だったから、小切手へサインするときには母も一緒に来ていたんだ。母と一緒に契約書を読んでいたんだけど、そこにギャラは50ドル(約6000円 ※1ドル120円換算)と書かれていてね。一週間で50ドルかと勘違いしていたんだけど、母に“この映画の出演料は50ドル。それがあなたのお給料よ”と言われて本当の金額を知ったんだ。それが僕の初めてのギャラさ。
ロバート・デ・ニーロにはさまざまな役柄を演じ切る幅の広さがあり、シリアスなサスペンスから感動的なドラマ、コメディーまでジャンルや役柄のとらわれない多くの出演作があります。
そんな彼の役作りとして有名なのが外見から生活に至るまでの徹底した役作り。時に整形すら辞さないその強烈な役に成りきるための姿勢は「デ・ニーロ・アプローチ」という言葉すら生み出しました。
今回はそんな「デ・ニーロ・アプローチ」の数々をご紹介します。
イタリア語を完璧にマスターするために、シチリアに移住(『ゴッドファーザー PART II』)
『ゴッドファーザー PART II』でロバート・デ・ニーロは若き日のヴィトー・コルレオーネを演じています。
前作ではマーロン・ブランドが演じたこの役、ヴィトーはシチリアの小さな村コルレオーネで生まれたという設定もあり、ロバート・デ・ニーロは実際にシチリア島に住んで、イタリア語をマスターした後に、マーロン・ブランドの独特なかすれ声を必死で練習を重ね、完璧に模写しました。
本作でのロバート・デ・ニーロの演技力は高く評価を受け、この作品でアカデミー賞助演男優賞を受賞しました。
実際にタクシードライバーとして働く(『タクシードライバー』)
『タクシードライバー』はマーティン・スコセッシ監督のアメリカン・ニューシネマの代表作。カンヌ映画祭でパルムドールを受賞しています。
今作でロバート・デ・ニーロはベトナム帰還兵でニューヨークでタクシードライバーとして働く孤独な青年のトラヴィスを演じています。
ロバート・デ・ニーロはこの役を演じるにあたり、実際に数週間にわたりNYのタクシー運転手を務め、不眠症の役柄のために 15キロ減量する役作りを見せています。
頭髪を抜き、顔だけ太らせる(『アンタッチャブル』)
禁酒法時代のアメリカ・シカゴを舞台に実在のマフィア、アル・カポネと彼を逮捕しようとするアメリカ合衆国財務省捜査官たち「アンタッチャブル」と呼ばれるチームの攻防を描いた作品です。ロバート・デ・ニーロとは旧知の仲であるブライアン・デ・パルマ監督作品です。ロバート・デ・ニーロはこの作品でアル・カポネを演じています。
役作りとして額の生え際の毛を全て抜き、体型を似せるためにボディスーツを着用し、顔だけは実際に太らせて撮影に臨みました。
ボクサー体型まで搾り上げた後、25キロ太る(『レイジング・ブル』)
『タクシードライバー』に引き続きマーティン・スコセッシ監督とコンビを組んだドラマ映画。実在のボクサー、ジェイク・ラモッタを演じています。(ちなみにタイトルの『レイジング・ブル』はジェイク・ラモッタの異名からとられています。)
今作のデ・ニーロは、ミドル級チャンピオンまで上り詰めたボクサーの鍛え上げられた肉体と、引退後の肥満体型を表現するために体重を27kg増量するなどの驚くべき役作りを敢行しています。
なお体重を27kg増量する際にはイタリアに赴いて、現地のあらゆるレストランを食べ歩いたという逸話があります。
ロバート・デ・ニーロは今作の演技により、第53回アカデミー主演男優賞を初めアメリカ国内の映画賞を多数獲得しています。
ロバート・デ・ニーロのレイジング・ブルにおける受賞
第53回アカデミー賞
受賞・・・主演男優賞
第46回ニューヨーク映画批評家協会賞
男優賞
第6回ロサンゼルス映画批評家協会賞
男優賞
第35回英国アカデミー賞
ノミネート・・・主演男優賞
第38回ゴールデングローブ賞
主演男優賞 (ドラマ部門)
実際に数か月間入院生活を経験(『レナードの朝』)
『レナードの朝』はに公開されたロビン・ウイリアムズとの共演作。ロバート・デ・ニーロは今作で30年ぶりに目覚め、機能を回復した嗜眠性脳炎の入院患者のレナードを演じています。
今作での役作りとしてデ・ニーロは撮影の行われた病院で実際に数か月間入院生活を経験しています。
ロバート・デ・ニーロはこの演技により、第63回アカデミー賞において主演男優賞にノミネートされています。
ホームレス施設に潜入(『エグザイル』)
今回は新作「Being Flynn(原題)」でホームレスを演じるということでマサチューセッツ州ボストンのホームレス施設に帽子とマスクで変装して潜入。ポール・ワイツ監督いわく、施設では周囲に完全に溶け込んでいたそうで、こんな出来事もあったそうだ。
「我々が潜り込んだ日、たまたまそこにいた施設の職員が『ロバート・デ・ニーロなら俺を演じられるな!』って言ったんだ。本人がすぐそばに立っているとも気づかずにね。あの職員はこの映画の話をどこかで聞きつけただけなんだろうけど、あれは奇妙な瞬間だった」。
さらには雪の降るニューヨークの街にホームレスになりきって繰り出したこともあったというが、ここでもデ・ニーロは全く気付かれなかったそう。恐るべし、デ・ニーロ!
出典:ロバート・デ・ニーロ、役作りのため変装してホームレス施設に潜入!その顛末は… /2012年3月2日 1ページ目 – 映画 – ニュース – クランクイン!
ピッツバーグで暮らす。さらに鉄工所で働こうとした(『ディア・ハンター』)
1978年に公開された作品。
ベトナム戦争を描いた作品の中でも代表的なもののひとつで第51回アカデミー賞並びに第44回ニューヨーク映画批評家協会賞作品賞を受賞しています。
戦地へ赴く主人公たちの出身地がピッツバーグだったことから、ロバート・デ・ニーロも役作りの一環としてピッツバーグで暮らしました。さらに役柄と同じく鉄工所でも働こうとしましたが、さすがに現地の人に拒否されたという逸話があります。
ユダヤ人家庭にホームステイ(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』)
セルジオ・レオーネが、『続・夕陽のガンマン』を撮り終えた頃から脚本を書き始め、完成までに10年以上もかかった作品。
結果的にこの映画がセルジオ・レオーネの遺作となります。
公開当初こそ不振だったものの、レオーネ自身の編集によって3時間49分の完全版を作り上げ、再公開されたアメリカは、それまでの不評が打って変わってギャング映画の傑作として評価を受け、レオーネ自身の評価も更に高める結果となりました。
ロバート・デ・ニーロは本作ではユダヤ人の役を演じています。そのためにユダヤ人家庭にホームステイする他、役のモデルとなったマフィア、マイヤー・ランスキーにに会談を申し込むなどの行動をしています。(会談自体は断られたそう)
ロバート・デ・ニーロと役作り
ロバート・デ・ニーロは役作りについて
「演技とはすべて、無いものをあるかのように見せる幻影。私は役を演じる時、そのキャラクターを全て知り尽くしたいのだ。俳優というものは、ありとあらゆる人間になり、その人生を生きなければならない」
と語っています。その思いは70歳を超えた今も健在。
2013年の映画『リベンジ・マッチ』でも、現役復帰するボクサーを演じるために、15Kgの減量を行っています。