「マンハッタン」は1980年に公開されたウディ・アレン監督・脚本・主演の映画です。
ウディ・アレン作品の常連であるダイアン・キートンに加え、当時まだ新人女優だったメリル・ストリープも出演。
ウディ・アレンにとって、マンハッタンは幼い頃から憧れの場所であったと言います。
そんなマンハッタンを主人公に映画を撮ってみたいとの思いを実現させたのが、今作「マンハッタン」です。
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「マンハッタン」のスタッフ・キャスト
監督
ウディ・アレン
脚本
ウディ・アレン
マーシャル・ブリックマン
製作
チャールズ・H・ジョフィ
ジャック・ローリンズ
製作総指揮
ロバート・グリーンハット
出演者
ウディ・アレン
ダイアン・キートン
マリエル・ヘミングウェイ
メリル・ストリープ
「マンハッタン」のあらすじ
テレビのライターのアイザックと学校教師のエールは友達同士。アイザックは42歳ながら、17歳のトレーシーと付き合っていた。エールは妻エミリーがいるものの、編集者のメリーに心を奪われていた。アイザックはメリーと一度会うが、その頭でっかちのものの考え方に辟易する。
そんな時、アイザックはテレビ番組の笑いの程度が年々低下していることに嫌気が差して、他のスタッフと喧嘩して仕事を辞めてしまう。
2度の離婚により、養育費を払っているアイザックはすぐに生活が困窮して、アパートを引っ越しすることになる。2番目の妻のジルはアイザックとの結婚生活を暴露本として出版しようとしていた。そのジルとアイザックが離婚した理由はジルが同性の恋人に走ってしまったからだ。
エールとメリーは付き合うが、メリーはエールが妻と別れようとするのを嫌い、エールも妻と別れる気が無いことから、破局を迎える。エールはアイザックにメリーと付き合うように勧める。アイザックも17歳のトレーシーとはいい加減別れなければいけないと思っていたことから、メリーと付き合うことにする。
メリーとアイザックが付き合ってしばらくし、トレーシーがロンドンで演劇の勉強をすることになり、それを機会にアイザックはトレーシーに別れ話をする。アイザックとメリーは一緒に暮らすようになるのだが、エールがメリーに会いたいと電話をかけてきた。実はメリーもエールを忘れられず、やがて二人はまた会うようになる。
感想・レビュー
ニューヨーク州、マンハッタン。
ウディ・アレンにとって、その場所は幼い頃から憧れの場所であったと言います。
そんなマンハッタンを主人公に映画を撮ってみたいというウディ・アレンがそれを実現させたのが今作「マンハッタン」です。
映画の冒頭『彼にとって街は白黒の存在であり、ガーシュインの曲だった』との台詞からでしょうか。
モノクロで語られる、マンハッタンでの物語。『ニューヨークは彼の永遠の都だった』という言葉とともに映画は幕を開けます。
ウディ・アレンが描くマンハッタンの恋愛模様。
それは不倫であったり、親子ほども年の離れたカップルであったり、同性同士の恋愛であったり、さまざまなバリエーションに富んでいます。
そんな中でウディ・アレンが演じるのは2回の離婚を経て、今は17歳の女の子、トレイシーと付き合っているアイザックという男です。
ウディ・アレンはここでも身勝手で皮肉屋、神経質な男を演じています。
同じくニューヨークを舞台に語られる恋愛模様の『アニー・ホール』と似た雰囲気を帯びた作品ではあるものの、それに比べると登場人物も多く、まさにマンハッタンがさまざまな人によって構成された多様性の街だということがわかります。
そして、ウディ・アレンは愛すべきニューヨークの風景をこれ以上なく印象的に写し出します。
ダイアン・キートン演じる、メアリーとのデートの際にはクインズ・バロウ橋が美しく、また堂々と映し出されます。
メアリーに惹かれる一方で、アイザックは年の離れたトレイシーとの交際を終えたいとも思っています。
そして、トレイシーはまだ幼く、彼女のモノの見方は近視的で子供じみたものだとアイザックは考えています。
『マンハッタン』でも厭世的なウディ・アレンが顔を出していますね。
しかし、基本的にウディ・アレンはどこかで人を信じたい気持ちがあるんだろうとも感じます。
メアリーに振られたあと、自分にとって本当に大切な存在はトレイシーだったと気づくアイザック。
アイザックの身勝手さがよくわかるシーンなのですが、アイザックがロンドンへの留学を後押ししておきながら、一転して出国直前のトレイシーを引き留めようとするのです。
行かないでくれ、そう呼び止める男の顔はそれまでの神経質で皮肉屋の顔ではなく、ただトレイシーに必死になっている、繊細で脆い男の顔。
その本当の顔とのバランスを保つためにアイザックは皮肉屋を演じてもいるのでしょう。
「少しは人を信じなきゃ」
そう言ったトレイシーの表情はアイザックよりもはるかに大人びていました。
今までずっと子供扱いしてきたトレイシーが実は自分よりもずっと大人だった。
それを悟ったのか、アイザックは何も言えないまま、映画は幕を閉じます。