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【ネタバレレビュー】「グリーンブック」アカデミー作品賞も納得のオススメ映画

「グリーンブック」はピーター・ファレリー監督の伝記映画。

イタリア系の用心棒トニー・“リップ”・バレロンガと黒人の天才ピアニストドン・シャーリーの友情を描いた作品で、91回アカデミー賞では作品賞、助演男優賞、脚本賞を受賞しています。

主演はヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリが努めています。

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「グリーンブック」のスタッフ・キャスト

監督
ピーター・ファレリー

脚本
ニック・バレロンガ
ブライアン・ヘインズ・クリー
ピーター・ファレリー

製作
ジム・バーク
ニック・バレロンガ
ブライアン・ヘインズ・クリー
ピーター・ファレリー
クワミ・L・パーカー
チャールズ・B・ウェスラー

製作総指揮
ジェフ・スコール
ジョナサン・キング
オクタヴィア・スペンサー
クワミ・L・パーカー
ジョン・スロス
スティーヴン・ファーネス

出演者
ヴィゴ・モーテンセン
マハーシャラ・アリ
リンダ・カーデリーニ

「グリーンブック」のあらすじ

イタリア系の用心棒、トニー。彼は粗雑で荒っぽい性格のため、今までに職を転々としていた。現在用心棒として勤めているクラブも改装になり閉店、仕事のなくなったトニーは妻子を養っていくためにホットドッグ大食いをやったり、質屋を頼るなど金策に走る。

そんな時に、トニーの耳にドクター・シャーリーの運転手という仕事の話が舞い込む。

いざ面接の日、カーネギーホールの上に住んでいるというドクター・シャーリーの部屋に通される。豪華絢爛なシャーリーの部屋に落ち着かないトニーの前にやってきたのは黒人の男。医者の運転手という想像とは違い、ドクター・シャーリーの職業は音楽家。その上仕事内容は2か月間の運転手兼マネージャーともいえる過酷な内容だった。

その内容に週給100ドルではなく、125ドルの給与をトニーは要求する。

しかし、シャーリーは『ご足労だった』というだけで、この仕事は破談になったかと思われた。

ある日、トニーの妻宛に電話がかかってくる。それはシャーリーからで、トニーが二ヶ月間家を空けても大丈夫か、という確認の電話だった。

かくしてトニーは正式に採用され、南部アメリカへ旅へでる。



感想・レビュー

もともとマハーシャラ・アリが好きなのとアカデミー賞作品賞にノミネートされていたのを知ってきょうみのあった作品です。アカデミー賞は作品賞に輝きましたが、その結果については賛否両論のようですね。

さて、「グリーンブック」ですが、まずはタイトルにもなったグリーンブックとは何かから。

グリーンブックとは、ジム・クロウ法が施行されていたアメリカで、黒人が泊まれる場所をリストアップした小冊子のこと。

監督のピーター・ファレリーがこの映画に携わるまでグリーンブックの存在は知らなかったと発言している一方で黒人のマハーシャラ・アリは存在は知っていたと述べる辺りがまた人種問題の深刻さを表しているような気がしないでもないですが。。(ちなみにアリはグリーンブックについて必ずしも否定的ではなく、当時の黒人を安全な場所へ誘導するポジティブな役割も持っていたと発言しています。)

監督のピーター・ファレリーはキャメロン・ディアスの『メリーに首ったけ』などのコメディ映画を得意とする監督ですが、本作では少しシリアスな実話をもとにした作品に挑戦。

しかし、終始音楽の流れるテンポのいい軽快な作品に仕上がっているなという印象でした。

シリアスなパートも下手ではないんですが、コメディパートの方がずっと映画のなかでは際立っていましたね。

ちなみにドライブ中にずっとBGMが流れっぱなしなのは少し閉口しましたが。。

『フォレスト・ガンプ』が描かなかったアメリカ

個人的にはこの作品ではかの名作『フォレスト・ガンプ』が描かなかったアメリカの姿が写し出されているなと感じました。

フォレスト・ガンプの舞台となるアラバマ。

奇しくもシャーリーとトニーのコンサートツアーの最終地もアラバマでした。

彼らはそこでまたも『黒人は白人と同じ場所は使えない』という差別を受ける野です。

かのように、まだ黒人差別が色濃く残っていたアラバマでしたが、同時代のアラバマを舞台にした『フォレスト・ガンプ』は黒人差別の問題をほとんどスクリーンに映しませんでした。

