「恋人たちの予感」は1989年に公開されたロマンティック・コメディ映画。
監督は『スパイナル・タップ』で映画監督デビューしたロブ・ライナー。
主演はビリー・クリスタル、メグ・ライアンが務めています。
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「恋人たちの予感」のスタッフ・キャスト
監督
ロブ・ライナー
脚本
ノーラ・エフロン
製作
アンドリュー・シェインマン
ロブ・ライナー
出演者
ビリー・クリスタル
メグ・ライアン
「恋人たちの予感」のあらすじ
1977年。大学生のサリーとハリーは出会う。二人はたまたま行き先が同じであることから、車で交互に運転しながら18時間かけてニューヨークへ向かうことに。
しかし、ハリーは下品で皮肉屋な男だった。サリーのハリーに対する印象は最悪。
ニューヨークについた二人はすぐに別れ、それぞれの人生へ向かって行く。
5年後。
サリーが空港で恋人と熱いキスを交わしている横をハリーか偶然通りかかる。 サリーのキスの相手はハリーの友人だったのだ。
その後、たまたま同じ飛行機に乗り合わせたサリーとハリーは久しぶりに言葉を交わす。結婚を控えているハリーにはかつての嫌な部分が抑えられた性格になっていた。サリーはおどろきつつも、やはり仲は進展せずに、更に5年後を迎える。
5年後、サリーは恋人と破局し、ハリーも離婚を経験し独身になっていた。かつてとは違い、お互いに落ち着いた二人はこれまでのことをリセットし、「恋愛関係のない男女の友情」を育んでいくが—。
感想・レビュー
ノーラ・エフロンの手によって確立された「ラブコメの女王」
「ラブコメの女王」と呼ばれたメグ・ライアン。その始まりは今作からでした。
メグ・ライアンの「ラブコメの女王」のイメージは本作の脚本を努めたノーラ・エフロンの手によって確立されたと言ってもいいでしょう。
今作以後ノーラ・エフロンは「めぐり逢えたら」、「ユー・ガット・メール」とメグ・ライアンをヒロインにしたラブコメの名作を送り出していくのですから。
しかし、「めぐり逢い」と「ユー・ガット・メール」はもしかしたら観る人をヤキモキさせてしまうかもしれません。
なぜならクライマックスまで、主人公の男女がほとんど出会わないから!
やはりラブコメの定型と言えば、まず二人が出会ってからのあれこれをコミカルに切なく見せてほしいもの。
その意味ではやはり「恋人たちの予感」は満足させてくれます。
サリーとハリーの出会い
物語の始まりは1977年。大学生のサリーとハリーは出会います。ハリーはサリーの親友で恋人のアマンダと熱いキスを交わしています。
サリーとハリーはたまたま行き先が同じであることから、車で交互に運転しながら18時間かけてニューヨークへ向かいます。
しかし、サリーはハリーのことをすぐに不快に感じます。
将来のことを聞かれたサリーは「ジャーナリズムの学校へ行く」と答えますが、ハリーは「君には仕事も友達もできずに、アパートで孤独に死んで死後2週間経って発見されるかも」と嫌みを言います。
また、ハリーのブドウを含み、皮を車外へ吐き出すモラルのなさ、下品さといったらありません。
何も言わずともサリーの顔には驚きと軽蔑、嫌悪の表情が広がっていきます。
何て下品で嫌な男。それがサリーと私たち観客が最初に感じるハリーの印象だと思います。
(ロブ・ライナーはコメンタリーで『ブドウを吐き出しても憎めないキャラクター』と発言してますが、僕は違うかな。。)
次の場面はいきなり5年後へ。5年前とは対称的に、サリーが空港で恋人と熱いキスを交わしている横をハリーか偶然通りかかります。 サリーのキスの相手はハリーの友人でした。
その後、たまたま同じ飛行機に乗り合わせたサリーとハリーは久しぶりに言葉を交わします。
結婚を控えているハリーにはかつての嫌な部分が抑えられた性格になっていました。
サリーはおどろきつつも、やはり仲は進展せずに、更に5年後を迎えます。
5年後、サリーは恋人と破局し、ハリーも離婚を経験していました。
かつてとは違い、お互いに落ち着いた二人は「恋愛関係のない男女の友情」を育んでいきます。
ロブ・ライナー、ノーラ・エフロンを投影
今作の監督はロブ・ライナー。カルト的な人気を誇る『スパイナル・タップ』で映画監督デビューしたのちは『スタンド・バイ・ミー』『ミザリー』などジャンルを越えて名作映画を生み続けています。
今作『恋人たちの予感』はロブ・ライナー自身の離婚経験を基に生み出されています。
離婚して独身に戻ったものの、男女の友情は成立するか悩んでいた、そんなロブ・ライナー自身がこの映画の出発点だったそう。
主人公のハリーにはロブ・ライナーが、そしてヒロインのサリーにはノーラ・エフロンのキャラクターが投影されています。
「ドレッシング添えのサラダとアップルパイ・アラモード。
パイは温めて。
クリームはかけないで、パイの横にそえて。イチゴがあったらアイスの代わりにそれを。
いや、アイスはやめて生クリームにして。
缶入りでない本物の生クリームをたっぷり。
無ければ冷たいパイだけ」
特にサリーが複雑で面倒な注文をするのはノーラ・エフロンの実際の注文の仕方をそのまま取り入れたそう。
リアルで等身大の女性像
エフロンの描く女性像はおとぎ話のヒロインのように女性らしさをカリカチュアライズされたものではなく、常にリアルで等身大の女性を描き続けてきました。
その象徴とも言えるのが、カッツ・デリカテッセンのシーン。
今まで付き合ってきたすべての女性を満足させてきたと語るハリーに、サリーは「女はみんなイクふりできるのよ」と答え、偽りのオーガニズムを演じて見せます。
その演技は店中の客の視線が一気に二人のテーブルに集中してしまう程のもの。
この時サリーが食べていたのはバストラミ・サンド。
バストラミ・サンドを食べたサリーがオーガニズムに達するのを見た老婦人が店員に『あれと同じものを』オーダーするオチがつく、本作でも一番の笑いどころのシーン。(ちなみにこの老婦人、ロブ・ライナー監督の母親なのだそう!)
その一方で男性の幻想を粉々にしてしまうという意味では男性にとっては無邪気に笑っていられないシーンかもしれません。
この映画のヒットにより、カッツ・デリカテッセンは日本人向けのガイドブックには載せない所がないほどの名所となっているそうです。
ちなみにこのバストラミ・サンドの金額は14ドルほど。
ニューイヤーズ・イヴでのダンス
さて、互いに友達でいようと誓い合った二人ですが、ニューイヤーズ・イヴでのダンスのときにお互いを男女として意識し始めます。
セリフは何もなく、ただ二人のダンスを写している、それだけなのですが、演出が非常に冴えています。
チークダンスのターンに合わせてそれぞれの表情を交互に見せるのです。
二人の表情に友達のようなリラックスした雰囲気はなく、互いに約束を破ってしまうかもしれない緊張感とドキドキに満ちています。
お互いに恋人を作ろうともしますが、結局上手くいかず、とうとう二人は一夜を共にします。
しかしそのせいで二人の関係はギクシャクすることに。