ホラー映画の主人公はなぜ女性が多いのか?

ホラー映画の主役になぜ女性が多いのでしょうか?
皆さんはそう思ったことはありませんか?

長い間ハリウッドでは「女性を主人公にした映画」は売れないと言われ続けてました。

なのになぜホラー映画の主役には女性が多いのでしょうか。

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ホラー映画の主役になぜ女性が多いのか?

思い付くホラー映画を列挙していきます。

『エイリアン』

『キャリー』

『シャイニング』

『悪魔のいけにえ』

『ドーン・オブ・ザ・デッド』

『13日の金曜日』

『シャイニング』こそ、主役は男性のジャック・ニコルソンですが、それ以外は全て女性が主役の映画です。

最近でこそ、『ワンダーウーマン』『オーシャンズ8』、『ターミネーター ニューフェイト』など女性の活躍する映画は増えてきましたが、ホラー映画においてはそれに先駆けて女性をキャラクターの中心に置いていると感じます。

それはなぜでしょうか。

恐怖を描くため

「スクリーム クイーン」という言葉があります。
ホラー映画にやスリラー映画で、悲鳴や叫び声が印象的な女優を指す言葉です。
別名、絶叫クイーンとも呼ばれ、よりインパクトのあるホラー映画が量産された70~80年代に多く輩出されました。

例として『サイコ』のジャネット・リー、『ハロウィン』のジェイミー・リー・カーティス、『悪魔のいけにえ』のマリリン・バーンズなどがあげられます。
彼女たちのスクリーンを貫くような叫び声は映画の恐怖を際立たせ、しばしばその映画の名場面として強烈に人々に記憶されました。
『サイコ』のシャワールームでジャネット・リーがノーマン・ベイツに惨殺されるシーンはその好例ですね。



加えて、ホラー映画の主役に女性が多い理由としては観客が感情移入しやすいという面もあるのではないでしょうか。

『悪魔のいけにえ』のサリーはひたすらレザーフェイスから逃げようとします。
これがもし男の主人公であれば、70年代の公開当時には「男のくせになぜ逃げ続けるのか?なぜ戦わないのか?」という感想を抱く人もいたのではないでしょうか。女性=か弱いなどの図式もそれを助長していたのでしょう。

これは他の映画でも形を変えて取り入れられています。

1980年の映画『シャイニング』では女性の代わりにここに子供を置いています。
逆に女性ヒロインとしてはシュリー・デュバルが演じたジャックの妻ウェンディがそれに当たるのですが、ウェンディ はジャックを冷凍庫に閉じ込めたり、包丁で切りつけるなど、決して逃げるだけではない、バトルヒロインの萌芽とも呼べる行動をとっています。

『シャイニング』では逃げる、感情移入しやすいキャラクターとして、女性の代わりに幼い子供のダニ ーがその役を担っています。
子供であれば先ほどの「かよわい」存在に当てはまりますし、殺されるのは観ている方も辛いですよね。

ちなみに女性のキャラクターほうが男性のキャラクターよりも感情移入しやすいという話は追いかける、逃げるの関係を逆にしても当てはまると思います。

1978年の映画『悪魔のえじき』。主演はカミール・キートン。喜劇役者バスター・キートンの孫という血筋ながら、それを全く感じさせない体当たりの演技を見せたことでもしられています。
休暇で訪れた田舎町でレイプ被害にあった女性が加害者の男たちに復讐していく作品ですが、果たして男女を逆にしたらこの主人公に本当に共感できたでしょうか。

 裏切り続けるジャンル

もう一つ、女性がホラー映画の主人公に多い理由としてはホラー映画自体が裏切り続けるジャンルということも言えるでしょう。

リドリー・スコット監督の1979年の作品『エイリアン』。SFホラー映画の古典でもありますが、後世に与えた影響は計り知れない名作でもあります。
裏切り続けるという言葉はこの映画のためにあるかのごとく、次々とセオリーを裏切り続けるストーリー展開。
特に「一旦全てが終わったかに見えて最後にもう一幕ある」というラストは『ターミネーター』を始め、あらゆる映画で模倣されました。

ホラー映画の使命は観客を怖がらせること。そのためには観客に常に刺激を与えていく必要があります。

ゾンビ映画はホラー映画において量産されづづけているジャンルですが、それでもゾンビ映画は次々に新しい試みを生み出しています。
最初は他のホラーキャラクターに比べると愚鈍な脇役的な存在だったゾンビですが、60年代にジョージ・A・ロメロがゾンビを終末世界へ導くホラーモンスターとして一気にホラーの中心的な存在へと押し上げました 。
その後も愚鈍なイメージから機敏に走り回るゾンビ、ゾンビを飼い慣らしている世界、はたまたゾンビの視点から描いた作品など、ゾンビはホラー映画にとって定番の存在でありながら常にマンネリを拒む好例です。

アクション映画であれば「王道のストーリー展開」でもそれなりに楽しませることができますが、ホラーにとってそれは恐怖を削ぐ展開にしかなりません。



ちょっと話が長くなりました。『エイリアン』に話を戻しましょう。
『エイリアン』の意外性はストーリー展開のみならず、ヒロインが最後まで生き残り戦うという点にもありました。
『エイリアン』の序盤は乗組員の誰が主人公なのかわからないように撮影されています。
徐々に「主人公=生き残る人物=リプリー」という図式が浮かび上がってくる作品です。
ちなみに前年に公開されたジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』も最後まで誰が生き残るか想像できない作品になっていました。

このようにホラー映画は「裏切り続ける」ジャンルでもあることから、その一つとして女性の主人公登用もあったのでしょう。

女性が主役の映画

2019年も『アリータ:バトルエンジェル』『アラジン』『トイ・ストーリー4』『ターミネーター ニューフェイト』など、多くの女性の活躍が力強く描かれてきました。

前述のように長い間ハリウッドでは「女性を主人公にした映画」は売れないと言われ続けてましたが、実際は女性を主人公にした映画のほうが興行収入がよかったそうです。

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