【ネタバレ レビュー】シェイプ・オブ・ウォーター

『シェイプ・オブ・ウォーター』は2017年に公開された恋愛ファンタジー映画。

監督は『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ、主演はサリー・ホーキンスが務めています。

第74回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。
また第90回アカデミー賞では作品賞など4部門を受賞するなど、評価の高い作品です。

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『シェイプ・オブ・ウォーター』のスタッフ・キャスト

監督
ギレルモ・デル・トロ

脚本
ギレルモ・デル・トロ
ヴァネッサ・テイラー

原案
ギレルモ・デル・トロ

製作
ギレルモ・デル・トロ
J・マイルズ・デイル

製作総指揮
リズ・セイアー

出演者
サリー・ホーキンス
マイケル・シャノン
リチャード・ジェンキンス
ダグ・ジョーンズ
マイケル・スタールバーグ
オクタヴィア・スペンサー

『シェイプ・オブ・ウォーター』のあらすじ

1962年、アメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働くイライザはある日、施設に運び込まれた不思議な生きものを清掃の合間に盗み見てしまう。“彼”の奇妙だが、どこか魅惑的な姿に心を奪われた彼女は、周囲の目を盗んで会いに行くようになる。幼い頃のトラウマからイライザは声が出せないが、“彼”とのコミュニケーションに言葉は必要なかった。次第に二人は心を通わせ始めるが、イライザは間もなく“彼”が実験の犠牲になることを知ってしまう。“彼”を救うため、彼女は国を相手に立ち上がるのだが——。

出典:http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』オフィシャルサイト| 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント



感想・レビュー

『シェイプ・オブ・ウォーター』

『シェイプ・オブ・ウォーター』、日本語に訳すなら「水の形」でしょうか。

なんとも矛盾に満ちた、詩的なタイトルです。

果たして水の形とは・・・

映画の始まりは海の底に沈んだ、とある部屋を映し出します。

このシーンは1997年の映画『タイタニック』の冒頭を思い出させますが、『タイタニック』が恋愛映画でありつつも、リアリティに徹底的にこだわって制作されたのとは対称的に『シェイプ・オブ・ウォーター』は恋愛映画でありつつもあくまでファンタジー。それは同シーンで流れる音楽からもわかります。

映画の舞台は1962年の冷戦下のアメリカ。話すことのできない中年女性のイライザ。彼女は機密機関の「航空宇宙研究センター」で清掃員として働いています。

ある時、センターに未知の生物が運び込まれます。

イライザはその生物と次第に心を通い合わせていきます。



ギレルモ・デル・トロの想い

モンスターや怪獣映画に非常に造詣の深いことで知られるギレルモ・デル・トロ監督ですが、今作のクリーチャーの半魚人は1954年の映画「大アマゾンの半魚人」に強い影響を受けています。同作での半魚人(ギルマンと呼ばれる)はジュリー・アダムス演じる女性所員のケイに恋をしますが、それはギルマンの一方的な悲恋に終わります。

ギレルモ・デル・トロは、ギルマンの哀れさをどうにかして救いたいと考えていたと言います。

「テレビで『大アマゾンの半魚人』(54年)という映画を観たんだ。アマゾン川の奥地に入った探検隊が大昔から生きてきた半魚人と出会う。半魚人は探検隊の女性に恋するけど、殺されてしまう。半魚人があまりに可哀そうで、僕は、半魚人が彼女と仲良くデートする絵を描いた。それからずっと2人を幸せにしたいと思い続けて、40年以上かけて夢をかなえたんだ」

出典:https://bunshun.jp/articles/-/6307
ギレルモ・デル・トロ「テレビの中の怪獣だけが友達だった」 | 文春オンライン

また、こうした作品の場合、クリーチャーを俳優のモーションキャプチャを元にしてCGで構築していく方法の方がスタンダードと言えそうですが、 『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人は着ぐるみ方式で表現されており、ギレルモ・デル・トロ監督のVFXではない、あくまで『特撮』への強い愛情(もはや偏愛と言ってもいいかもしれません)を感じさせます。

イライザの「シェイプ」

映画に話を戻しましょう。

イライザはどんどん半魚人に惹かれていきます。

互いに孤独であり、半魚人もイライザも言葉を発声できないところ、そしてありのままのイライザを受け入れてくれた存在が半魚人なのでした。

周囲の人たちは少なからず彼女を「声の出せない」女性と見ていますが、半魚人にとってはそんなイライザを「イライザ」として受け止めています。

人の目にはイライザの「シェイプ」は不完全に映るかもしれませんか、半魚人にとってイライザの「シェイプ」は決してそうではありませんでした。

やがて、互いのなかに恋愛感情が生まれるのは正にファンタジー。

ファンタジーにおいては論理の飛躍や破綻、矛盾はある程度目を瞑るべきものですが、それでもイライザと半魚人を恋愛関係に飛躍させるのはファンタジーとしか言いようがありません。

そもそも半魚人は男性的な体つきこそしているものの、性別があるのかどうかすら不明ですし、もしかしたら雌雄同体かもしれません。

なぜイライザは半魚人に恋したのか。

その謎解きのヒントはラストシーンで明かされますが、それはまた後で述べたいと思います。




クリーチャーで実験しなくても!

おとぎ話とも形容される本作は、他にも変な設定があって、そもそもクリーチャーがセンターに連れてこられたのは『人間の前に実験として宇宙船に搭乗させるため』。

時代設定は1962年。東西冷戦の真っ只中であり、米ソ間で宇宙開発競争が熾烈を極めた時代でもあります。

当時宇宙開発は人々の夢であると同時に自国の軍事技術の高さを示すための代理戦争の側面もありました。

『シェイプ・オブ・ウォーター』ではソ連が1957年に打ち上げた人工衛星スプートニク2号に犬が載せられていたことが笑い話として登場します。スプートニク2号は生物を宇宙へと連れ出すことを目的として打ち上げられた衛星であり、当初よりその生物の地球への帰還は考慮されていなかったという悲しい逸話があるのですが・・・。

ではソ連の犬に対してアメリカは何の生物で実験するのか、(史実では1961年にマーキュリー計画の中でチンパンジーを宇宙に送ってはいます。)かといって人間はまだ早い・・・

しかしだからといって、わざわざ半魚人のクリーチャーで実験しなくても!

その半魚人ですが、やはりソ連とアメリカの間で奪い合いになります。

どちらに転んでも半魚人を待つのは残酷な結末。イライザは半魚人を逃がそうと周囲の人たちに助けをもとめます。

イライザのよき友人である隣人のジャイルズは「なぜリスクを犯して怪物を逃がすのか」と、とりあってくれません。

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