カルト映画『時計じかけのオレンジ』の裏話

『時計じかけのオレンジ』は1972年公開のスタンリー・キューブリック監督作品です。
管理された全体主義と、その中で暴力とセックスに明け暮れる若者の無軌道さのジレンマを描いた作品。その反社会的かつ個性的な作品でカルト映画の名作としても名高いです。
監督の意図とは別に「暴力を誘発する作品」とされ、いくつかの国で上映禁止になりました。

しかしニューヨーク映画批評家協会賞、ヴェネツィア国際映画祭などでの受賞もあり、名作と呼ばれる映画であることも確かです。

ここではシネマトゥディで公開されている、アレックス役のマルコム・マクダウェルのインタビューを交えて不朽の名作映画『時計じかけのオレンジ』の裏話をご紹介したいと思います。

アレックスの唄『雨に唄えば』

今作で強い印象を残すのがアレックスが唄う『雨に唄えば』。こののどかな歌は全編を通じて暴力の支配する映画の中でミスマッチを生み出し、ことさらに強いインパクトを観る者に与えています。

「あれは、5日間どうやればいいかと考えあぐねていたシーンなんだ。カメラはその間回っていなかった。朝、セットに行くと、ハロッズ(デパート)のバンが止まっていた。スタンリーが家具を変えたんだ。家具を変えたら、何かマジックが起きるかと思ったようでね。もちろんそんなことは起きなかったよ。そして5日目に『踊れるかい?』って僕に聞いたんだ。それで、歌詞を半分くらい覚えていた唯一の曲を歌いながら、踊ったんだよ。パーフェクトだったね」

出典:不朽の衝撃作『時計じかけのオレンジ』主演のマルコム・マクダウェルが名シーンの裏側を語る – シネマトゥデイ

ちなみにマルコム・マクダウェルは映画公開から数年後、映画『雨に唄えば』の監督と主演をつとめたジーン・ケリーに会う機会がありましたが、ジーン・ケリーはさっさと背をむけて立ち去ってしまったそう。
自分の映画の歌が問題作とも呼ばれる『時計じかけのオレンジ』で使われたことに不快感を示していたようです。

アレックスの衣装

全身を白に包んだ独特なアレックスの衣装。完璧主義者で知られるキューブリック監督の細かい指示の産物かと思いきやそうではないようで・・・。

「そこには何もいいものがなくて、僕はクリケット用の衣装が車にあるから、取ってくるよって言ったんだ。それを見せたらスタンリーが気に入ったんだよ。『その白いのはいいね。プロテクターを外側につけてみて。中世みたいだ』とね。僕も素晴らしいアイディアだと思ったよ」

出典:不朽の衝撃作『時計じかけのオレンジ』主演のマルコム・マクダウェルが名シーンの裏側を語る – シネマトゥデイ

ルドヴィコ療法のシーンでは失明しかけた

映画の中でアレックスの暴力癖を治療するために実施された治療が「ルドヴィコ療法」と呼ばれる治療。その内容とはリッドロック(まぶたを強制的に開かせる器具)でまぶたを固定し、特殊な覚醒剤を注射した上で衝撃的な映像を無理やり見せ続けることで暴力や性行為に生理的拒絶反応を引き起こすようにするものでした。その内容について、初めて知らされた時のことをマルコム・マクダウェルは次のように語っています。

「スタンリーがリッドロックをつけられた患者の写真を見せてくれた。それで僕が『ナイスだね』と言うと、『君にこれをやってほしいんだ』と言う。『そんなこと絶対無理だよ。どうやってやるんだい? そんなことをやる役者はどこにもいないよ』と僕は言った」

出典:不朽の衝撃作『時計じかけのオレンジ』主演のマルコム・マクダウェルが名シーンの裏側を語る – シネマトゥデイ

実際にマルコム・マクダウェルの角膜は何度も傷付けられ、危うく失明しかけたそうです。
それでも『時計じかけのオレンジ』は名作になるとマルコム・マクダウェルは撮影当初から確信していたそうで、「最終的に映画をよくするためなら気にならなかった」とも発言しています。

各国で上映禁止!中でも・・・

その内容から、本作は以下の国々で上映禁止となりました。

上映禁止国
アイルランド
シンガポール
南アフリカ共和国
韓国
イギリス

とくにスタンリー・キューブリック監督の出身国であるイギリスでの上映禁止は他ならぬ監督自身の要請だったそう。当時『時計じかけのオレンジ』に次ぐ次回作『バリー・リンドン』を撮影していたスタンリー・キューブリックのもとにキューブリックとその家族に対して殺害の脅迫状が送りつけられましたことがそのきっかけでした。脅迫状には映画の中でアレックスと仲間たちがしたのと同じようにロンドン郊外にある監督の家へ押し入ると記されていたそうです。

1999年に亡くなるまでスタンリー・キューブリック監督は、イギリスとアイルランドでの『時計じかけのオレンジ』の上映を禁止することに決めたのでした。

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