隠れた名作映画21. 『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』
あらすじ
タッカーとデイルは仲のいい中年の親友同士。二人はこつこつ貯金して山の奥にボロボロの別荘を手に入れる。
彼らは別荘を修理しようとチェーンソーや木材粉砕機などを用意するが、強面の風貌のせいで近くを訪れた大学生グループに殺人鬼と勘違いされてしまう。
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ホラーコメディ映画の最高峰ではないかと思います。少なくとも個人的にはそう評価したい、名作ですね。
田舎の あんちゃん二人が何故か殺人犯に勘違いされてしまい、偶然の事故によって次々に人が死んでゆく、ブラック・コメディです。
不謹慎ですが、一人一人死んでいくごとにそのバカバカしさに思わず爆笑モノです。
『悪魔のいけにえ』や『13日の金曜日』などの名作ホラー映画へのオマージュも随所に見られ、ホラー映画好きな人にはより楽しめる作品だと思います。
隠れた名作映画22. 『私が、生きる肌』
あらすじ
人口皮膚の研究に没頭している世界的形成外科医のロベル。
彼は家政婦のマリリンとともにひそかにベラとよばれる美女を監禁していた。
ベラはロベルの研究の実験台にされており、その容姿はロベルがかつて亡くした妻、ガルにそっくりだった。
そんな中、マリリアの息子のセカが匿ってくれとやってくる。セカは強盗をした容疑で指名手配されていたのだった。
セカはベラをガルと勘違いし、関係を持つが、ちょうど帰宅したロベルによってセカは射殺される。
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隠れた名作映画23. 『イントゥ・ザ・ワイルド』
あらすじ
裕福な家に生まれ、学校を優秀な成績で卒業した、クリス・マッカンドレス。
幼い頃から両親の不和を見せつけられていたクリスは物質社会に愛想をつかし、自分を証明するものも、財産もすべてを捨てて『アレクサンダー・スーパートランプ』と名乗り始め、アラスカの荒野を目指します。
さまざなひとたちとの交流の果てにたどり着いたアラスカでクリスが見つけた『本当の幸せ』とはー。
ここがおすすめ
アラスカの荒野を目指したクリス・マッカンドレスの実話をもとにした映画です。
個人的にはこの作品だけでもいいから観てみてほしい。
そして何かを感じてほしい。絶対に学生の頃に観ておいてほしい。強くそう願います。
若さの可能性と、理想と純粋さと愚かさ。そのすべてがこの作品にはつまっています。
経済主義だとか、資本主義、それらと距離を置き、理想に生きようとした彼の人生をその目で今、感じてほしいと思います。
僕も大学を出て少し経った頃、初めてこの作品を見ました。
なぜ学生の頃に出会えなかったのかとすごく悔しい気持ちになりましたね。
隠れた名作映画24. 『殿、利息でござる!』
あらすじ
仙台藩の吉岡宿は貧しい宿場町。彼らの生活をさらに厳しくしているのは宿場町間の物資の輸送を行う伝馬役とよばれる制度だった。通常は伝馬役の費用は藩が持つことになるが、吉岡宿はその費用を吉岡宿の町人が負担することになっており、町人たちの重い負担となっていた。そのため、町人は破産し夜逃げするものが跡を絶たなかった。
村一番の知恵者、篤平治はそんな状況をなんとかしようとしていた。
篤平治は町に戻ってきたのち、吉岡宿一の大店、浅野屋の浅野屋甚内に利息をつけて返す。
そのことから甚内の兄、十三郎と飲んでいるときに篤平治は街を救う可能性のある途方もないアイデアを考え付く。
それは、財政が困窮している仙台藩に1000両を貸し付け、その利息を町人に毎年分配するというアイデアだった。
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なんかポスター見る限りではコメディ色の強そうな作品ですが、決してそんなことはなく、無私の美しさが胸を打つ良作です。
今作が興味深いのはこれが実話だということ。
内容は正に無私の勝利とも言うべき内容。「清貧」という言葉がありますが、自分の財産を犠牲にしながらも、地域のためにという一心でお金を集める十三郎たち。
その中でも妻夫木聡演じる浅野はその代表格。世間には守銭奴、ケチと言われながらも、その実は苦しむ町民のために、家を潰してまで出資を惜しまない、どこまでも誠実で、義理堅い男でした。その姿勢と覚悟は強く胸に迫るものがあります。是非観てみてほしい作品です。
