シン・ウルトラマンにはなぜカラータイマーがないのか

1966年に放送された『ウルトラマン』が庵野秀明と樋口真嗣の手によって『シン・ウルトラマン』として映画化されることが周知のとおり。

監督は樋口真嗣。企画・脚本は庵野秀明が務め、斎藤工、長澤まさみ、西島秀俊らの名前がキャストに挙がっています。

出典:https://shin-ultraman.jp/news/
NEWS|映画『シン・ウルトラマン』公式サイト

この度そのビジュアルが公開されましたが、なんとその胸にはウルトラマンの象徴ともいうべきカラータイマーが見当たりません。
それはなぜなのか、そもそものウルトラマンの誕生から見ていきましょう。

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ウルトラマンの誕生

ウルトラマンは前身の番組「ウルトラQ 」の好評を受けて制作されたテレビドラマでした。
あくまで怪獣と科学捜査隊の攻防をメインとした「ウルトラQ」に比べ、ウルトラマンでは最初から「正義のヒーロー」を登場させることが条件として決まっていました。
そこで考え出されたキャラクターがウルトラマンなのです。

ウルトラマンに至るまでに「ベムラー」「レッドマン」など名前と設定、外見の紆余曲折を経て、怪獣と差別化できる美しい見た目をポイントにウルトラマンは完成しました。

ウルトラマンのデザイン

ウルトラマンのデザインを担当したのは成田亨という人物です。

成田亨の書き起こした初期のウルトラマンのデザインにはカラータイマーは存在していません。

カラータイマーが設定されたのは完全に後付けで、30分の番組の中でなお、この3分という時間には長嶋茂雄の背番号(3)からとった、などの説があります。

成田亨はいまだかつてない格好のいい美しい宇宙人を目指し、ウルトラマンの造形に当たりました。

その完成形の中に当然ながらカラータイマーは含まれておらず、成田亨自身がその後描いたウルトラマンにもカラータイマーは描かれていません。

ちなみに成田亨は『ウルトラセブン』のデザインも依頼されましたが、その際には「後から付けられるような事があるのであれば、最初から付けておいたほうがいい」という考えから額に「ビームランプ」というカラータイマーと同じ役割を持つものを登場させています。

成田亨は結局『ウルトラセブン』を最後にウルトラマンシリーズから離脱。

しかし、その後も円谷プロとはデザイン料や著作権で争うなど、亡くなるまで緊張した関係hが続いていました。

その後、世代交代が進むにつれて、両者のわだかまりもなくなり、が当初目指した『真実と正義と美の化身』をデザインコンセプトとした「シン・ウルトラマン」が完成するに至ったのです。



「シン・ウルトラマン」のデザイン

「シン・ウルトラマン」ではカラータイマーのほかに、ウルトラマンの瞳ともいわれている目の部分ののぞき穴もなくなっています。

これも成田亨の意思に反し、演者の視界を確保するために後からつけられた苦肉の案でした。(実際に穴をあけたのは成田亨自身。「実際の撮影では元に戻すつもりだったが、面倒になってそのままにしてしまった、」と語られています)

今回のシン・ウルトラマンのデザインに関して企画・脚本を手掛けた庵野秀明は以下のコメントを寄せています。

『シン・ウルトラマン』の「ウルトラマン」について

成田亨氏の描いた『真実と正義と美の化身』を観た瞬間に感じた「この美しさを何とか映像に出来ないか」という想いが、今作のデザインコンセプトの原点でした。

我々が『ウルトラマン』というエポックな作品を今一度現代で描く際に、ウルトラマン自身の姿をどう描くのか。その問題の答えは、自ずと決まっていました。それは、成田亨氏の目指した本来の姿を描く。現在のCGでしか描けない、成田氏が望んでいたテイストの再現を目指す事です。世界観を現代に再構築する事は挑戦出来てもあの姿を改める必要を感じ得ず、成田亨・佐々木明両氏の創作したオリジナルへの回帰しか、我々の求めるデザインコンセプトを見出せませんでした。

その為に―――

『真実と正義と美の化身』と成田氏が当時から後年にかけて描いていた様々なウルトラマンのイメージを踏襲し融合し再構成させた新たな体表のライン。
成田氏が監修した、佐々木明氏制作によるマスク。
成田氏が望んだ、古谷敏氏の体型データをベースとした体躯。
成田氏が望まなかった、眼の部分に覗き穴を入れない。
成田氏が望まなかった、スーツ着脱用ファスナーに伴う背鰭を付けない。
そして、成田氏が望まなかった、カラータイマーを付けない。

と、いう作業を行った結果が今回のデザインです。

ウルトラマンの美しさに、少しでも近づきたいという願いから生まれた姿です。この想いが、わずかでも観客の皆様に伝わる事が出来れば、幸いです。

出典:https://shin-ultraman.jp/news/
NEWS|映画『シン・ウルトラマン』公式サイト

「シン・ウルトラマン」は2021年公開予定です。



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