【ネタバレレビュー】クリード 炎の宿敵



『クリード 炎の宿敵』は2019年に公開されたアメリカのドラマ・ボクシング映画です。

2015年に公開された『クリード チャンプを継ぐ男』の続編にあたります。

主演は前作に引き続きマイケル・B・ジョーダンとシルヴェスター・スタローン。

『ロッキー4/炎の友情』でロッキーに敗れたイワン・ドラコがその雪辱を晴らすため、息子のヴィクター・ドラコとアポロ・クリードの息子、アドニス・クリードとの対決を画策します。

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「クリード 炎の宿敵」の予告編

「クリード 炎の宿敵」のスタッフ・キャスト

監督
スティーヴン・ケープル・Jr.

脚本
シルヴェスター・スタローン
チェオ・ホダリ・コーカー

製作
シルヴェスター・スタローン
アーウィン・ウィンクラー
チャールズ・ウィンクラー
デヴィッド・ウィンクラー
ウィリアム・チャートフ

出演者
マイケル・B・ジョーダン
シルヴェスター・スタローン
テッサ・トンプソン
ウッド・ハリス
フィリシア・ラシャド
フローリアン・ムンテアヌ
ドルフ・ラングレン



「クリード 炎の宿敵」のあらすじ

ウクライナのキエフでのボクシングの試合。相手を早々にKOする男。彼こそかつてアドニスの父、アポロ・クリードを死に至らしめた、イワン・ドラゴの息子、ヴィクター・ドラゴだった。

そのころ、アドニスは世界タイトル戦に勝利し、恋人のビアンカとも結婚するなど、幸せの絶頂にあった。

数日後、ロッキーのもとにイワン・ドラゴが訪ねて来る。イワンはアドニスと息子のヴィクターとのタイトルマッチを切望していた。

30年前、アポロを倒したイワンはしかしその後ロッキーに敗れた。祖国では手のひらを返したように一転して蔑まれ、妻とも離婚、貧困のなかで野良犬のようにその日その日を戦って生きていくしかなかった。アドニスとの対決で家族の雪辱を晴らそうとするイワンだが、ロッキーはその申し出を冷たく断るのだった

また、アドニスもプロモーターからヴィクターとの対決を打診されていた。
父を殺された想いと、そのトラウマをヴィクターに勝つことで乗り越えたい。

そうロッキーに意思を伝えるも、ロッキーはアドニスに猛反対する。

「(俺は負けないというアドニスの言葉に対して)そう言ったお前の親父は俺の腕の中で死んだ」「あまりに危険すぎる」と。

ドラゴとの初戦、アドニスの頭の中には父の敵討ち、そして父を越えたい、歴史を塗り替えたいという野心もあったでしょう。ロッキーの反対を押しきり、袂を分かつことになりながらも、アドニスはリングへ向かいます。

迎えた試合の日。しかし、貧しい生活のなかでロッキーへの憎悪を燃やし続けていたドラゴ親子の執念、想いの深さにアドニスは敗退。失意の中、アドニスは子供が生まれたことで自分自身を見つめ直す。

また、母の計らいでロッキーとも和解したアドニスは、自身の戦う理由を取り戻し、ロッキーとともに野獣となるための地獄のトレーニングを開始する。

感想・レビュー

以下、ラスト・結末を含むネタバレがあります。

圧倒的な家族の物語

『クリード チャンプを継ぐ男』の内容をまたひとつ深く掘り下げた作品ですね。

今作で炸裂するのは圧倒的な家族の物語。

因縁の相手とも言えるドラゴ親子をロッキーとクリードの敵として采配することでより深く炙り出されていきます。

ウクライナのキエフでのボクシングの試合の様子から映画は始まります。

相手を早々にKOする男こそ、かつてアドニスの父、アポロ・クリードを死に至らしめた、イワン・ドラゴの息子、ヴィクター・ドラゴでした。

このヴィクターを演じたのはルーマニアのボクサーでもある、フロリアン・ムンテアヌ。アドニスを演じたのマイケル・B・ジョーダンより頭1つ大きいんですね。

一方、アドニスはタイトル戦に勝利し、恋人のビアンカとも結婚するなど、幸せの絶頂にありました。かつてロッキーがそうであったように。

そんなロッキーのもとにイワン・ドラゴが訪ねてきます。

イワン・ドラゴはアドニスとのタイトルマッチを切望していました。

アポロを倒したイワンはしかしその後ロッキーに敗れます。

祖国では手のひらを返したように一転して蔑まれ、妻とも離婚、貧困のなかで野良犬のようにその日その日を戦って生きていくしかなかったと。

ロッキーに憎しみを向けアドニスとの対決で家族の雪辱を晴らそうとするイワンにロッキーはこう言い放ちます。

『野良犬はこの街では処理される』と。

また、アドニスもプロモーターからヴィクターとの対決を打診されていました。

父を殺された想いと、そのトラウマをヴィクターに勝つことで乗り越えたい。

で父の名に恥じない存在になったかと思われていたアドニスの中にはまだ自分の人生を歩めていないという悔しさがありました。チャンピオンベルトもアポロの息子でなければ獲得できなかったかもしれない。アドニスはそんな想いを抱えていました。

ロッキーの孤独

ロッキーの孤独もまたこの映画では前作以上に強調されています。

前作でロッキーに立ちふさがる壁として設定されていたのは『癌』でしたが、今回は息子のロバートへどう向き合うのかが壁として設定されています。

ロッキーの名の影に負けそうになり、カナダへ住まいを写し出されますロバート。もう結婚して子供(ロッキーにとっての孫)もいる息子に連絡をしてもいいものかどうか。電話をかけようとしてもダイヤルをためらってしまうロッキーの姿に家族の難しさを感じてしまいます。

