【感想 レビュー】「グッドナイト&グッドラック」

『グッドナイト&グッドラック』は2005年に製作されたアメリカ映画。

40年代後半から50年代後半にかけてアメリカに吹き荒れた「赤狩り」をテーマにしています。

監督・脚本・出演はジョージ・クルーニー。

実在したニュースキャスターであるエドワード・R・マローを描いています。

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「グッドナイト&グッドラック」のスタッフ・キャスト

監督
ジョージ・クルーニー

脚本
ジョージ・クルーニー
グラント・ヘスロヴ

製作
グラント・ヘスロヴ

製作総指揮
マーク・バダン
スティーブン・ソダーバーグ

出演者
デヴィッド・ストラザーン
ジョージ・クルーニー
ロバート・ダウニー・Jr
パトリシア・クラークソン
レイ・ワイズ

「グッドナイト&グッドラック」のあらすじ

1950年代のアメリカ。当時既にマッカーシズムは一般市民からの支持を失いかけていたが、自分自身が標的にされることを恐れて誰も表立ってマッカーシーを批判できない状態にあった。

そんな中で最初に表立ってマッカーシーを批判したのがCBSの人気キャスターであったエドワード・R・マロー。

そのきっかけは空軍でマイロ・ラドゥロヴィッチ中尉が「父親と妹が共産主義者だという内部告発があった」というだけの理由で空軍から理不尽な除隊勧告を受けたため。

マッカーシーの告発のみで証拠も無しにしていく姿勢をマローは舌鋒鋭く批判していく。

感想・レビュー

映画と赤狩りというとどうしてもハリウッドにおける赤狩りを連想させますが、実際には赤狩りはハリウッドの映画界だけでなく、あらゆる職業、人種にまで及んでいます。

その実態を写し出しているのが今作『グッドナイト&グッドラック』。
CBSで人気キャスターだったエドワード・R・マローとマッカーシズムとの戦いを描いています。

赤狩りとはなにか

もともとハリウッドはリベラルな風土があったのですが、戦時中は敵対国の存在もありハリウッドは積極的に政府(軍)に協力していました。

日本の映画界も戦時中には国威発揚のための映画を多く生み出しましたが、アメリカにおいてもそれは同様で、軍部の要請によってハリウッドから多くの作品が生み出されました。
戦争が終わり、外部に共通の敵を無くしたアメリカは、自分達の内部に潜む危険を猛烈に意識するようになります。それが共産主義でした。

「敵が海から我が国を侵攻するために兵を送ってきたのではなく、むしろ地球上で最も素晴らしい国の恩恵を受けている者達の裏切り行為による」

赤狩りの中心人物であった共和党右派のジョセフ・マッカーシーは共産主義についてこう述べています。

そして、赤狩りの目はハリウッドに向けられました。アメリカは第二次世界大戦の時にハリウッドが大衆にもたらす影響力の大きさを知っていたのです。

後述するダストン・トランボをはじめとする「ハリウッド・テン」、喜劇王として有名なチャールズ・チャップリンらがハリウッドから追放されました。

マッカーシズムの脅威

映画の舞台は1950年代のアメリカ。当時既にマッカーシズムは一般市民からの支持を失いかけていましたが、自分自身が標的にされることを恐れて誰も表立ってマッカーシーを批判できない状態にありました。

そんな中で最初に表立ってマッカーシーを批判したのがエドワード・R・マローでした。

そのきっかけは空軍でマイロ・ラドゥロヴィッチ中尉が「父親と妹が共産主義者だという内部告発があった」という理由で空軍からの除隊勧告を受けたため。

おそらくはその名前からソ連圏の出身であることは想像に難くありません。

ちなみに現実に女優のミラ・ジョヴォヴイッチも少女時代、冷戦時代のソ連から来たということもあって、同級生達から「ロシアのスパイ」、「コミー」(commie コミュニスト)などと罵倒されたと告白しています。

マッカーシーの告発のみで証拠も無しにしていく姿勢をマローは舌鋒鋭く批判していきます。

少しでも共産主義と関わった者は職を追放される。当時の赤狩りが如何にヒステリックで極端なものであったかがわかります。

赤狩りの中での「転向」

実際に赤狩りの追及に対して「転向」した者も少なくありません。

映画監督のエリア・カザンもその一人。

若い頃に一度共産主義にかかわっていたカザンは共産党員であるという疑惑を持たれ、公聴会への出席を求められます。
一度は証言を拒んだものの、カザンはハリウッドでの共産主義者のを渡してしまうのでした。
最も一説によればカザンは公聴会での証言を通して、アメリカにある共産主義系のグループのほとんどが危険性のないものであることを伝えようとしていたといいます。

確かに共産主義者に支配されるということは国家の転覆を意味します。
冷戦下の仮想敵国であったソ連に侵食されていく恐れがアメリカの政治家たちには恐ろしかったのかもしれません。

実はその意味では『グッドナイト&グッドラック』はマッカーシーと同じ立場に立っています。

すなわち共産主義=悪であると。

赤狩りをテーマにした作品に脚本家のダルトン・トランボを描いた『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』という映画があるのですが、こちらでは共産主義もまた考え方のひとつであるというリベラルな見方をしています。
何しろ主人公のトランボ自体が筋金入りの共産主義者。

のちにトランボは唯一の監督作『ジョニーは戦場へ行った』で強く反戦メッセージを打ち出しています。

『グッドナイト&グッドラック』が批判しているのはあくまでも公平かつ公正な法手続に則らないマッカーシズムのやり方なのです。

マッカーシズムをして「現代の魔女裁判」と呼ぶ人も多くいます。

そして、『グッドナイト&グッドラック』はマッカーシズムではなく、コマーシャリズムに傾きつつあるテレビのあり方に疑問を呈してきます。

正直なところ、それだと当初のテーマとは少しズレた着地点だなとは思うのですが、テーマとしてはコマーシャリズムに堕してしまうメディアの方が現代にも通じるテーマであるかもしれません。

赤狩りの終焉

エドワード・R・マローの批判をきっかけに多くのメディアもマッカーシー批判を繰り広げることとなりました。

一方でマッカーシーも赤狩りの動きを陸軍に対しても見せていましたが、次第にその主張は攻撃的かつ侮辱的なもので、また告発の内容の信憑性の低さを陸軍の弁護士であったジョセフ・ウェルチにこう叱責されています。

「君、ちょっと話を止めて良いかね?……もう沢山だ。君には品位というものが無いのかね?」

そのようなマッカーシーの言動は上院の中にも反感を広げ、その結果、上院はマッカーシーに対して65対22で「上院に不名誉と不評判をもたらすよう行動した」として事実上の不信任を突きつけ、ここにマッカーシーがもたらした赤狩りは終焉を迎えることになります。

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