ソラリスから生まれた!?映画『ペンギン・ハイウェイ』裏話まとめ

ペンギン・ハイウェイ 完全設定資料集

『ペンギン・ハイウェイ』は2018年に公開された石田祐康監督の映画。

スタジオ・コロリド初の長編アニメーション作品です。

声の出演は北香那さん、蒼井優さん、西島秀俊さん、竹中直人さんなどが担当されています。

カナダ・モントリオールの第22回ファンタジア国際映画祭にて、最優秀アニメーション賞にあたる今敏賞(長編部門)を受賞しています。

今まで『ペンギン・ハイウェイ』に関してレビューや、名言まとめに加え、お姉さんや海に対する考察などを書いてきましたが、今回は裏話を書いてみたいと思います。

一度、アニメ映画化を断られていた

国際映画祭にて、最優秀アニメーション賞を受賞するなど評価の高い『ペンギン・ハイウェイ』ですが、企画当初には一度映画化を断られたいきさつがあります。

詳しくは原作者の森見登美彦氏と映画の石田祐康監督の対談の中の森見登美彦氏の発言から引用します。

今だから言えますが、最初にいただいた企画書は若干のズレが感じられて、一度はアニメ化をお断りしたんです。けれどその後にもらった資料付きの企画書で、ガラッと印象が変わったんですよ。出典:「ペンギン・ハイウェイ」原作者・森見登美彦×石田祐康監督対談 一度断ったアニメ化オファーをOKした理由とは | アニメ!アニメ!

断られた理由はアオヤマ君についての解釈の違いだったそう。

さすがに物語の中心となるキャラクターの『ズレ』は作品全体に響きます。

しかし、この経緯があったからこそ、いい作品に仕上がったとも言えるそうです。

この作品はアオヤマ君のキャラクターがズレると、世界のすべてがズレてしまいます。最初の企画書はその点がとても危うかった。
それが、資料付きの企画書ではアオヤマ君のキャラクターがかなり良くなりました。石田監督の本気を感じました。
逆に最初の企画書からの変化を見たから思い直せたというのもあるので、一度お断りしたのは結果的に良かったのかもしれません。

出典:「ペンギン・ハイウェイ」原作者・森見登美彦×石田祐康監督対談 一度断ったアニメ化オファーをOKした理由とは | アニメ!アニメ!

映画を観た後に原作本も読みましたが、確かにどちらも見終わったあと、読み終わったあとの感覚が全く同じ。

原作の魅力をそのまま映画にも反映できているのだなと思います。

『惑星ソラリス』に影響を受けている

『惑星ソラリス』は、アンドレイ・タルコフスキー監督の1972年の旧ソ連の映画です。

この映画にも海が登場しますが、その海は知性をもち、そこに近づいた人間に幻影を見せているのです。

原作はスタニスワフ・レムの小説『ソラリス』。

『ペンギン・ハイウェイ』の原作者の森見登美彦氏は『ペンギン・ハイウェイ』は、スタニスワフ・レムの『ソラリス』がなければ生まれなかったというほど、作品に強い影響を与えたことがわかります。

また、映画版の石田祐康監督もおなじく『ソラリス』に強い影響を受け、それは映画にも反映されているそうです。

『ソラリス』は原作本も映画も、新しく作られた作品も観ました。とても魅かれる設定です。『ソラリス』で甦った亡き妻が私って何だろう?と思い悩んでいる姿は、お姉さんに重なって、『ソラリス』を読んだことで“映画ではもう少しだけ踏み込んで描きたいな”と思いました。原作にはなかったアオヤマ君のいないお姉さん視点のシーンを出したりもしたんです。最後にソラリスの海が創った謎の街のイメージ、それも地味に影響を受けています。
出典:8/17(金)公開『ペンギン・ハイウェイ』石田祐康監督インタビュー | 映画ログプラス

お姉さんは『新世紀エヴァンゲリオン』から生まれた

石田祐康監督のインタビューによると、『ペンギン・ハイウェイ』のお姉さんのイメージには『新世紀エヴァンゲリオン』の葛城ミサトの印象も反映されているとのことです。

中学生の中頃から、それまでメカばかり描いていたのに加えて、そういう綺麗な女性や可愛い女の子を描くようになりまして。

その延長線上でお姉さんも描いてたんです。今回は、お姉さんにちょっと夢中になってしまって……(笑)。

さらに言うと、中学の時に『新世紀エヴァンゲリオン』(※5)に遅れてハマったんですが、最初に描いたキャラクターというのが、綾波レイでも惣流・アスカ・ラングレー(※6)でもなく葛城ミサトさん(※7)なんですよ(笑)。

完全にヒロインとは言えなくても、ああいう年上の綺麗なお姉さんに惹かれる感覚もあったんです。

その延長線上で、自分の中で抱くそういう感覚をフル回転させて、お姉さんのカットがチェックで来るたびに丹精に吟味していましたね。
出典:『ペンギン・ハイウェイ』石田祐康監督インタビュー

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