【レビュー】永い言い訳

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西川美和監督の最新作。

西川美和監督の映画は緊張感に溢れ、結構観るのが大変に感じることもあるのですが、決して派手でもなく、しかし繊細で、ハンドメイドの温かみのようなものを感じることができるそんな作品です。

やはりこの鑑賞感が得られるのは西川美和監督作品ならでは。

そして僕の文章力ではとてもその魅力をありのままに伝えることは困難を極めます。。

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「永い言い訳」のスタッフ・キャスト

監督
西川美和

脚本
西川美和

原作
西川美和

音楽
中西俊博
加藤みちあき

出演者
本木雅弘
竹原ピストル
堀内敬子
深津絵里

「永い言い訳」のあらすじ

作家でタレントの衣笠幸夫(津村啓)は美容師の妻を交通事故で突然亡くしてしまう。

妻との仲はすでに冷えきっており、妻が友人と旅行に行った先で事故死したことを知ったときも、幸夫は愛人との情事の後であった。

マスコミや、世間の前では『妻を失い悲しみに暮れる夫』を演じていたが、悲しみを実感できずにいるのが実情だった。

そんな幸夫の前に、妻の友人の夫、陽一が現れる。

何もかも対照的な陽一の登場に幸夫は戸惑いつつも、陽一の家庭に自分の居場所を見い出だしていくのだった。

感想・レビュー

不倫の最中、妻を亡くした男が自分の人生を再び歩む物語。

監督は西川美和。『ゆれる』の時もそうなんですが、心理描写のリアルさ、ありのままを丁寧に描くことに関してはやはり飛び抜けています。

音楽を極力抑えることも、映画の繊細さを引き立てています。

日常の中で人間の矛盾した心理を丁寧にそのまま描く、そのキメ細やかさ、鋭さ、温かさは是非感じてほしいと思います。

内容を簡単におさらいすると、主人公の幸夫は妻との仲は冷えていて、愛人との情事の途中に妻の事故死を知る。

悲しむことのできない幸夫と対照的に、妻を失った事実にうちひしがれ、前に進めなくなる陽一。

幸夫は妻がいないことによって立ち行かなくなった陽一の子供たちの面倒を見ることで、失った家庭の温かさ、誰かの役に立っているという使命感と免罪符を得ることになります。

その一方で『悲しめない自分』と陽一の間には決して埋まらない、悲しみの思いの差があることも消えずにくすぶり続けます。

ちなみに幸夫のペンネームは津村啓。

女性にだらしなくて、どこか自己破滅的な言動をとる彼の姿はその端正な外見とも相まって太宰治のようにも感じました。
特に「津村啓」として自分自身を客観的にナレーションするも、その言葉ほど大人にもなりきれない。

太宰の本名は津村修治。

そこに意図的なものを感じるのは僕だけでしょうか?

本作の原点は東日本大震災で愛する人を失った後悔や背負っていく人々の人生を描きたいという想いなのだそう。

そこから発展して、大切な人を亡くした人を二人、対照的な状況からそれぞれ描いています。

それぞれが置かれた状況と悲しみと再生。

『自分を大事に思ってくれる人を簡単に手放しちゃいけない。見くびったり、貶めちゃいけない。』ラストでそう語る幸夫に滲む後悔の想い。

どんなに続くと思っていても、離れるときはほんの一瞬。

『大切な存在に失って初めて気づく。』

大枠で語ってしまえば、この一言に集約されるでしょう。しかし、その裏に潜むたくさんの人生の問や岐路。そして戸惑いや矛盾まで含んだその深さを描いた作品です。

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