『アラジン』は2019年に公開されたファンタジー映画。
ディズニーが1992年に製作したアニメーション映画の『アラジン』の実写化作品になります。
監督は「スナッチ」で注目を集めたガイ・リッチー。主演はウィル・スミス、メナ・マスード、ナオミ・スコットが務めています。
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「アラジン」のスタッフ・キャスト
監督
ガイ・リッチー
脚本
ジョン・オーガスト
原作
『アラジンと魔法のランプ』
製作
ダン・リン
ジョナサン・アイリヒ
製作総指揮
マーク・プラット
ケヴィン・デラノイ
出演者
ウィル・スミス
メナ・マスード
ナオミ・スコット
マーワン・ケンザリ
ナヴィド・ネガーバン
ナシム・ペドラド
ビリー・マグヌッセン
「アラジン」のあらすじ
ダイヤモンドの心を持ちながら、本当の自分の居場所を探す貧しい青年アラジンが巡り合ったのは、王宮の外の世界での自由を求める王女ジャスミンと、 “3つの願い”を叶えることができる“ランプの魔人”ジーニー。
果たして3人はこの運命の出会いによって、それぞれの“本当の願い”に気づき、それを叶えることはできるのだろうか──?
出典:https://www.disney.co.jp/movie/aladdin/about.html
あらすじ・実写キャスト・吹替|アラジン|ディズニー公式
感想・レビュー
いわゆるファンタジー系の映画が個人的には苦手で、実は今回の実写版『アラジン』も普段なら敬遠するタイプの映画なのですが、ウィル・スミス演じるジーニーが素晴らしいとの噂を耳にして、劇場に足を運びました。
原作の雰囲気そのままの実写版『アラジン』
今作の『アラジン』を観て感じたのは、まずは原作に対してのリスペクト。
今作は千夜一夜物語の「アラジンと魔法のランプ」の実写化ではなく、あくまでディズニーが1992年に製作したアニメーション映画の『アラジン』の実写化。
ディズニーアニメの『アラジン』は幼い頃に何度も観ていたので、その雰囲気をそのまま実写へ移行できていたことに驚かされました。日本だとどうしても批判されがちな実写化ですが、今作は成功と言っていいのではないでしょうか。
特に映画の始まり方、アラビアンナイトから幕を開ける夜のアグラバーのシーン、魔法のランプが隠されている洞窟の描写など、個人的には原作そのもので鳥肌モノでしたね。
ただ、ジャファーだけは原作の凶悪さ、狡猾さがどうしても感じられず。。
今作でジァファーを演じた、マーワン・ケンザリ、1983生まれとのことですが、ジァファーには少し若すぎるなといった印象でした。
しかし、アラジンを演じたメナ・マスード、ジャスミンを演じたナオミ・スコットは素晴らしかったですね。特にナオミ・スコットの美しさはまさに目を見張るほど。
また原作の魅力は貫きながらも、今の時代に合わせた設定の変更も実写版『アラジン』を語る上で外せないポイント。
ジャスミンに込められた現代的なメッセージ
ジャスミンは原作に比べ、聡明でリーダーシップを秘めた女性として描かれます。
原作でもアグラバーの町へお忍びで出掛けるなどの好奇心は変わらずに持っているのですが、実写版では更に国王である父のあとを継いで、国を婿となる王子ではなく、自分自身の手で良くしたいという、より自立した女性として描かれています。
1989年に製作されたディズニーアニメーション映画の『リトル・マーメイド』では原作と違う「王子様との結婚」をエンディングにしたため、公開当時、一部から批判の声が上がったそうです。
それから30年経って、今作のジャスミンはもはや王子様など待たずに自分の手で運命を切り開こうとする力強さに溢れています。
それは未だに男女平等が果たされていないことが明るみになり、声を上げ始めた現実の女性たちと同じです。
実写版『アラジン』の主人公こそアラジンかもしれませんが、物語の中心を貫く芯はアラジンではなくジャスミンだと思います。彼女こそ、本当の主人公ではないでしょうか。
そもそも、本当にアラジンって心の美しい若者なのか、個人的には疑問 。
『仕方ない』の一言で物は盗む、ジャスミンに嘘をつく。。
生きていくためには仕方ないのかもしれませんが、戦後の日本には食料事情の悪い中、法で定められた配給のみを遵守して栄養失調で亡くなった人もいることを考えると、どちらが正しいのか、ち止まらざるを得ません。
まぁ原作のアラジンも同様なのでそれこそ仕方ないのかもしれませんが。
少し斜めからの見方かもしれませんが、アラジンの行動目的は『みんなのため』というよりは『ジャスミンを振り向かせるため』。
本当の主役はジャスミン
比べてジャスミンはあくまでアグラバーの国民のために、自分がとれる最良の決断をしようとしています。
その覚悟は実写版オリジナルの楽曲『speechless』に最もよく表れています。
「好きなだけ打ちのめせばいい」それでも声を上げ、叫ぶと高らかに宣言したジャスミン。
国を守るために、我が身を犠牲にしてまでジァファーとの結婚を承諾しようとするジャスミンの強さ。
やはり、実写版『アラジン』の物語における本当の主役はジャスミンなのだと思います。
アラジンの弱さ
では、一方のアラジンには何の役割があるのか。
度々アラジンが口にする『仕方ない』という言葉。
それは自分自身に自信が持てないアラジンの弱さを表しています。
『仕方ない』の言葉に隠れて、本当の自分と向き合おうとせず、虚飾の『アリ王子』としての人生に逃げようとするアラジン。
ジャスミンに対して感じる圧倒的な劣等感。
しかし、ジャスミンの気を引くためにアリ王子として多くの贅沢品を贈ろうとしてもジャスミンはなびかない。
アラジンは自分自身の良さ、人にとって本当の魅力は何かを理解できていなかったのです。
それに気づかせてくれたのはジーニーでした。
「ウソで何もかも手に入れても、もっと惨めになるだけだ」
ジーニーは一万年もの間、あらゆる人と接してきたことで、ウソで幸せになった人はいないとアラジンに伝えます。
ウィル・スミス演じるジーニーが素晴らしい!
