【感想 レビュー】マジック・イン・ムーンライト

マジック・イン・ムーンライト」は2014年に公開されたウディ・アレン監督・脚本のコメディ映画。主演はコリン・ファースとエマ・ストーンが務めています。

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「マジック・イン・ムーンライト」のスタッフ・キャスト

監督
ウディ・アレン

脚本
ウディ・アレン

出演者
コリン・ファース
エマ・ストーン
サイモン・マクバーニー
マーシャ・ゲイ・ハーデン

「マジック・イン・ムーンライト」のあらすじ

1928年、世界的に有名なマジシャン、ウェイ・リング・ソーはベルリンの観衆の前で見事なマジックを披露していた。彼の本名はスタンリーで、イギリス人である。スタンリーは使用人たちを叱ることが習慣になっており、スタッフに対しても無愛想だった。楽屋でスタンリーは、旧友のマジシャン、ハワード・バーカンに話しかけられる。ハワードは一緒にコート・ダジュールに行かないかと誘ってきた。コート・ダシュールにいるアメリカ人のキャトリッジ家がソフィー・ベイカーという霊能力者に振り回されているという。キャトリッジ家の子息、ブライスがソフィーの虜になってしまい、ブライスの姉のキャロラインと義兄のジョージはブライスがソフィーにプロポーズしようとしているのではないかと思っているという。ハワードは「自分ではソフィーのインチキを暴くことができなかった。それどころか、見れば見るほど彼女の霊能力は本物なのではないかと思えてきた。だから、かつてインチキ霊能力者のトリックを見破ったことのある君にソフィーがペテン師だと証明するのを手伝ってもらいたい。」とスタンリーに頼んだ。そこで、スタンリーはハワードと共にコート・ダシュールへ赴くことにした

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B8%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88
マジック・イン・ムーンライト – Wikipedia




感想・レビュー

マジック・イン・ムーンライト(月の光の魔法)、とても洒落た、ウディ・アレンらしいタイトル。

アニーホール』や『マンハッタン』は70年代のウディ・アレン作品ですが、『マジック・イン・ムーンライト』は2014年の作品。

流石に70年代の作品に比べるとテンポも早く、映画が現代的になったなと感じます。

物語の内容は1926年のコリン・ファース演じる世界的に有名なマジシャン、スタンリーが旧友のマジシャンに頼まれて、霊能者の占い師のトリックを暴こうとするもの。この占い師のソフィを演じたのがエマ・ストーン。

エマ・ストーンはどんな映画でも独特のチャーミングさがあります。

ウディ・アレンの作品のクラシカルさにマッチしているかはひとまず置いておいて、しかしエマ・ストーンのチャーミングさこそが、より一層この映画をモダンにしていると感じます。

一方のコリン・ファースのキャラクターはウディ・アレン自身が今まで演じてきたような皮肉屋で神経質な男。

シンガーソングライターの歌が、その中にどれ程自分自身を反映しているかは本人以外には知り得ないのと同じように、映画の役柄を通してウディ・アレンの実体を推測するのは的はずれかもしれませんが、それでも今回のコリン・ファースの役柄は70年代のウディ・アレンが描く主人公と明確に違っています。

例えば『アニー・ホール』でウディ・アレンが演じたアルビーはアニーの大切さにアニーを失ってから気づきます。しかし、アルビー自身は本質はなにも変わってはいないのです。

『アニー・ホール』のレビューでも書きましたが、映画の中で変わっていくのはむしろダイアン・キートン演じるアニー・ホールの方。

アルビーは終始神経質でかつ皮肉屋のままです。

今作『マジック・イン・ムーンライト』のスタンリーも同じく神経質で皮肉屋、論理的に物事をとらえ、非科学的なことは信じない。おまけに無心論者(無神論の部分はウディ・アレン本人が無神論者であることを投影させたと言われています。)という役です。これを象徴するように、映画の中でスタンリーはニーチェの言葉を引用し、また何度もニーチェに言及しています。

しかし、途中でスタンリーの信じていたものは大きく揺らぎます。その場面は大きく3つに分けられます。

その一つはソフィがスタンリーのことをに話していないことまで次々に言い当てたとき。

非科学的なことは信じないスタンリーですが、このときばかりは本当に霊能力者は存在するという結論に達します。

二つ目は叔母が手術になった時。やはり大切な非との命がかかっている瞬間は神にさえ祈りたくなるもの。

そして三つ目がソフィに恋していることを自覚するシーン。

論理的に考えてソフィに恋しているなどスタンリーにとってあり得ないこと。しかし、そう自分に言い聞かせれば言い聞かせるほどソフィへの想いが頭をもたげるのです。

ここからエンディングまではウディ・アレンとしては珍しいくらいのベタな展開。

「幸せな二人の生活がいつまでも続くというのは現実にはあり得ない」

そう言って『アニー・ホール』の結末はほろ苦さを感じるものでしたが、『マジック・イン・ムーンライト』の結末は奇跡のようなハッピーエンド。

それゆえに「」と評されたのもなんとなく理解できます。

まぁそれにはどんなシーンであっても映画音楽はあくまで軽妙であったりということもあるかと思いますが。

ソフィの霊能力のトリックを暴こうとするスタンリー。ですがその目的は果たせず、一方で二人の距離は近づいていきます。

雨に打たれた夜、一度は天文台の月明かりの下で通じ合うかに見えた二人の心。

しかし、ソフィの『嘘』とともに二人の関係は再びすれ違い、遠ざかっていきます。

「マジック・イン・ムーンライト」=月の明かりの魔法は、天文台の時だけではなく、映画全体にかけられていたのです。

ちなみにこの映画はファッションもセンスがいいと思います。

エマ・ストーンのファッションは『気狂いピエロ』のアンナ・アリーナのようにレトロでキュート。コリン・ファースのスーツスタイルも、アイテムそのものはクラシカルですが、ジレやパンツのカラーの合わせかたがとても上手いんです。



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