「お葬式」は1984年に公開された伊丹十三監督の映画監督デビュー作。
主演は山崎努と宮本信子。
シリアスになりがちなお葬式というテーマを笑いあり、涙ありのエンターテインメントで描き出しています。
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「お葬式」のスタッフ・キャスト
監督
伊丹十三
脚本
伊丹十三
製作
岡田裕
玉置泰
製作総指揮
細越省吾
出演者
山崎努
宮本信子
菅井きん
大滝秀治
奥村公延
笠智衆
藤原釜足
津川雅彦
「お葬式」のあらすじ
ある日、俳優の井上侘助と妻で女優の雨宮千鶴子は夫婦共演のCM撮影を行っていたが、そこに突然連絡が入る。千鶴子の父・真吉が亡くなったのだ。親族代表として葬式を出さなくてはならなくなった侘助はマネージャー里見の助けを借りつつも途方に暮れる。
千鶴子の母・きく江や千鶴子の妹・綾子夫婦、そして真吉の兄・正吉とともに遺体を伊豆の別荘に運び、お通夜の準備に取り掛かる。葬儀屋・海老原とともに、お通夜当日の朝を迎える侘助達。付人も応援に駆け付けたが、そこには喪服を着た侘助の愛人・良子もいた。
出典:お葬式 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E8%91%AC%E5%BC%8F
感想・レビュー
伊丹十三監督の作品は取り立てて観ていたわけではないんですが、テーマの面白さに惹かれて観てみました。
役者夫婦が妻の父の急逝によって、お葬式を出さねばならないそのドタバタの顛末をエンターテインメントとして描いた作品です。
1984年の作品ということもあって、映画のテンポとしては今の映画の主流のスピーディーなテンポとは違うので、そういった戸惑いはありつつも、面白い作品でした。
やはり葬儀というと「おくりびと」のように真面目で誠実な落ち着いたテーマの作品を想像してしまいますが、今作ではお葬式に絡めて次々に遭遇する困難や人間模様の機微が笑いを誘います。
僕にとっては「おくりびと」よりも「お葬式」の方がリアリティある作品でした。もちろん「おくりびと」では納棺を通して日本人の死生観を今一度あぶり出すという着眼点とテーマの面白さは評価されて然るものですが、実際のお葬式って実は笑顔の溢れるものであったり、故人に対して軽口なんかも出てきますよね。
実際に映画「お葬式」の中でも描写されるのですが、その地域独特の風習に戸惑ったり、喪主としての振る舞いがわからずにビデオで練習したりと、一面ではお葬式は突然やって来る「イベント」のような側面も持ち合わせています。
例えば遺影をどうするのか、どの写真を選ぶのか、探す手間もあるでしょうし、個人的なことで言えば焼香の作法がわからなかったりということはありましたね。
今作の主役は山崎努。渋い俳優のイメージが強かったんですが、一方で今作ではそのコミカルさも垣間見えます。
優柔不断で頼りない。亡くなった義理の父の追悼よりも、葬儀のあとの挨拶のことに余念がない。
今と変わらずダンディでかっこいいために、なんと葬儀の準備に愛人まで駆けつけてしまうのは笑いどころ。
あろうことか、愛人に迫られ、皆が葬儀の準備をしているときに林の奥で愛人と行為に及んでしまいます。
伊丹十三監督作では『マルサの女』もそうでしたが、きわどいラブシーンが出てきます。
これが伊丹映画が『大人向けのエンターテインメント』を志向していることの現れかなと思いますね。
これでラブシーンがなければ、三谷幸喜監督みたいな老若男女OKのコメディ作品にもなりえたでしょうが、ラブシーンがこの映画に強烈な印象を残し、『大人向けのエンターテインメント』を実現しているのかなと思います。
なんにせよ、この作品のように笑いあり、涙ありのお葬式が一番いいお葬式の風景ではないかなと感じました。
それなりの年齢まで生き、人生をある程度は全うし、その後で亡くなる。
悲しいだけのお葬式はきっと残された方が一番辛いですよね。
「お葬式」の受賞歴
第8回 日本アカデミー賞(1985年)
最優秀作品賞
監督賞…伊丹十三
脚本賞…伊丹十三
主演男優賞…山崎努
助演女優賞…菅井きん