隠れた名作映画25. 『スイス・アーミー・マン』
あらすじ
一人の男が遭難した無人島で孤独に耐えかねて首を吊ろうとしていた。彼の名前はハンク・トンプソン。
そんな彼の前に現れた一人の倒れた男。
ハンクは首吊りを中断し、男に人工呼吸を試みるも、男はすでに死んでいた。
再度首吊りをしようとした男の目に写ったのは、死体の男がジェットスキーのように海へ進んで行く姿。
ハンクは男にまたがり、無人島からの脱出を目指す。
ここがおすすめ
これまでもハリー・ポッターのイメージから脱却するかのように様々な役を演じてきたラドクリフ。今回はなんと死体役です。
タイトルの『スイス・アーミー・マン』とは、スイス・アーミー・ナイフから来ています。日本語でいうと十徳ナイフですね。
その名の通り、ただの死体のはずのラドクリフが様々な活躍をします。
この奇妙な死体を通して生きることとは何か、生きているということはどういうことかを考えさせられる作品です。
隠れた名作映画26.『ジョンQ-最後の決断-』
あらすじ
主人公のジョンはいわゆるブルーカラー(貧しい労働者層)であるがゆえに、十分な医療補助を受けられない、しかしそんな折りに子供に高額な医療費がかかる手術が必要になるー。
北欧の高福祉高負担の社会モデルとは対をなす、アメリカの社会モデル。
その裏で富の有無によって生存権まで脅かされてしまう現実の歪み。
どうしようもなく追い詰められた主人公は息子を助けるために、病院で人質をとり、治療を要求します。
「俺は息子を埋葬しない、息子が俺を埋葬するんだ」
そう言いながら必死に治療を訴えるジョン。
その姿に人質になっている人たちまで動かされ、ジョンに協力し始めます。手段は別にしても、ジョンの主張そのものは普遍的で正しいことだとみんながわかっているからでしょう。
親なら子供に対する深い愛情と責任に共感・感動すること間違いなし。
ここがおすすめ
アメリカの医療保険制度のあり方に一石を投じる問題作でもあります。
アメリカで高額化してゆく医療費と、それにより、十分な医療が受けられない貧困層の現実を描いています。
皆保険制度のないアメリカでは福利厚生として医療保険を提供することは保険への加入者の大幅な増加を後押ししましたが、その結果として商業的保険会社が医療の分野にまで進出してゆくことにもつながりました。
ジョンはいわゆるブルーカラー(貧しい労働者層)であるがゆえに、十分な医療補助を受けられない、しかしそんな折りに子供に高額な医療費がかかる手術が必要になるー。
どうしようもなく追い詰められたジョンは病院で人質をとりますが、決して悪人ではないんですよね。
その姿に人質になっている人たちまで動かされ、ジョンに協力し始めます。それは人質が犯人に共感してしまう「ストックホルム症候群」と言えなくはないのでしょうが、何よりも手段は別にしても、ジョンの主張そのものは普遍的で正しいことだとみんながわかっているからでしょう。
社会派の作品ではあるものの、決して地味ではなく、ただ息子を想う父の愛情がこれほどかと伝わります。そして極限状態からの奇跡のようなエンディング。
近年流行りのファンタジー的な映画とは対をなす作品ですが、確かな満足感を与えてくれる映画です。
隠れた名作映画27.『マチェーテ』
あらすじ
メキシコの麻薬王トレースに妻子を殺害されたメキシコの連邦捜査官マチェーテ。現在はテキサスで不法移民として日雇い労働の身分に身を落としていた。
そんな中、不法移民嫌いのマクラフリン上院議員を暗殺してほしいという依頼が彼のもとに届く。報酬は15万ドル。断れば強制的に国外退去。マチェーテに選択の余地はなかった。
いざ、暗殺実行の日。上院議員に狙いを定めるマチェーテ。いざ引き金を引こうとした瞬間、別の男がマチェーテを狙っているのが目に入る。
間に合わず、逆に狙撃されるマチェーテ。実は一連の依頼は暗殺未遂を逆手に取り、移民政策を推し勧めようとする上院議員の罠でもあった。
病院に運び込まれるマチェーテ。彼は静かに復讐の炎を燃やしていく。
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ダニー・トレホの初主演映画。軽~い気分で見れちゃうエンターテインメントムービーです。
もともとは『プラネット・テラー in グラインドハウス』の偽予告編でしたが、3年越しで祝・映画化!となった作品。
ロドリゲス節炸裂!今回も相変わらずのバカバカしい小道具(バイクにガトリングガン付けたりとか・・・。)が満載!
