【考察】『ステキな金縛り』と『スミス 都へ行く』

三谷幸喜監督の2011年の映画『ステキな金縛り』。

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『ステキな金縛り』

失敗ばかりの落ちこぼれ弁護士、宝生エミは上司から最後のチャンスとして矢部五郎の事件を任される。

任務は妻殺しの容疑をかけられている矢部五郎の無罪を証明すること。

矢部五郎は自分のアリバイとして、『その日は旅館に泊まっていたが、幽霊のせいで金縛りにあい、旅館からでることができなかった』との証言をする。

そこで宝生エミは同じ旅館に泊まってみることに。

そこで証言とおなじ落武者の幽霊(更科六兵衛)が出現。

驚くエミだが、これがチャンスとばかりに裁判での証言を要求。

前代未聞の幽霊を証人とした裁判の行方は果たして?

一本のDVD

ステキな金縛りでは深津絵里演じる主人公の宝生エミの家に一本のDVDがありました。

そのソフトのタイトルは『スミス都へ行く』

エミはその作品を『父のお気に入りだった』と発言しています。

エミの父は優秀な弁護士で、すでに他界してしまっているものの、未だに法曹界で多くの尊敬を集める人物でした。
エミの父を演じているのは草なぎ剛。自体の登場シーンはほとんどなく、その代わり草なぎ剛のイメージからの父の性格がなんとなくイメージできるようになっています。
それはの父親としての顔。しかし、彼の弁護士としての顔は優秀であったことは語られるものの、その詳細は劇中ではほとんど語られません。

そんな父の弁護士としての顔を想像させるのが、この『スミス都へ行く』です。

『スミス都へ行く』

『スミス都へ行く』は1939年に公開されたフランク・キャプラ監督の政治ファンタジー映画です。

主人公のジェファーソン・スミスはボーイスカウトの隊長でしたが、急死した上院議員の後任として本来は縁遠い政治の世界に担ぎ出されました。
素直で子供たちからの人望はあるものの、スミスは州の実力者の傀儡としては格好の人物でもあったのです。

しかし、ワシントンで登院したスミスはそこで政治の世界の汚職や不正に突き当たります。

スミスは単身、ワシントンの不正と戦っていくことになるのです。

主演は「アメリカの良心」とも呼ばれたジェームズ・ステュアート。

第12回アカデミー賞で、作品賞を含む合計11部門にノミネートされています。

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宝生輝夫

エミの父親である宝生輝夫。劇中ではエミに対して優しく子煩悩な父として描かれていますが、実際の法廷ではどうだったのでしょうか。

エミのライバルとして描かれる中井貴一演じる小佐野徹に、法廷で奮闘するエミは「法廷での姿がお父さんに見えた」と言われています。

エミもスミス同様、まったくの不利な状態から真実を解き明かし、勝利を手にします。

スミスはアメリカの理念を胸に、自身の正義を貫く人物です。

法廷では倒れるまで23時間にも及ぶ牛タン戦術を行い、その姿を見た対立するペイン議員は自責の念に駆られ、自ら不正を白状します。

エミの父親である宝生輝夫も優しくありつつも芯の強い人格者であったのでしょう。

小日向文世演じるあの世の公安、は『スミス都へ行く』がエミの父のお気に入りだと聞いて即座に「お父さんも立派な方だったのでしょう」とエミに返しています。

父がエミに歌っていた「アルプス一万尺」。それは『スミス都へ行く』のテーマ曲でもあります。日本では「アルプス一万尺」と呼ばれる曲ですが、本来は「ヤンキードゥードゥル」という曲であり、アメリカの独立戦争時の愛国歌なのです。

『スミス都へ行く』からの影響

他にも小林隆演じる裁判長の髪型や人柄にも『スミス都へ行く』の影響が見受けられます。

『スミス都へ行く』の裁判長も新人議員で不器用なスミスの孤軍奮闘を温かく見守る人物です。

三谷幸喜自身はコメンタリーで「髪型は『スミス都へ行く』の裁判長を参考にした」と述べていますが、実際は性格にも大きな影響を与えていると思っていいでしょう。

さらにコメンタリーでは「恥ずかしいほどハッピーエンド」と『スミス都へ行く』について述べており、またキャプラ作品については「王道」ともコメントしていて、そういった意味では三谷作品と共通するものもあると思います。

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