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【ネタバレ レビュー】コンカッション

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「コンカッション」のスタッフ・キャスト

監督
ピーター・ランデズマン

脚本
ピーター・ランデズマン

原作
ジーン・マリー・ラスカス
『コンカッション』

製作
リドリー・スコット
ジャンニーナ・スコット
デヴィッド・ウォルソフ
ラリー・シューマン
エリザベス・カンティロン

出演者
ウィル・スミス
アレック・ボールドウィン
ググ・バサ=ロー
アーリス・ハワード
ポール・ライザー
ルーク・ウィルソン
アドウェール・アキノエ=アグバエ
デヴィッド・モース
アルバート・ブルックス

「コンカッション」のあらすじ

ナイジェリアから夢を抱いてアメリカにやってきたベネット・オマルは、優秀で誠実な医師。2002年、ピッツバーグで検死官を務めていた彼は、元NFLの名選手マイク・ウェブスターの変死解剖を担当する。“史上最高のセンター”と言われながら晩年は奇行を繰り返し、車の中でホームレス同然の生活を送っていた地元の英雄──。その寂しい最期に不審を抱いたオマルは、周囲の反対を押し切ってマイクの脳を精査。長期間にわたって激しいタックルを受け続けることにより引き起こされる「CTE(慢性外傷性脳症)」という新たな疾患を発見し、マイク以外にも多くのプレーヤーたちが精神を病み、謎の死を遂げていることに気付く。警鐘を鳴らすべく、オマルは医学誌に論文を発表。しかしNFLは、アメリカの国民的スポーツを根底から揺るがしかねないこの事実を、全面的に否定。逆に「試合中の衝突で脳震盪を起こした選手はいない」という見解を発表し、危険な論文を撤回させるべく、絶大な権力を駆使してオマルを締め上げていく──。

出典:http://www.kinenote.com/concussion/intro.html
映画『コンカッション』公式サイト|10/29(土)より全国順次公開

感想・レビュー

実話に基づく映画

タイトルの「コンカッション(concussion)」これは「脳震盪」を意味しています。

アメリカの一大人気スポーツアメリカン・フットボールの選手に正体不明の症状が現れます。アルツハイマーにも似たその症状にナイジェリア人医師が立ち向かっていく、実話に基づく映画です。

このような映画の多くは病気の正体の解明がクライマックスであり、そこに至るまでの主人公の困難や苦悩がドラマチックに描かれます。

しかし、今作は病気の正体を解明することから物語は動き始めます。

原因不明の病気の解明、それは全米が熱狂し、大きな産業にもなっているアメリカン・フットボールの危険性に警報を鳴らすという、パンドラの箱を開けるにも等しい行為なのでした。

ウィル・スミス演じる主人公のベネット・オマルは優秀な検死官。その非合理な仕事のやり方を同僚のダニーに疎まれることもありながらも、上司からの信頼も厚い、誠実な人柄でもありました。

フットボールのスター選手を襲った病魔

ある日オマルの元に一人の遺体が運び込まれます。

彼の名前はマイク・ウェブスター。フットボールのスター選手でした。

その華々しい名声と知名度の一方で晩年のウェブスターは頭痛とアルツハイマーにも似た症状に悩まされ続けていました。

それでもなおウェブスターの名声は市民の間に生き続けており オマルの同僚のダニーはウェブスターの解剖に反対します。

しかし、オマルはアルツハイマーとするにはウェブスターの死亡時の年齢(50歳)では若すぎることを指摘。自費を投入してでもこの病気の紹介を解明しようとします。

その原因はフットボールのプレーに起因する度重なる脳震盪が原因で脳内にキラータンパク質が発生し、少しずつ精神を蝕んでいくためでした。オマルはその病気に「CTE(慢性外傷性脳症)」と名をつけ、論文で発表することにします。

しかし、論文を発表した途端にNFLからオマルに論文撤回の圧力がかかるようになります。

相手は数千万人が熱狂する人気スポーツ。莫大な金と雇用を生む一大ビジネスを「危険」と告発することは、どんな事なのか、フットボールに疎いオマルは気づいていませんでした。

巨大ビジネス告発のリスク

家への嫌がらせの電話、道行く人からの抗議。

そんな中でかつてNFLの顧問医師でウェブスターの友人でもあったジュリアン・ベイルズはオマルの見解に理解を示し、ともにNFLに対して告発の準備を進めていくも、妨害の声もまた日増しに大きくなっていきます。

