【ネタバレ レビュー】「LOGAN/ローガン」ウルヴァリンが見つけた絶望の果ての希望とは

『LOGAN/ローガン』は2017年に公開されたスーパーヒーロー映画です。

MARVEL作品は正直苦手ではあるものの、こういう「スーパーヒーローが現実世界の中でどう生きていけるのか?」を描いた作品は好きなのです。ザック・スナイダーの『ウォッチメン』もそうですね。

『LOGAN/ローガン』は『X-MEN』シリーズとしては10作目、そして「ウルヴァリン」を主人公としたスピンオフシリーズとしては3作目です。

監督はジェームズ・マンゴールド、ヒュー・ジャックマンが主演を務めています。

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「LOGAN/ローガン」のスタッフ・キャスト

監督
ジェームズ・マンゴールド

脚本
マイケル・グリーン
スコット・フランク
ジェームズ・マンゴールド

原作
『オールドマン・ローガン』
マーク・ミラー
スティーブ・マクニーブン

音楽
マルコ・ベルトラミ

出演者
ヒュー・ジャックマン
パトリック・スチュワート
ボイド・ホルブルック
スティーヴン・マーチャント
リチャード・E・グラント
ダフネ・キーン

「LOGAN/ローガン」のあらすじ

すでにミュータントの大半が死滅した2029年。長年の激闘で心身共に疲弊しきったローガンはもはや不死身の存在ではなく、リムジンの運転手として日銭を稼ぎ、メキシコ国境近くの廃工場で年老いたチャールズ・エグゼビアの面倒を見ながら暮らしていた。ある日、ローガンはガブリエラという女性から、ローラという謎の少女をノースダコタまで送り届けてほしいと依頼される。まもなくガブリエラは殺害され、やむなくローガンはローラを廃工場にかくまうが、ローラを奪い返すために巨大企業トランシジェン研究所から放たれた男ピアースが武装集団を引き連れて廃工場に押し寄せてくるのだった……。

出典:http://www.foxmovies-jp.com/logan-movie/
映画『LOGAN/ローガン』オフィシャルサイト| 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

感想・レビュー

『X-メン』が刻んできた「現実」

『X-メン』は現実社会のマイノリティへの迫害から生まれました。

原作者のスタン・リーはかつて親族をナチスのホロコーストにより失っています。

また、コミックの『X-メン』が発売された頃はまさに公民権運動の真っ只中。黒人差別やユダヤ人への差別、そうした時代の空気を転写させて生まれた作品が『X-メン』でした。

2000年に公開された映画版の『X-メン』を監督したブライアン・シンガーも、自らがゲイであることによって差別されてきた経験を作品に刻み付けました。

本作『LOGAN/ローガン』では、まさにマイノリティであるミュータントは駆逐され、滅びようとしている世界。

『X-メン』が描いたメッセージは『LOGAN/ローガン』にも引き継がれています。



ミュータントの終末世界

年を取らないはずだったウルヴァリンも自らに宿ったアダマンチウムの副作用によって老い、かつての強さは観る影もなく衰え、車の運転手をしながら孤独に暮らしています。

自分の体を盾にしてさえ商売道具の車を守ろうとする、ミュータントの成れの果ての悲哀。

希望のない世界。それが『LOGAN/ローガン』が冒頭で見せつけるウルヴァリンの世界です。

そんな彼が唯一気にかけているのが、ミュータント、プロフェッサーXのチャールズでした。しかし、チャールズは高齢であり、思考能力も衰え、認知症の症状も現れています。

まさに全てが終わろうとしているミュータントのディストピア。

『リトル・ミス・サンシャイン』と『アイ・アム・レジェンド』

チャールズをかくまっている所をピアーズに襲われ、ウルヴァリンはチャールズ、ローラをつれて逃避行に出ます。三人は一台の車でミュータントの暮らす場所『エデン』があるというノースダコタを目指します。

映画評論家の町山智浩氏によると、監督のジェームズ・マンゴールドは旅の場面では『リトル・ミス・サンシャイン』を参考にしたそうです。

確かに少しボケの入ったチャールズは『リトル・ミス・サンシャイン』のキャラクターでいうと祖父のエドウィンしょうし、そんな祖父ともっとも心を通わせている末っ子のオリーブは『LOGAN/ローガン』では言うまでもなくローラの役回りです。

(ポップなサングラスをかけているところも大きな眼鏡をかけているオリーブを連想させます。)

『リトル・ミス・サンシャイン』はフーヴァー一家が末っ子オリーブが出演するミスコン、「リトル・ミス・サンシャイン」をめざしてカリフォルニアのレドンドビーチへ向かう物語でした。そのなかでバラバラだった家族には絆が芽生えていきます。

個人的には『LOGAN/ローガン』は2007年の映画『アイ・アム・レジェンド』も連想させます。

病原菌の蔓延により、人類が死滅し、ゾンビ化した『ダークシーカーズ』と、奇跡的にウイルスに免疫を持ち、彼らを人間に戻すための研究を続けるロバート・ネヴィル。

『LOGAN/ローガン』の世界で滅びつつあるミュータントはそのまま世界最後の人類になりつつあるロバート・ネヴィルそのものでしょうし、ローラの語る『楽園』の存在を信じられないウルヴァリンは、生き残った人類の一人であるアナが語った『人類が暮らすコミュニティ』の存在を認めようとしなかったネヴィルの姿が重なります。

ネヴィルにとって希望とは、ダークシーカーズを人間に戻すこと。

では『LOGAN/ローガン』でのウルヴァリンの希望とは何でしょうか。



ウルヴァリンの希望

ローラは傷だらけのウルヴァリンに『死にたいのね』と問いかけます。

二人はなんとかノースダコタにたどり着きます。そこはローラが話していたミュータントの子供たちが暮らす『約束の地』。

そこでローラはウルヴァリンにアダマンチウム製の弾丸を見せます。それはウルヴァリンが自らを撃って死ぬために持っている弾でした。

それは正に絶望的な希望。

『俺は一人がいい、俺が愛する人はみんなひどいことになる』

そう言うウルヴァリンの言葉に希望はありません。

年を重ね、生きる毎にウルヴァリンの希望は打ち砕かれていきました。

現にローラとの旅の途中でもチャールズとキャリバンを亡くしています。

しばしの休息も束の間、『エデン』にも人間の魔の手が襲いかかります。

ウルヴァリンは子供たちのために命を懸けて最後の戦いに挑んでいきます。

子供たちこそウルヴァリンが絶望の果てに託した希望ではなかったでしょうか。

瀕死のウルヴァリンの手を握り、ローラはウルヴァリンを『お父さん』と呼びます。

『そうか、こういう感じなのか。』

死にゆくウルヴァリンはそう洩らします。

それはウルヴァリンが初めて家族の温かさを経験したのと同時に何人もの人に『死』を与えてきたウルヴァリンが初めて体験する『死』を指しての言葉でもあります。



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