『ルーム』は2016年に公開されたドラマ映画。
生まれてからずっと部屋の中の暮らししか知らなかった子供が初めて外の世界へ踏み出すー。
本作の子役、ジェイコブ・トレンブレイの圧倒的演技を堪能してほしい、おすすめの作品です。
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「ルーム」の予告編
「ルーム」のスタッフ・キャスト
監督
レニー・エイブラハムソン
脚本
エマ・ドナヒュー
原作
エマ・ドナヒュー
『部屋』
製作総指揮
アンドリュー・ロウ
エマ・ドナヒュー
ジェシー・シャピーラ
ジェフ・アークス
デヴィッド・グロス
ローズ・ガーネット
テッサ・ロス
出演者
ブリー・ラーソン
ジェイコブ・トレンブレイ
ジョアン・アレン
ショーン・ブリジャース
ウィリアム・H・メイシー
「ルーム」のあらすじ
生まれてから部屋=ルームでの生活しか知らない子供、ジャック。
彼は母とほぼ二人だけの生活がずっと続いている。
物資や電気は中年の男が部屋まで届けているのだが、母はその男とジャックの接触を激しく拒んでいる。
実はその部屋は監禁部屋。七年前に母親は男に誘拐され、ジャックはその誘拐犯の男にレイプされてできた子どもだった。
ジャックが5歳になったある日、母はジャックに死んだふりをさせて、監禁されている部屋から脱出させようとする。
何度もシミュレーションを繰り返し、迎えたその時、母の予想通り、男は死んだジャックを部屋から運びだし、トラックの荷台に乗せて遺棄しに行く。
感想・レビュー
とても丁寧に作られた作品です。前持って観ていたレビューも総じて高かったので期待して観ましたが、すごく味わい深い映画でした。
生まれてから部屋=ルームでの生活しか知らない子供、ジャック。
母とほぼ二人だけの生活がずっと続いています。
狭く古い部屋の中でなぜ?と思いながら見ていました。物資や電気はどうしているのだろうかと。どうやら中年の男が届けているらしいのですが、母はその男とジャックの接触を激しく拒みます。
その部屋は実は監禁部屋。七年前に母親は男に誘拐され、ジャックはその誘拐犯の男にレイプされてできた子どもだったんですね。
かなりショッキングな出来事を背景に持つ映画ですが、しかしこういったニュースも実際に目にすることもあり、全くあり得ないことでもありません。
この「ルーム」の原作は エマ・ドナヒューの同名小説ですが、その小説は実際にオーストリアで子供たちと一緒に実の父親に24年間地下室に閉じ込められていたエリーザベト・フリッツルの事件に着想を得たそうです。助け出された時エリーザベトの子供の一人、息子のフェリックスの年が5歳だったことも「ルーム」に反映されています。
ジャックが5歳になったある日、母はジャックに死んだふりをさせて、監禁されている部屋から脱出させようとします。
何度もシミュレーションを繰り返し、迎えたその時、母の予想通り、男は死んだジャックを部屋から運びだし、トラックの荷台に乗せて遺棄しに行きます。
ジャックはトラックに乗せられたらくるまれているじゅうたんから抜け出し、一時停止でトラックが止まったときに、荷台から降りてそばの人に助けを求めるという段取りでした。
じゅうたんから抜け出すときに見えた『初めての空』に驚くシーンが印象的です。
ジャックにとっては何もかもが初めての世界。ずっと部屋の中で生きていたジャックには、部屋の外という概念すらなかったのですから、その驚きようはなにかに例えることすら難しいほどだと思います。
ジェイコブ・トレンブレイの圧倒的演技力
今作でそんなジャックを演じた、ジェイコブ・トレンブレイ。
2018年に公開された、ジュリア・ロバーツと親子を演じた『ワンダー 君は太陽』でも主役のオギーを演じていますが、やはり素晴らしい演技を見せてくれます。
ワンダーではトリーチャーコリンズ症候群による容姿によっていじめや嘲笑にさらされ戸惑いながらも、負けずにしっかり立ち向かって行くオギーを演じています。
それに負けず劣らず、今作「ルーム」で見せる演技もすごく上手いんですよね。
役柄からすると、本作のジャック役の方が求められる演技のスキルは高いと思いますが、完璧な演技で映画のリアリティを限りなく高めることに成功しています。
ジャックの並外れた想像力と判断力、強い個性を表現できる俳優を見つけられるかどうかに、映画の成功はかかっていた。とアブラハムソンは振り返る。「5歳という設定なら通常の場合、子役は単に本来の自分でいることを望まれる。しかし、ジャック役には演技ができる子役が必要だった。」トレンブレイとの出会いをこう語る。「彼はひときわ目立っていた。チャーミングでスウィートなだけでなく、俳優として素晴らしい技術を持ち合わせていた。まるでカジノで大金を当てたような気分だったよ。天井からキラキラと光が落ちてきたように見えた。」
出典:http://gaga.ne.jp/room/
映画『ルーム ROOM』 公式サイト TOP
生まれること
映画本編に話を戻しましょう。ジャックは警察に保護され、またその後、母も救出され、誘拐犯は逮捕されます。
母にとってはもとの世界に帰れた幸せな瞬間ですが、ジャックにとっては今までとは全く違う世界に触れることでもありました。
よく人は2回死ぬと言われますよね。
一度目は命が尽きたとき。そして2度目は人々から忘れ去られた時。
同様に生まれることも人は2回経験するのではないか?とこの作品を観ていて感じました。
一度目はこの世に生を受けたまさにその時。
そして2回目は『世界』をきちんと認識したとき。
ジャックのルームでのこれまでの生活はまるでへその緒で母親と繋がっている胎内のようです。
そして初めて外の世界を知って行くジャックは、まるで生まれたばかりの赤ん坊のようでもあります。
『ルーム』の魅力
冒頭に述べたように、『ルーム』はとても丁寧に作られた作品です。
何が丁寧に作られているのかというと、愛情を根底にした人の『感情』なんですよね。
ルームでの二人きりの生活によって、母以外に中々心を許せないジャックの心だったり、母親がジャックへ向ける愛情の深さ。
母にとっては7年ぶりに触れた世界で予想外のストレスに見舞われたことに対する戸惑いはもちろん、冷静になって、戻った家には7年ぶんの生活のあとがあること、自分のいない時間のままで家族の時間が止まっていなかったことに憤りを覚えます。