【ネタバレ解説レビュー】ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

もう、キングギドラとゴジラが戦うこの場面だけでお腹いっぱい、ああもうありがとうございますという感じですね。

これまでにたくさんの敵怪獣との戦いを演じてきたゴジラですが、やはりキングギドラとの戦いが一番絵になります。

91年に公開された『ゴジラVSキングギドラ』のポスターを見てもらえたらより分かりやすいかとも思います。

ちなみに『ゴジラVSキングギドラ』ではキングギドラが善玉として登場します。2001年の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』もそうですね。

南極でのキングギドラとゴジラの戦いはゴジラの敗北に終わります。

ラドンの目覚め

その後、エマはオルカでメキシコの火山島イスラ・デ・マーラに眠る『炎の悪魔』と呼ばれる怪獣、ラドンを目覚めさせます。

まだ住民の避難が完全ではないイスラ・デ・マーラで、逃げ惑う人々にラドンのソニックブームが襲いかかります。

メキシコのこの群衆が逃げ回るシーンはカメラのアングルも『ワールド・ウォーZ』そっくり。

ラドンのオリジナルは1961年に製作された『空の大怪獣 ラドン』という作品です。その時は熊本の阿蘇山から登場しましたが、はメキシコの活火山から姿を表す、スケールの大きなものとなりました。

また、キングギドラ、モスラ、ラドンなど東宝のオリジナル怪獣がいずれもデザインをリファインされていますが、最も素晴らしい出来映えはラドンではないかと思います。『炎の悪魔』という通称が示す通りの炎の残る翼と、圧倒的な破壊を見せるソニックブーム。

マークらの策略によってラドンとギドラは相まみえますが、ここでもギドらの勝利に終わります。その後大西洋プエルトリコ沖でギドラとゴジラは再戦を迎えることになります。

2大怪獣の激突に対して、軍は新兵器「オキシジェン・デストロイヤー」の使用を強行。

ゴジラは倒れますが、キングギドラはオキシジェン・デストロイヤーでも倒れず、空へと飛び去ってしまいます。




オキシジェン・デストロイヤー

説明するまでもないですが、オキシジェン・デストロイヤーは1954年の『ゴジラ』でゴジラを倒した兵器の名前です。オリジナルの設定ではオキシジェン・デストロイヤーは酸素破壊剤とされ、液体中の酸素を一瞬で破壊し、全ての物を窒息死させ、液化する兵器とされています。

今作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では単に3㎞圏内の生物を死滅させるとだけ説明されていましたね。

後から詳しくのべますが、今作にはそれ以外にも過去のゴジラ映画に対するオマージュがふんだんに盛り込まれています。

その後キングギドラに呼応するように様々な怪獣が世界中で暴れます。今回東宝が許諾した怪獣はキングギドラ、モスラ、ラドンでしたが、暴れまわる怪獣のなかにはクモンガらしき姿も。。もちろんクモンガは東宝が許諾を出していないので、恐らくは蜘蛛の巨大モンスターを作ったら結果的にクモンガに似ていたというだけだろうと思いますが。

日米の怪獣の解釈の違い

これに限らず、欧米のモンスター映画って、普通の動物が大きくなっただけのものが多いような気がしますね。

恐らくこれは日米の怪獣観の違いだと思うんですが、怪獣とは何か?の解釈が決定的に違う気がします。最近の映画だと 『ランペイジ』やローランド・エメリッヒ監督のトライスター版の『GODZILLA』もそうですが、あくまで彼らのいう怪獣は自然界の動物が巨大化しただけのもの。

聖書の価値観を前提とすると、動物は人間が食べるために神が作ってくれたものだそうです。

つまり人間とその他の生物にはしっかりと一線が引かれており、その線を越えるものに対しては攻撃し、支配するという考えになるのではないでしょうか?

