「噂のモーガン夫妻」は2009年に公開されたコメディ映画です。
監督はマーク・ローレンス、主演はヒュー・グラントとサラ・ジェシカ・パーカーが務めています。
この記事のコンテンツの目次を見る
「噂のモーガン夫妻」のスタッフ・キャスト
監督
マーク・ローレンス
脚本
マーク・ローレンス
製作
マーティン・シェイファー
リズ・グロッツァー
製作総指揮
アンソニー・カタガス
ライアン・カバノー
出演者
ヒュー・グラント
サラ・ジェシカ・パーカー
サム・エリオット
メアリー・スティーンバージェン
「噂のモーガン夫妻」のあらすじ
不動産のトップ・セールス・ウーマンのメリル(サラ・ジェシカ・パーカー)と、敏腕弁護士のポール(ヒュー・グラント)は誰もがうらやむ超セレブ夫妻。だが、ある日夫の浮気が発覚し、妻の気持ちは急速に冷めていく。ポールは何とかメリルのご機嫌をとろうとするが、ある晩ディナーの帰りに二人は殺人現場に遭遇してしまうのだった。
出典:https://www.cinematoday.jp/movie/T0008200
噂のモーガン夫妻 (2009) – シネマトゥデイ
感想・レビュー
正直に言ってしまうと、個人的には実はこういう作品のレビューこそが最も難しいのです。
というのは、明確なメッセージや社会問題を訴えるような作品でもないから。もちろんそんな要素も映画の一面に過ぎず、こんな軽く観れるエンターテインメント・コメディも一映画ファンとしては好きです。
モーガン夫妻について、何か聞いた?
さて。今作『噂のモーガン夫妻』、原題は「Did You Hear About the Morgans?」で意訳としては、モーガン夫妻について、何か聞いた?という意味になるかと思います。
ただ、この原題だとモーガン夫妻本人たちより、消えたモーガン夫妻を巡って関係者の間で情報が錯綜する世界をコメディタッチで描いてもよかったかも、とも思ってしまいます。
監督はマーク・ローレンス。代表作にサンドラ・ブロックを起用した『デンジャラス・ビューティー』があります。他にも本サイトでは『Re:LIFE〜リライフ〜』もレビューしています。
『Re:LIFE〜リライフ〜』同様、噂のモーガン夫妻も決して悪くはないものの、飛び抜けてよいわけでもない、可もなく不可もない作品になってしまった印象です。
主演は「ラブコメの帝王」ヒュー・グラント。
世間的にステータスの高い仕事をしている(もしくはしていた)のに、私生活はダメ男という、相変わらずの役ですね。ジャッキーチェンがどの作品でも警官を演じているように、ヒュー・グラントもそのキャラクターの役をほとんどどの映画でも演じています。
そんなヒュー・グラント、今作では敏腕弁護士ながらも、自身の浮気が原因で妻とは離婚寸前の状況にあるという男、ポール・モーガンを演じています。
不動産のトップセールスマンである妻役にはサラ・ジェシカ・パーガー。代表作であるドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」さながらのセレブな都会的な女性のを演じています。
離婚寸前の彼らモーガン夫妻が、ある時偶然殺人現場を目撃。犯人の襲撃から逃れるために承認保護プログララムによってニューヨークからド田舎のワイオミング州で暮らすようになる、というのが大まかなストーリー。
ワイオミング州
このワイオミング州、日本人にはあまり耳馴染みのない地名かもしれません。
個人的にも映画が終わるまで架空の州なのかなと思っていたほど。
全米で最も人工の少ない州であり、鉱業と観光が州を支える財源となっています。
映画では同州の豊かな自然も堪能できるのはいいですね。
愛称が『カウボーイ州』なだけあって、劇中でもロデオイベントが開催されるなど、カウボーイ文化もまた色濃く残る地域です。
アクション映画の定型
都会から来たモーガン夫妻は慣れない田舎の暮らしのなかで会話を重ね、お互いを見つめ直していきます。
危機的な関係にあるカップルがそれまでと全く違う環境のなかで絆を取り戻していくというのはラブコメというよりはアクション映画の定型です。
『96時間』『トゥルーライズ』、親子関係だと『ターミネーター2』『ダイ・ハード4』などがこれに当てはまります。
では非アクション映画の『噂のモーガン夫妻』においてそれが効果的に機能しているかと言うと、そうではないのです。
アクション映画における非日常はそのまま食うか食われるかの命のやり取りの場面であることが多く、必然的に緊張感のあるシーンになります。
そのような状況の方がより親密になりやすいことは「つり橋効果」とも呼ばれ、広く知られています。
それまでニューヨークから田舎という非日常空間への移行はネットや電話など外部との連絡手段が制限されるという条件はありつつも、特に緊張感もなく牧歌的なもの。もちろん何もない環境で二人の会話が増えるというのは理解できるものの、決定的にふたりの心情が変化したきっかけは不明確で『結末ありき』の流れにも思えてしまいます。
その点で言えば犯人を捕まえるラストも少々強引ぎみ。殺し屋にしても元々殺人の目撃者であるモーガン夫妻の口封じが目的なら、なぜ多くの人が集まるロデオ大会の場で殺そうとしたのか、全体に設定の詰めが甘い気もします。
モーガン夫妻が目撃した殺人にしたってマフィアの情報を警察に流していた裏切り者への制裁として行われたもの。
となると、当然殺し屋ひとりだけが殺人に関与しているわけではない、と考えますが、そのあたりのもっと上の組織の描写は一切なし。
殺し屋が捕まった時点で証人保護プログラムを解除するのは少々早すぎる気も。。
もちろんツッコミどころを挙げればキリがないのはこうしたコメディの宿命ではあるものの、決してつまらない作品でもないのも事実。
ヒュー・グラントの功績
やはりそこにはヒュー・グラントの力が大きいと思います。
マーク・ローレンスとは今作以外でも『ラブソングができるまで』と『Re:LIFE〜リライフ〜』で組んでいるヒュー。
マーク・ローレンスもまたヒュー・グラントの活かし方をわかっている監督の一人かもしれません。