グロテスクかつブラックでシュールな描写も健在。
人間のハラワタがびぇーって出ちゃうんですが、それで飛び出た腸をロープ代わりにする、というと、ある意味ブラックなギャグにも思えます。まぁ実際そうなんでしょうけど。
上にも書いたように、もともとはグラインドハウスのニセ予告編の1つでしかなかったんですが、予告編のカットを寸分違わず再現してみせるあたり、ロバート・ロドリゲスの強いこだわりを感じます。まるで子供のように、撮りたい映画を撮りたいように撮っている、そんなようにも見えてしまう作品でもあります。
ちょっとエッチなシーンもあったりして、男の子の夢満載ですね。
隠れた名作映画28.『42 〜世界を変えた男〜』
あらすじ
戦争が終わり、野球選手も戦争から復員した1945年。しかし黒人は慣習により、メジャーリーグには挑戦できず、野球で身を立てるにはニグロリーグで全国巡業しかなかった。
しかし一人の男は違っていたー。
「ニューヨークには黒人の野球ファンが大勢いる」
ブルックリン・ドジャースのゼネラルマネージャー、ブランチ・リッキーはニグロリーグからのスカウトを考えていた。
ジャッキー・ロビンソンは野球巡業で生活する青年だった。
ジャッキーには隔離政策に従わない頑固さはあったものの、その打率と経験からスカウトの目に留まることになる。
三軍のロイヤルズから、ゆくゆくニューヨークのドジャースへ。
そのチャンスにジャッキーは乗り気だがリッキーからは一つの条件が。それは短気を抑えることだった。
「やり返す勇気のない男になれというのか?」というジャッキーに対しては
「やり返さない勇気を持て」と伝えるのだった。
かくしてジャッキーはニューヨーク・ブルックリンのロイヤルズへ入団。
恋人のレイとも結婚し新たな生活が始まる。
迎えたキャンプ初日、記者の意地悪な質問も冷静に受け答えし、ジャッキーも好プレーをする。
しかしコーチはジャッキーを「ニガー」と呼び、嫌悪感を隠しきれない。
ここがおすすめ
野球そのものよりも、野球で生活する中でどのような差別や妨害があったのかに焦点が当てられています。
50~60年代を舞台にした映画を観ているとしばしば人種隔離政策であったり、有色人種への差別が描かれています。作中、もっとも我々観客からの殺意を受けたであろう、フィリーズの監督のジャッキーに対する人種差別発言の数々。短気を抑えること、という言葉を守りながらも、怒りや悔しさに耐えきれず、バックヤードで感情を爆発させるジャッキー。
その中でどうあきらめずにジャッキーは生きぬいてきたのか。
そのジャッキー・ロビンソンの偉大な功績から現在アメリカの全球団で背番号42は永久欠番になっています。
差別の中で戦い抜いてきた実話をもとにした作品だからこそ、この映画は強く胸を打ちます。
隠れた名作映画29.『マイ・レフトフット』
あらすじ
クリスティ・ブラウンは生まれながらに脳性麻痺で、左足しか満足に動かすことができなかった。
しかし、母親や他の兄弟はそんなクリスティーを見捨てず、施設ではなく、家庭の中で育てられていた。
ある日、母はクリスティを2階のベッドに運んだあとに
クリスティは左足だけで階段を降りてドアを叩いて助けを呼ぶが、近所の住人からはクリスティのせいで母親が倒れたと誤解される。
このように近隣の住人からも冷たくあしらわれていたクリスティだが、家族は違っていた。ある日、他の兄弟たちが算数の問題を考えていると、そばにいたクリスティはチョークを左足で持ち、文字のようなものを書き始める。それまで知能指数も低いと思われていたクリスティだが、その様子を見て、母親はクリスティには年相応の知能があることを確信するのだった。
クリスティは後日またチョークでなにかを書き始める。
汗を振り絞り書き上げた文字は「MOTHER」(母)その様子に兄弟は驚き、母は涙を流し、そしてそれまでクリスティに冷たい態度で接していた父親は「やはり俺の息子だ!」と態度を改め、クリスティを心から家族の一員として迎えるのだった。
ここがおすすめ
実在の画家、クリスティ・ブラウンの自伝小説を映画化した作品です。
主演は史上唯一のアカデミー賞主演男優賞三回受賞のダニエル・デイ=ルイス。
その1回目は本作の演技によるものでした。
彼の代名詞ともいえる強烈な役作りは本作でも健在。
ダニエル・デイ=ルイスはクリスティ・ブラウンになり切るために、撮影中ずっと常に左足だけを使っていました。
車椅子に座ったまま生活し立つこともなかったため、撮影の邪魔になりそうなときはスタッフが車椅子ごとダニエルを移動していたそうです。
是非、ダニエル・デイ=ルイスの圧倒的な演技力を楽しんでください。
隠れた名作映画30.『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』
おすすめ ポイント(ネタバレあり)
末期ガンと脳腫瘍をそれぞれ抱えた男二人組が、それまで一度も見たこともない海に行くために犯罪を犯しながらも旅をするストーリー。
警察やマフィアから追われながらの旅ながらも、なんとか海へたどり着く。
警察やマフィアがちょっとお間抜けでコメディ的な楽しさもありますし、何よりも「天国で流行っている海の話題についていくために、海へ行く」という目的が純粋に美しすぎます。
一般市民が犯罪を犯しながらも、逃避行するという意味では、北野武監督の『HANA-BI』にも通じますね。
北野武は劇中で人を殺すことも厭わないですが、『ノッキング・オブ・ヘブンズドア』は基本的には善人なんですよね。
そういう良い意味でも観やすい作品だなと思います。ロードムービー映画の中でもおすすめの映画です。