幸いなことにレジェンダリー製作の『ゴジラ』シリーズはしっかりゴジラは神としての側面も持ち合わせていることが描かれていますが、対称的にローランド・エメリッヒ監督のトライスター版の『GODZILLA』はその側面が極めて薄い、モンスターとしてのゴジラに留まっていました。



映画に含まれる社会的な意義

もっというならば、映画に含まれる社会的な意義もそうですね。

もともと日本のゴジラの出発点は1954年3月1日に起きた第五福竜丸の被爆事故でした。

1954年3月1日にアメリカによってビキニ環礁で実施された水爆実験「キャッスル作戦」のブラボー実験によって、その近くで漁をしていた第五福竜丸の乗組員が被爆する事故が起きたのです。

戦後10年を絶たずに起きた「第三の被爆」事件に当時の日本人の反核感情が噴出したそうです。その思いを作品に込めたのが1954年の「ゴジラ」でした。

そしてアメリカの巻き添えを食った形となった理不尽さも「水爆実験でよみがえったゴジラがアメリカとは無関係の日本を襲う」というシナリオにも込められています。

今作でもモナーク第54前進基地の場所はキャッスル・ブラボーと名付けられており、1954年の「ゴジラ」に込められた想いを受けついでいることがわかります。

さて、映画ではキングギドラに呼応するように様々な怪獣が世界中で暴れまわり、『怪獣たちが地球の生態系の秩序のバランスを回復する』という予想は外れ、人類の存続すら危ぶまれる状態に。

モナークの考古人類学者であるアイリーン博士は古代の伝承からキングギドラが宇宙より飛来してきた侵略怪獣であると指摘。本来の地球の統治者であるゴジラの復活が人類の存続のためには必要だと気づきます。

今作には前作に引き続き、芹沢博士が肌身離さず持っている父の形見の時計も登場します。

「あれほど恨んでいたゴジラと協力することになるとは・・・」そうつぶやくマークに対して芹沢博士は時計を見ながら「傷を癒すには敵と和睦するしかない」と応えるのです。

この芹沢博士の言葉は怪獣と人間だけでなく、戦後70年経って今こうして日本人とアメリカ人が協力していることをかみしめての言葉でもあると感じます。

ちなみに芹沢博士の名前が初代『ゴジラ』の登場人物の芹沢博士と、おなじく初代『ゴジラ』の監督の本多猪四郎からとられたことは有名ですが、父の名前は芹沢英二と設定されています。これは『ゴジラ』の特撮にもかかわった、特殊撮影技術の第一人者で「特撮の神様」とまで言われた円谷英二からの拝借だそうです。

「さらば、友よ」

キングギドラを倒すためにゴジラを目覚めさせる、そのためには核エネルギーが必要なのですが、それは誰かが手動で行わなければならない。

『自分がやる』と志願する芹沢。

ゴジラの眠る場所へと近づき、ゴジラに触れて『さらば、友よ』と声をかけます。

65年のゴジラの歴史のなかで初めて人間がゴジラに触れた瞬間でした。



日本のゴジラへのオマージュ

芹沢の命を懸けたゴジラは復活。

キングギドラとの死闘を繰り広げますが、エネルギーが強すぎ、熱爆発を起こしてしまう事態に。

熱暴走を起こすゴジラは恐らく『ゴジラVSデストロイア』からのオマージュでしょう。対するキングギドラも頭からだけではなく、羽からも全方位に光線を出せるようになっていました。ここは『シン・ゴジラ』に影響をされたのかなと思います。

一方でラドンとモスラの戦いも発生。

モスラはラドンの喉元を貫くも、ギドラの前に破れます。しかし、モスラはその力をゴジラに託しました。

この他の怪獣が自分の命と引き換えにゴジラに力を与えるというのは『ゴジラVSメカゴジラ』におけるファイヤー・ラドンと同じですね。恐らくはそのオマージュかと思います。

ちなみにキングギドラの呼称の『モンスター・ゼロ』も元は『怪獣大戦争』でX星人に「怪物0」と呼ばれていたことから名付けられています。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』エンドロール

エンドロールで坂野義光と中島春雄の思い出に捧げる(in memoy yoshimitu banno haruo nakajima)とありました。

坂野義光は『ゴジラ対ヘドラ』の監督であり、2014年に公開された『GODZILLA ゴジラ』のエグゼクティブ・プロデューサーも務めています。

そして中島春雄は1954年に公開された初代ゴジラから18年間にわたり、「ゴジラ」シリーズでゴジラを演じたミスター・ゴジラと呼ばれています。

エンドロール


エンドロール後に次を予感させる短いシーンがあるのもモンスターバースの特徴。今回は環境テロリストのアラン・ジョナがイスラ・デ・マーラに赴き、地元の漁師からキングギドラの残骸を購入しようとするところが描かれました。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』感想

全体として、『GODZILLA ゴジラ』よりもオリジナルへのリスペクトが色濃い作品だと感じましたね。

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