【考察】『プロメテウス』の解釈ーなぜエンジニアは人を作り殺したのか

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今更ながら、『プロメテウス』についての考察。というのも、考察とはいいながらネット上で目にする記事は考察という言葉には及ばない、感想にすぎないものも多く、個人的には満足いかなかったからですね。

もちろん、難解な作品でもありますし、哲学的な内容も孕むので、一度観ただけではなかなか掴みづらいかもしれません。

僕もどこまで掴んでいるかわかりませんが。。

とりあえずこの映画は謎の多い作品ですが、いくつかに分けて、僕なりに考察してみようと思います。

何回かに分けたいんですが、とりあえず今回は

『エンジニアとは何か』

『なぜエンジニアは人を作り、人を殺したのか』

を考察していきたいと思います。

エンジニアの役割

この作品のテーマ『人類はどこから来たのか』

冒頭ですでに明かされていますが、太古の地球にエンジニアが降り立ち、黒い液体を飲むことで、生物的なDNAが地球に発生していく、、、ということが直接的な原因でした。

映画の中では明言されていませんが、この時エンジニアが降り立った地球は20億年前の地球だそう。

その頃はまだ地球は氷河期でバクテリアなどの単細胞生物しか存在していなかった頃です。

黒い液体を接種することで、エンジニアの体は破壊されます。

破壊されゆくエンジニアの体が滝に落ち、水中で新たな生命のDNAが生まれていく。

ここでいうならばエンジニアが自らの命を犠牲にしてまで遂行した使命は『地球に生命を生み出すこと(もしくはすでに存在していた単細胞生物を劇的に進化させること)』は確実に言えそうです。

『プロメテウス』はダーウィンの進化論ではなく、あくまで神話をベースに物語を展開させています。すなわち、人間は猿から進化したのではなく、『神』が創造したという考え方ですね。

神とは誰か?

聖書によると、神は自らの姿に似せて人類を作った、とあります。

ここでいう神とはエンジニアと捉えてもらっても大丈夫です。

リドリー・スコット自身も『プロメテウス』について古代宇宙飛行士説に影響を受けたと述べています。

古代宇宙飛行士説とは、人間は猿から進化したのではなくて、古代に宇宙人が地球に飛来して、人間を作り、また宇宙人が人間に文明を授けたとする考え方。

つまりエンジニアと呼ばれる宇宙人が地球の生命を作り出し、我々の概念でいうところの神という存在になったというわけです。

そして数十億年の進化を経て、ようやく神自らの姿形に等しい、ヒトという種類が生まれたというわけです。

ただ、その目的ははっきりとはしていません。

プロメテウスの意味

さて、一度は地球に命を与えたエンジニアですが、なぜそこから誕生したはずの人間がエンジニアの惑星に来たら一転して人間を殺害しようとしたのでしょうか?ここを今回は考えてみたいと思います。

もともとタイトルの『プロメテウス』とは、ギリシア神話に登場する神の一人。ゼウスから火を盗み人間に授けたと言われているんですね。

本作で火に該当するものはいくつかあると思います。

エンジニアの星に辿り着くほどの科学技術

劇中では、地球上の離れたところにある遺跡の中にそれぞれ共通のモチーフがある、そしてそれらはひとつの星を指し示していることから、乗組員はプロメテウス号にのって、その星に人類の起源を探しに行きます。

しかし、その星はエンジニアの星ではなく、生物兵器の実験場だったことが、映画の後半に明かされます。

常識で考えれば、好意的に相手を招くのであれば、生物兵器の実験場だなんてそんな場所に相手を呼びませんよね。

エリザベス・ショウ博士は、『この星に来たのは間違いだった』といい、そこを『死の星』と呼んでいます。

個人的には星のありかを示したのは、人類を試すためだったのではないかと考えています。

星新一のショートショートでこんな話がありました。

宇宙人がおいていった何層にもなる包装に覆われた物体。

最初は叩けばすぐに壊れた。その次に現れた層は火で焼かねば壊れない。その次に現れた層は特殊なガスでないと壊れない。。。そんな風に深い層になればなるほど、高度な科学技術を要求されるも、人類側の興味は尽きない。

そして核兵器を用いて最後の層を破壊すると、中から毒ガスが出てきて人類は死滅する。

実はその物体は人類の科学技術を試すためのもので、核兵器まで開発したことが判明すると、人類を脅威と見なして殺害するようにできていたのだった・・・というお話。

同じように恒星間飛行が可能になった人類は興味からそれと知らずに『死の星』へ向かってしまったことで人類もまた脅威とみなされ『実験台』として殺されてしまう、『プロメテウス』をそう読み解くこともできるはずです。

アンドロイドのデヴィッド

もうひとつ火に相当するものはアンドロイドのデヴィッド。

神の定義を『万物を創造したもの』とすると、人類もまた機械ではありますが、新しい生物に近いものを作ってしまったと考えられます。

リドリー・スコットはインタビューの中で『プロメテウス』には『ブレードランナー』と同じ哲学的な内容があると発言していました。

『ブレードランナー』でのその問いかけは人とアンドロイドの違いは何か、ということでした。『ブレードランナー』においてはそれは『感情』がキーワード。

『ブレードランナー』では劇中アンドロイドのことをレプリカントと呼称するので、以下レプリカントとしますね。

『ブレードランナー』では、レプリカントにも感情があり、恐れやまた哀れみの心を持つことが示されています。

雨のなかで静かに死を迎えるレプリカントのロイを見ながら、彼らを捕らえる役割の主人公、デッカードは戸惑います。

『レプリカントが我々と同様に美しいものを愛し、恐れや哀しみを理解するのなら、人間とレプリカントの違いは何だ』と。

『ブレードランナー』が問いかけた人間とアンドロイドの違いについて、『プロメテウス』では別の角度から模索しているように思います。

例えばそれは倫理と能力ではないでしょうか。

地球の歴史の大部分は単細胞生物の歴史でした。多細胞生物の歴史はその半分にも満たず、まして人間のように理性と倫理を持ち、技術を生み出せるような生物の登場は天文学的な確率だったことでしょう。

しかし、人間が産み出した擬似生命体のアンドロイドは創造主である人間を遥かに凌駕する能力を有しています。

いわゆる、シンギュラリティ、トランセンデンスですね。

人間以上の能力を得た存在

続編の『エイリアン・コヴェナント』ではデヴィッドはエンジニアの惑星でエンジニアを絶滅させましたが、もしかしたら人間を凌駕する存在が現れたとき、それは自分達の脅威を越えて敵になることをエンジニアは想定していたのではないかとも思います。だからこそ、惑星にいたエンジニアは目覚めた瞬間、デヴィッドと彼を作り上げた『父』どもあるウェイランドを殺害したのでしょう。

結果論ではありますが、デヴィッドがその後エンジニアに成り代わり、彼らを越える『神』になろうとしたことは『エイリアン・コヴェナント』で明かされています。

今回はここまで。
「エイリアンよりAIについての方が興味がある」と発言していたリドリー・スコット。では『プロメテウス』の中でエイリアンは何を意味し、どういう存在で、なぜ生まれたのか、次回はここを考察していきたいと思います。

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