【ネタバレ レビュー】タクシードライバー

「タクシードライバー」は1976年に公開されたマーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演のドラマ映画です。

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「タクシードライバー」のスタッフ・キャスト

監督
マーティン・スコセッシ
脚本
ポール・シュレイダー
製作
マイケル・フィリップス
ジュリア・フィリップス
出演者
ロバート・デ・ニーロ
シビル・シェパード
ハーヴェイ・カイテル
ジョディ・フォスター
アルバート・ブルックス

「タクシードライバー」のあらすじ

感想・レビュー

公開後に本作に触発されて起きたレーガン大統領暗殺未遂事件とも相まって有名な本作。

社会が暴力を誘発するという構造はのちの『ファイト・クラブ』、『ジョーカー』とも通じます。

本作のベースとなっているのはベトナム帰還兵に対するアメリカ社会の冷たさ。

ロバート・デ・ニーロ演じるトラヴィスは海兵隊としてベトナムに派遣され、名誉除隊によってアメリカに帰国してきました。

彼は戦争によるPTSDに侵されており、不眠症を患っていたのでした。

彼は眠れない時間をタクシードライバーとして利用することにし、夜の町を徘徊するようになります。

その中で彼の目に映ったのは堕落と欲望にまみれた社会の姿でした。

命を懸けて戦場で戦ってきたトラヴィスには、社会の堕落は許せないことでした。

ベトナム帰還兵の孤独

同じくベトナム帰還兵の孤独を描いた作品がシルヴェスター・スタローン主演の『ランボー』。命懸けで祖国のために働いた帰還兵を冷遇するアメリカの社会。

「何も終わっちゃいないんだ!俺にとっては戦争は続いたままなんだ!あんたに頼まれて必死で戦ったが勝てなかった!そしてやっと帰国したら、空港にはデモ隊が俺を待ち受け、罵り声を浴びせてきた、赤ん坊殺しだ大量殺人者だってね!あいつらにそう言う資格があんのか、誰一人戦争が何かも知らないで俺を責める資格があんのか!」

『ランボー』がベトナム帰還兵の不遇と悲しみ、彼らの目線に立った正義を描いているのに対して、『タクシードライバー』では帰還兵が感じる孤独をそのまま描き、あえて正義という側面には踏み込んでいません。

それは時代の要因も大きかったでしょう。当時はアメリカン・ニューシネマの時代でもありました。

当時はベトナム戦争の泥沼化や政治不信などによって、若いアメリカの世代は自国の掲げていた理想と現実のギャップに戸惑い、体制側への不信が広がります。

その失望感、不信感そして夢を信じられない虚無感は映画においてアメリカン・ニューシネマというジャンルに帰結していくのです。

このようにアメリカン・ニューシネマにはアメリカが当時抱えていた問題点や暗い世相などが反映されていました。

アイリス

『タクシードライバー』で大きな印象を残すのは当時13才のジョディ・フォスター。12才の売春婦アイリスを演じています。

彼女は今作において無垢の象徴でもあります。

『タクシードライバー』にはアイリスとべティという二人の女性が登場します。

まずトラヴィスが恋い焦がれる存在として登場したべティ。彼女は時期大統領候補のパランタインの選挙事務所で働く女性。美人で聡明、社交的でもある彼女の気品にトラヴィスは惹かれていきますが、トラヴィスの暴挙によって破局。トラヴィスは「彼女も冷たい社会の女だった」と言います。

実際に彼女はそれからずっとトラヴィスを嫌悪しますが、彼が新聞で英雄として取り上げられてからは再びトラヴィスに温かく声をかけるようになります。

いわばべティは社会の象徴のような女性。

だからこそ、一度そこに気づいたトラヴィスは二度と彼女を深追いしません。

それどころか、彼女を内心では軽蔑しているような眼差しすら見せます。

一方のアイリスはトラヴィスが嫌悪する堕落の中で生きる少女。

しかし、トラヴィス同様に彼女は彼女自身を取り巻く環境の犠牲者としてトラヴィスの目に映っています。

いわばトラヴィスは自分自身をアイリスに見ていると言えるでしょう。

社会の中で誰からも必要とされない孤独な自分にどう意味を持たせていくのか。

人間は本能的に繋がりを求める動物だと言われています。しかし現代社会の中ではその歯車が噛み合わないこともあります。そこで噛み合わない歯車がトラヴィスです。

そんな社会の支配者は誰なのか。

いつしかトラヴィスはパランタインの射殺を目指すようになります。

暴力の系譜

『タクシードライバー』のストーリーはアラバマ州知事ジョージ・ウォレスの暗殺未遂事件に影響を受けたと言われています。

アラバマ州知事であったジョージ・ウォレス。彼はこの事件によって下半身不随という障害を負っています。

ジョージ・ウォレスの暗殺未遂事件もまた映画『時計じかけのオレンジ』に触発されて起きた事件というのは興味深い事実です。

映画の中で果たせないことを現実が果たしてしまうというのは何とも皮肉な話ではあります。

アメリカン・ニューシネマのひとつに数えられることも多い本作。トラヴィスが抱えていた社会からの疎外感は当時の多くの若者が抱えていたことでしょう。

当初は『タクシードライバー』はその暗い内容からコロンビアは小規模な規模での公開を決定しますが、映画は初日から長蛇の列が出るヒットになったといいます。

トラヴィスは孤独な若者でしたが、多くの若者はトラヴィスに自らを重ね合わせ、強く共感したことでしょう。

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