【感想レビュー】「インスタント沼」三木聡監督の脱力系コメディ


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『インスタント沼』は2009年公開の麻生久美子主演・三木聡監督の脱力系コメディ映画。

ザ・三木聡ワールド!ってな感じの映画です。
前作の『転々』と『図鑑に載ってない虫』を足して2で割ったかのような作品ですね。

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「インスタント沼」のスタッフ・キャスト

監督
三木聡

脚本
三木聡

出演者
麻生久美子
風間杜夫
加瀬亮
相田翔子
松坂慶子

「インスタント沼」のあらすじ

担当する雑誌が廃刊になり、会社をやめたジリ貧のOL、沈丁花ハナメ。

悪いことは続くもので、飼っていたウサギ(ゴンザブロー)は花嫁相手探しの途中で他のウサギに混じってわからなくなってしまうし、母親はカッパを捕まえにいって意識不明の重体になってしまう。。

そんな中、母親の昔の手紙が見つかり、秘密にされていたハナメの本当の父親の存在が明らかに。

期待半分に会いに行った父はインチキ骨董屋を営む、どこかヘンでどこか憎めない、変わり者だったー。

感想・レビュー

三木聡作品は個人的に大好きです。

転々ではノスタルジーを、図鑑に載ってない虫では段違いの小道具いっぱいのロードムービーでした。

インスタント沼は他のまともな(?)映画とは違う意味で人生の素晴らしさを語っている作品なのかなと(違うかな??)

劇中で、やる気の起きないハナメに骨董屋が教えたスパイスは『水道の蛇口をひねれ!』



三木聡監督の作品の登場人物はどこかヒッピーの香りがします。

今作でもまともに働いている人は冒頭の出版社の人たちを除いてほとんどいません。

誰もが地図なき人生をロードムービーのようにあてなくただのんびりと漂っている、そんな印象を受けます。

そんな社会のレールを外れた人たちを三木聡監督はどの作品でも愛情をもって取り上げています。

さて今作の冒頭の3分間の演出はぜひ見てほしいシークエンスです。
この3分間があることで、観客は一気にこの映画の世界に引き込まれていくはずです。

プライベート・ライアン』の冒頭20分間は「映画史に残る20分」と言われますが、「インスタント沼」の冒頭3分間は「コメディ映画史に残る3分間」ではないでしょうか。

あと、この作品の麻生久美子さんのファッションがとても素敵なので、女性の方はそのあたりも要チェックです!

「インスタント沼」の名言・名セリフ

「水道の蛇口をひねれ!」

シンクでも洗面所でもお風呂でも、水が溢れるまでに何かをしよう!ということで、劇中ではお風呂が溢れるまでに昼御飯を食べてこようという展開でした。

劇中のハナメはじり貧で、なんとなく人生が上手くいってないと考えています。

そんなハナメに対してこの映画は『人生の楽しみは小さなことで得られる、それに気づくかは自分次第だ』ということを教えているように思います。

「いい!?世の中の出来事のほとんどは大したことないし、人間、泣いてる時間より笑ってる時間の方が圧倒的に長いし、信じられないものも見えるし、一晩寝れば大抵のことは忘れられるのよ!とにかく、水道の蛇口をひねれ!そして、その嘘と意地と見栄で塗り固められたしょーもない日常を洗い流すのだー!」

これは、ラストのセリフから拝借しました。ちょっとしたことで物の見えかたは大きく変わりますね。

三木聡監督作品は決して派手でも、万人に受け入れられる作品でもない(ギャグセンスが独特すぎる!)のですが、同じように三木聡作品で光が当てられるのは、マイノリティの「変人」たち。

普通のサラリーマンなんてほとんど出てこない。

かといって、決してカッコいいマイノリティでもないんです。『HERO』の木村拓哉みたいな感じではないんですよ。

それぞれの登場人物はどこかうまくいかない人生、もしくは落伍者のような人生を生きていつつも、それぞれが人生を楽しんでいるのが伝わってきます。

そこにユーモアと、暖かい眼差しを向けるのは三木聡監督作品ならではです。



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