名に負けた、これに関しては良いとも悪いともないと思いますが、ロバートの存在はある意味ではアドニスがアポロの名に負けた『もしも』の姿だったのかもしれません。 もちろんアポロと同じボクシングを選んだからには、アポロの名に負けることはできません。

アドニス・クリードの成長

ドラゴとの初戦、アドニスの頭の中には父の敵討ち、そして父を越えたい、歴史を塗り替えたいという野心もあったでしょう。ロッキーの反対を押しきり、袂を分かつことになりながらも、アドニスはリングへ向かいます。

このあたりのアドニスが感情的になり我を通す場面はまだまだアドニスの中に子供っぽさや幼稚さが抜けきれていないことを示しています。

迎えた試合の日。しかし、貧しい生活のなかでロッキーへの憎悪を燃やし続けていたドラゴ親子の執念、想いの深さにアドニスは敗退します。(試合結果そのものはドラゴの失格により、アドニスの勝利となりますが、実際はアドニスの劣勢は誰にも明らかでした)

失意の中、アドニスは子供が生まれたことで自分自身を見つめ直します。

また、母の計らいでロッキーとも和解したアドニスは、自身の戦う理由を取り戻し、野獣となるための地獄のトレーニングを開始します。

ヴィクター・ドラゴとの再戦の場所はロシア。

こう書くとリブートの側面も強いと思いますが、いい作品です。

冒頭にものべたように、『クリード 炎の宿敵』ではいくつもの家族の様々な想いを複雑に積み重ねた内容だからです。

アドニスの妻、ビアンカの難聴も前作では設定としては存在していても、病気を感じさせる描写はなく、ほぼ健常者と同様に描かれていました。

今作では、難聴が進み、またそれが子供にも遺伝してしまうかもしれないという苦悩をクリード夫妻にもたらします。

そんな中でも必死にクリードを支え、救おうとする姿は、前作の恋人、彼女というポジションではなく、妻として、母親としてのものです。

再戦の地、ロシアで何とかヴィクターに勝利したアドニスは、ビアンカとともにアポロの墓前に勝利の報告をします。

初めて訪れたアポロの墓。それは父の呪縛から一人立ちし、自分の人生を歩き始めたことをアドニス自身が実感していたからでしょう。

ロッキーもその頃息子を訪ねていました。ロッキーが勇気を出して、孤独な生活から家族の繋がりを再確認した場面です。

それぞれの家族の再生。前作では描写されなかった視点をうまく補完した良質な作品となっています。



前作「クリード チャンプを継ぐ男」と比較して

ただ、前作と比較すると、やはり前作に軍配が上がってしまうかなというのが正直なところ。

微妙なところで『ロッキー』のツボを外しているんですよね。正直おしい!

テーマソングが流れるタイミング

その一つは『ロッキー』のテーマソングが流れるタイミング。

前作のクリードでは、アドニスが試合の途中で倒されながらも諦めずに立ち上がる場面で流れましたが、今作は立ち上がってヴィクターにパンチを放つ場面で流れたんですね。

これは違うかな?という感じがします。

というのも、『ロッキー』の魅力は勝つことではないんですね。攻撃することでもない、ただ1つ、『諦めないこと』なのです。

もし『ロッキー』の魅力が勝つことであれば、ロッキーは一作目でアポロ・ クリードに勝っていたことでしょう。

ドラゴ親子への救済

もうひとつはドラゴ親子への救済がなかったこと。

ヴィクター・ドラコはアドニスを倒し、一度はロシア政府からの称賛と名声を得ました。絶頂にある中で祖国でのアドニスとの再戦、しかし、父親同様負けてしまえばまた元の生活、もしくはそれ以下の惨めな生活に戻ることになります。

ドラゴ親子の反則も辞さない勝利への想いはロッキーへの恨みもあるでしょうが、目の前の生活が懸かった切実なものなのです。

僕は試合の後半のシーンはそういったことを考えながら、ヴィクターにも感情移入していました。

特に、憎んでいたはずの母親がヴィクターが劣勢になると席を立っていなくなってしまっていたことにヴィクターが気付き、戦意を喪失してしまう場面は、口では憎んでいても、ヴィクターにはずっと母親への思慕があったことを見せつけます。

戦意喪失し、打たれるがままのヴィクターに、イワンはとうとうタオルを投げ込みます。

相手を倒すことを至上としてきたドラゴ親子。タオルを投げ込む場面はイワンが初めて相手を倒すことよりも、ヴィクターの命を優先した、家族想いの場面に見えるはみえるんですが、敗北したドラゴ親子が祖国でどんな目に遭うかは既に目に見えています。

酷評された『ロッキー4/炎の友情』ですが、試合の結果、ロッキーは「憎しみあっていた者同士でも互いに変われる」ことを声高に叫びます。

1つの試合が、両者ともにより良い関係になれることを示したわけです。

しかし、『クリード 炎の宿敵』にはそれがない。

例えば相手を倒すことを至上目的とするイワンに、最終ラウンドの前にヴィクターが『正々堂々とやって勝ちたい、クリードは素晴らしいボクサーだ』と、憎悪だけではなく、一人のボクサーとしての目覚めを描いても良かったはずなんです。これはこれでドラゴ親子にとって憎しみから解放された瞬間であり、それは救済のはずですから。

「クリード 炎の宿敵」

惜しい点はありつつも十分泣ける作品に仕上がっている本作。

2019年の初泣きはこの作品ですね。おすすめです。

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