原作以上にコミカルで明るく、かつ人間的に描かれているジーニー。
主役ではないものの、真っ先にクレジットに現れる演者はウィル・スミス。
その意外すぎるキャスティングが話題になった今作ですが、ふたを開けてみればウィル・スミスにとってジーニーはこれ以上ないハマり役として絶賛されました。
近年では映画俳優としてよりも、子供達を売り出す親としての顔がクローズアップされることの多かったウィル・スミスですが、再び俳優としても脚光を浴びて個人的にも嬉しい限り。
冒頭でも述べたように、もしウィル・スミスがジーニーを演じていなければ、僕が実写版『アラジン 』を観に行くこともなかったので、そういう意味でもまだまだ名前で客を呼べる俳優なのだと改めて思います。
さて、アクションからコメディ、社会派の作品に至るまで役の振り幅が広いウィル・スミスですが、今作はウィル・スミス史上最もコメディに振り切った作品。
『最後の恋のはじめ方』との共通点
ウィル・スミスが恋にうまくいかない男のアドバイザーになるというのは2005年の映画『最後の恋のはじめ方』にも共通していますね。
『最後のはじめ方』ではウィル・スミスは恋愛コンサルタントとして、イケてない会計士の男のアルバートと、その想い人であるスーパーセレブの美女、アレグラとの恋が成就するようにプロデュースしますが、不器用で何もかもドジなアルバートに振り回され、手を焼くウィル・スミスの姿が笑いを誘います。
今作も身分違いの恋をするアラジンに手を貸す役どころは同じながらも、ウィル・スミスはジーニーという役柄によって、よりコミカルに描かれています。
ジーニーの魔法によって、町のコソ泥から一国の王子、アリ王子へと変貌したアラジン。
晴れて王女のジャスミンの前に面会へ向かいますが、所詮は偽りの王子。中身はアラジンのままなので、スマートな挨拶もできずに、お土産も持参したジャムについてのことばかり。
「ジャムから離れろ」
いちいちジーニーが助言せねばならないほどの状態で結局まともな会話もできずに、話す内容は自らの墓穴を掘るばかり。とうとうジャスミンに呆れられ、彼女は自分の部屋に帰ってしまいます。
「この一万年で一番恥ずかしかった」
アラジンを見かねたジーニーの一言です。
ちなみに実写版『アラジン』のエンディングシーンでは結婚式のダンスシーンで終わり、エンドロールもジャスミンや列席者のユーモラスなダンスを映し出すのですが、これが『最後の恋のはじめ方』そのままと言ってもいいくらいの構成なんですね。もちろん原作の『アラジン』にはないパートなので、個人的には『最後の恋のはじめ方』にある程度の影響は受けていたのかなと感じます。
さすがに魔法でではないですが、実写版『アラジン』同様にウィル・スミスがアルバートにダンスを教えるシーンもありますしね。
原作でカットされた部分が復活!
原作の『アラジン』でカットされた場面として、オープニングの語りを担当する行商人の正体がジーニーだった、というものがあります。
実写版アラジンではこの部分を復活。
アラジンの手によって自由になったジーニーは、ジャスミンの侍女と結婚し、人間として家族とともに船で世界をめぐる旅に出ています。
そんな中、子供達に聞かせるのがアラジンの物語なのですね。
実写版『アラジン』
色々とツッコミどころはありつつも、凄く良くできた映画だと思います。
まぁファンタジー映画にツッコミを入れるのも野暮な気もしますしね。
笑って、泣けて、確かに満足できるおすすめの映画です。
ディズニーのアニメ『アラジン』を観た人もそうでない人も楽しめる作品。
観終わった後に原作と見比べてみるのもまた面白いかもしれません。