「神様に選ばれた人だけが住める国」

オマルはアメリカという国にとってこのように述べています。

ナイジェリアで生まれ育ったオマルにとって、アメリカは正に憧れの場所でもあったのでしょう。彼の経歴が冒頭に紹介されますが、アメリカで成功するためにどれだけの努力をしてきたかがわかります。

しかしこの映画で映し出されるのはひたすら移民であるオマルを差別し、潰そうとする不寛容と差別意識。

ついには妻はストレスから流産、勤め先の上司は微罪でも逮捕されるなど、NFLからの圧力はオマルの周囲の人々にも強く及ぶようになります。

『ウェブスターに出会わなければよかった』オマルはそんな弱音をも覗かせます。

決してヒーローではなく、普通の医者に過ぎない側面をウィル・スミスが丁寧に演じています。

自分のやろうとしていることが家族をこれほど苦しめる結果になるとは思わなかったオマル。

『コンカッション』が描く真実の重さ

一度はNFLとの戦いをやめ、違う土地で検死官として仕事を続けたオマルですが、 3年後に転機が訪れます。

それは自殺した元NFLスター選手、デイブ・デュアソンの遺書でした。彼もまた記憶障害に苦しみ、拳銃で自分の胸を撃ち抜いていたのです。まだ50歳と言う若さでした。

彼が遺した遺書には「俺の脳を調べてくれ」との文字が。

これを受けて、ようやくNFLもオマルを委員会へ招致します。

2015年に公開されたこの作品はまだ係争中というエピローグが挿入され、エンドロールを迎えますが、この終わり方もまた珍しいもの。

裁判を題材にした映画だと「エリン・ブロコビッチ」や「告発の行方」などがありますが、そのどちらも裁判の結末までしっかりと描かれます。

特に『コンカッション』同様、実話を基にした『エリン・ブロコビッチ』では大企業のPG&Eから、当時史上最高額の和解金を勝ち取る場面は最高のカタルシスを与えてくれます。

しかし、『コンカッション』は解決までの道のりが始まったところで幕を閉じます。

それこそがこの真実の重さを伝えているように思います。

現実での映画的なエンディングを待たずに、今すぐに伝えなければならないことがある。

『コンカッション』からオマルの戦いに加えてそんなメッセージを感じます。

フットボールの裁判のみならず、人種差別もまた解決されていない

ちなみにこの作品が対象になった年のアカデミー賞をウィル・スミスは断っています。それはノミネートされた人たちが2年連続で白人のみというアカデミー賞の在り方に抗議の意味を込めたものでした。

確かにウィル・スミスの今作の演技はゴールデン・グローブ賞の男優賞(ドラマ部門)にノミネートされるなど高く評価されていますが、アカデミー賞にはノミネートすらされていませんでした。

このことは皮肉なことにフットボールの裁判のみならず、人種差別もまた解決されていないことを強く印象づける出来事となりました。

「コンカッション」のその後

さて、では「コンカッション」ではまだ描かれていなかった、その後の話を紹介しましょう。

2016年4月に元NFL選手のOB達がに対して起こした訴訟が和解となりました。

その内容とは「NFL側が推定10億ドル(約1090億円)を支払う(引用:AFPBB News」というもの。ついにNFLがフットボールの危険性を認めたということです。

 米国の人気週刊誌「スポーツ・イラストレイテッド(Sports Illustrated)」によれば、選手は年齢や経験年数によって、平均19万ドル(約2070万円)を受け取ることになるという。
また、ルー・ゲーリッグ病(Lou Gehrig’s Disease)とも呼ばれる筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された選手は、500万ドル(約5億4500万円)の補償が受けられる。
一方、CTEと診断された選手の家族は、最大で400万ドル(約4億3600万円)を受け取り、パーキンソン病やアルツハイマー病を患った選手は、最大で350万ドル(約3億8000万円)が補償されることになっている。

出典:https://www.afpbb.com/articles/-/3084418
アメフト脳振とう訴訟、NFLが10億ドル補償で和解へ 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

これを受けてOBだけでなく、現役選手に対しても、フットボールのルール変更などが検討されています。