「アニー・ホール」は1977年の恋愛映画。監督・脚本・主演はウディ・アレンが努めています。プライベートでもパートナーだったダイアン・キートンがヒロインを務めています。
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「アニー・ホール」のスタッフ・キャスト
監督
ウディ・アレン
脚本
ウディ・アレン
マーシャル・ブリックマン
製作
チャールズ・H・ジョフィ
ジャック・ローリンズ
製作総指揮
ロバート・グリーンハット
出演者
ウディ・アレン
ダイアン・キートン
トニー・ロバーツ
クリストファー・ウォーケン
キャロル・ケイン
ポール・サイモン
「アニー・ホール」のあらすじ
スタンダップコメディアンをしながら死にとりつかれている独身男性アルビーは、友人の紹介で、歌手志望の明るい女性アニーと出会い、2人はアルビーのアパートで同棲生活に入る。しかし彼らが出会ったころの新鮮な気持ちも、時がたつにつれて弱まっていく。アニーはレコード会社の経営者と仲よくなり、彼のアパートに引っ越してしまうが、そんな現実と向かい合ったことでアルビーはやっと自身のアニーに対する愛情に気付くが……。
出典:https://www.wowow.co.jp/detail/012266/-/03
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感想・レビュー
映画の役割には様々なものがあると思います。
ある面は娯楽を与えるもの。それがコメディであっても、ホラー映画であっても、観る人の欲求に応えるという意味では総じて娯楽としていいでしょう。
他にはなにかを考えさせる、もしくは啓蒙する映画。マイケル・ムーアの映画であったり、ミヒャエル・ハネケの映画はこの部類かと思います。
そういう意味ではこの『アニー・ホール』はある意味では後者に近いかもしれません。
監督・脚本・主演はウディ・アレン。
コメディ映画の名手という一般的な認識とは裏腹の波乱に満ちた私生活。
『アニー・ホール』ではそんなプライベートなウディ・アレンも垣間見えるようです。最もウディ・アレン自身は『アニー・ホール』に対して「自伝的な映画ではない」と否定していますが。。
さて、『アニー・ホール』の中身ですが、正直に言うとストーリー自体は平坦。
セリフとともに心情を字幕で伝えたり、空想を視覚化するなど、演出はおもしろく、ユニークなものの、肝心のストーリーは終盤になるまでほとんど動かない。
現在から過去を回想し、尚且つ時間軸も目まぐるしく入れ替わる恋愛映画で言うと『(500)日のサマー』という作品があって、こちらは僕は大好きな映画なのですが。。
二つの作品で何が違うのか。決定的なのは主人公の性格。どちらも主人公の目線で物語は進みます。
『(500)日のサマー』ではジョゼフ・ゴードン・レヴィット演じるトムですね。
トムは職場にスタッフとして加わったサマーに一目惚れ。しかし、気まぐれで恋愛観もまるっきり違うサマーに振り回されるばかり。
そんなトムの純粋さや惚れた弱さには共感できるものの、『アニー・ホール』のアルヴィーの皮肉屋で神経質さには共感できないんですよね。
むしろ、アルヴィーのキャラクターはウディ・アレン自身の投影に思えます。アニー以外の女性と円滑な関係を築くことができず、そして唯一の理解者であったアニーとも別れてしまう。
私生活でもダイアン・キートンとパートナーであったウディ・アレンですが、その関係も長くは続きませんでした。
アルヴィーはアニーと「もしも」の人生を芝居に転写します。それは二人が別れを乗り越えて再び一緒になる物語。
自分のプライベートな出来事と願望をエンターテインメントとして芸術に昇華させたとも言えるでしょうし、ビジネスでいう商品として切り売りしたとも言えるでしょう。
アルヴィーは「せめて芸術の上だけでも理想的に事が運ぶように」と語ります。
その姿にはクリエイターとしての性分と哀しみを感じさせます。
映画の中では二人が恋人としてよりを戻すことはありません。
一方、『(500)日のサマー』では、サマーとの恋愛を終えて、オータムとの新しい恋の予感を感じさせる、いわば映画的な救済を持たせたラスト。
その点では『アニー・ホール』のほうがリアル。一度だけの再会という小さな奇跡。
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」にケイシー・アフレックと元妻のミシェル・ウィリアムズが街角で再会するシーンがあります。それは小さな出来事ではあるものの、映画の中では大きな救済の意味を持つんですよね。
ラストシーンの名セリフ。
ウディ・アレンはたとえ話で、とあるジョークを話します。
ある男が精神科医に「うちの弟は自分がニワトリだって信じている。」
精神科医は「入院させなさい」と言います。
男は「でも病院へは連れていけない、だって、卵が必要だから。」
そしてこう続けます。
「男女の関係はおよそ非理性的で不合理なことばかり、でも、それでもつき合うのは卵がほしいから」
真実の愛情ほど、万人に必要とされ、かつ手に入れることが難しいものはないのです。
『アニー・ホール』はそんな奇跡と現実を描いています。
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