黒人はババがフォレストの戦友として出てきますが、あくまでフォレストの友人であり、悲劇を演出するための存在です。

ですが、グリーンブックを観ると、実際のアラバマには無視できないレベルの人種差別が存在していることがわかります。

また『ドリーム』では脚色されてはいますが、NASAでは黒人専用のトイレが800メートル離れた場所にあるという描かれ方をしています。

これはNASAの所在地が南部の州であるテキサス州にあることから盛り込まれた史実と違うフィクションの描写ですが(実際にはNASAでは1950年代にこうした差別は撤廃されています)、一方でシャーリーが招かれた家では、ゲストであるにも関わらず、家のトイレは白人専用として使わせてもらえず、庭にある粗末なトイレを使えと言われる描写があります。

ただ、僕が疑問なのはいちいちこうした差別に戸惑い腹を立てているシャーリーですが、南部のツアーは彼が言い出したことであり、こうした事態も覚悟済みではないのか?ということ。

もちろんほとんどの場面でシャーリーは冷静に自分を保ってはいるのですが。。

もうひとつの「ムーンライト」

『グリーンブック』を観ていて感じたもうひとつはこれは『もうひとつの「ムーンライト」である』ということ。

言わずもがな、『ムーンライト』はマハーシャラ・アリを最初のオスカーに導いた作品です。

ゲイで気弱ないじめられっこの主人公、シャロンを見守るドラッグの売人フアンを演じたアリですが、今作ではアリ自身がゲイの黒人を演じています。

作品にはっきりした明言はありませんが、シャーリーが警官に捕まった場所には『YMCA』の文字が。

日本では故・西城秀樹さんのイメージが強いYMCAですが、「Y.M.C.A.」(Young Men’s Christian Association)もともとの意味は、キリスト教青年会による主に男性の若者のための宿泊施設のこと。そこには相部屋の部屋もあるためゲイの出会いの場にもなりやすいとされています。

ツアー中、シャーリーは一人で酒場へ出掛けたことによって、白人の客に袋叩きにされた事件があったことから、トニーに『これからは一人で外出しないように』と約束させられていましたが、そのことをトニーにとがめられるとシャーリーは「今夜は一人で行きたかった」とつぶやきます。

アリがまるで『ムーンライト』のシャロンのような人物を演じることが興味深いです。

そんなシャーリーにトニーは『俺が働いていたニューヨークのクラブにはいろんなやつがいた』と声をかけます。

黒人でゲイ。しかしそれすら特殊ではなく、普遍性の一つとして描こうとしていることに好感を覚えます。

心温まるラストに感動

『グリーンブック』のラスト、ニューヨークへついた二人。

「家へ寄っていかないか」というトニーの申し出を断り、自身の運転で帰路につくシャーリー。部屋の中で孤独に過ごすシャーリーとは対照的に、クリスマスパーティー真っ最中のトニーの家。親族や友人にかこまれての席でしたが、トニーは浮かない表情。

かなりこのシーンが長く感じられて観ている方としてはかなりヤキモキしましたが、そんな中、トニーの玄関からノックの音が。そこに姿を見せたのは質屋のチャーリーと、その後ろで物静かに立っているシャーリーでした。

トニーはシャーリーを喜んで出迎ます。

シャーリーの登場に一同はしばし驚くも、すぐさまシャーリーの席が設けられ、歓待を受けます。

そこには危惧された黒人差別は現れませんでした。

シャーリーはドロレスに『ご主人は帰したよ』と伝えてハグを交わします。

ドロレスはシャーリーの耳元で『手紙をありがとう』と感謝を伝えるのでした。

二人の再会を引っ張ることで確かなカタルシスをもたらしたラスト。

シャーリーとトニー一家の確かな絆に涙が溢れます。

ラストシーンが尻つぼみになる作品も多いですが、「グリーンブック」は映画的にきちんと考えられている作品だなと感じます。