【感想レビュー】her/世界でひとつの彼女


『her/世界でひとつの彼女』は2014年公開のアメリカ映画。監督は『マルコヴィッチの穴』のスパイク・ジョーンズ。
ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラらが出演しています。
AIをテーマにしたSF恋愛作品です。

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『her/世界でひとつの彼女』の予告編

『her/世界でひとつの彼女』のスタッフ・キャスト

監督
スパイク・ジョーンズ

脚本
スパイク・ジョーンズ

製作
ミーガン・エリソン
ヴィンセント・ランディ

出演者
ホアキン・フェニックス
エイミー・アダムス
ルーニー・マーラ
オリヴィア・ワイルド
スカーレット・ヨハンソン

『her/世界でひとつの彼女』のあらすじ

そう遠くない未来のロサンゼルス。ある日セオドアが最新のAI(人工知能)型OSを起動させると、画面の奥から明るい女性の声が聞こえる。彼女の名前はサマンサ。AIだけどユーモラスで、純真で、セクシーで、誰より人間らしい。セオドアとサマンサはすぐに仲良くなり、夜寝る前に会話をしたり、デートをしたり、旅行をしたり……一緒に過ごす時間はお互いにとっていままでにないくらい新鮮で刺激的。ありえないはずの恋だったが、親友エイミーの後押しもあり、セオドアは恋人としてサマンサと真剣に向き合うことを決意。しかし感情的で繊細な彼女は彼を次第に翻弄するようになり、そして彼女のある計画により恋は予想外の展開へ――!“一人(セオドア)とひとつ(サマンサ)”の恋のゆくえは果たして――?

出典:https://www.asmik-ace.co.jp/lineup/1245
her/世界でひとつの彼女 | アスミック・エース

感想・レビュー

今やAI(人工知能)はグッと身近なものになりました。

例えばLINEアカウントの女子高生AI、りんな。

また、シリコンバレーのスタートアップ企業の多くがAIを利用したビジネスモデルであるそうです。

さて、今回はそんなAIをテーマにした作品、「her/世界でひとつの彼女」。

監督は『マルコヴィッチの穴』で鮮烈なデビューを果たしたスパイク・ジョーンズ。今回も斬新な設定とストーリーの作品に仕上がっています。

今までAIというと『ターミネーター』や『マトリックス』のように自我を持ち、人間に敵対するものという捉え方が主でしたが、今回はコミュニケーションツールとして、日々の癒しのひとつとして登場します。

主人公のセオドアは妻とも離婚し、手紙の代筆を職業とする中年の男。

孤独な生活のなかで、パソコンのOSのサマンサとの会話を通じ孤独を癒し、やがてサマンサを愛していくようになります。

この映画の主題のひとつをありきたりな言葉にすると『機械と人間の間に愛情は成立するのか』ということがあります。

もっと言えば『人間を人間たらしめているものはなにか』。

ターミネーター4では『心の強さが決めるのだ』という、ちょっと台詞としては微妙で弱いものでしたが、現実的な落としどころとして「言葉が通じるかどうか」「共感能力を持っているか」は大きいと思います。

例えば同じ人間であっても、かつて白人たちが黒人を奴隷として扱えたのは言葉も通じず同じ人間とは見られていなかったからに他なりません。

そうなると今作のAI、「サマンサ」はコミュニケーションはおろか、嫉妬や疑いなど、揺れ動く想いまで持ち合わせているのは、まさに人間そのもの。

ある時、サマンサは自分たち二人の関係を理解しているという女性を部屋に招き入れ、実際に関係を持とうとしますがセオドアはその女性を拒み、サマンサとも口論になります。

自分の思い通りに支配したい欲求や身勝手さ。サマンサの「見えない部分」にいつしか自分の理想をはめ込んでいたことに気づかされます。

機械と呼んでしまえばたかが機械。まぁこれをアニメに置き換えれば今の日本にも通じるものがあるかもですが。

果たしてそこで生まれるものは本当の愛なのか、それとも一人の男が機械のプログラムに振り回されているだけなのか。

サマンサは確かに人間味のあるOSですが、その「弱さ」や「小悪魔」的な言動はセオドアにとってはより彼女を愛しく感じられるスパイスのようなもの。

生身の人間だけが持つ、理不尽さや耐えがたい会話の食い違いなど、「本当の人間同士のつながり」の中にはいまだ踏み込めないセオドアの姿もまた透けて見えるようです。

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