【感想 レビュー】「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」フィンチャーが描く人生讃歌

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 [Blu-ray]

「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」は2009年に公開されたデヴィッド・フィンチャー監督、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット共演の映画です。

それまでスリラーやサスペンスが主だったデヴィッド・フィンチャーが一転してヒューマニズムにあふれる作品に挑みました。

人生は素晴らしい。

まさにこのキャッチコピー通りの映画です。
デヴィッド・フィンチャーとブラッド・ピットの3度目のタッグとなる作品。

第81回アカデミー賞では作品賞を含む13部門にノミネートされ、美術賞、視覚効果賞、メイクアップ賞を受賞するなど高い評価を得ています。

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「ベンジャミン・バトン」のスタッフ・キャスト

監督
デヴィッド・フィンチャー

脚本
エリック・ロス

原案
エリック・ロス
ロビン・スウィコード

原作

F・スコット・フィッツジェラルド

製作
キャスリーン・ケネディ
フランク・マーシャル
セアン・チャフィン

出演者
ブラッド・ピット
ケイト・ブランシェット

「ベンジャミン・バトン」のあらすじ

1918年のニューオーリンズ。第一次世界大戦が終わったときに一人の子供が生まれる。

彼の名前はベンジャミン。

老人の姿で生まれたベンジャミンはその容姿のため実の親からは出産直後に捨てられ、黒人夫婦のクイニーとディジーに拾われ育てられることになる。

余命いくばくもないと思われていたベンジャミンだったが、彼は年を経るごとに若返っていく。

感想・レビュー

デヴィッド・フィンチャーが人生讃歌を謳うなんて!

「『人生は美しい、戦う価値がある』後半の部分には賛成だ。」

デヴィッド・フィンチャーの映画『セブン』のラストでモーガン・フリーマン演じる老刑事のサマセットはヘミングウェイの言葉を引用してそう呟きます。

しかし、今作『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のキャッチコピーは「人生は美しい」

デヴィッド・フィンチャーの映画は『セブン』の例に漏れず、絶望の中に僅かな希望を絶妙に織り混ぜた結末を迎えることが多く、例えばデビュー作の『エイリアン3』では、主人公のエレン・リプリーの死を描きつつも、エイリアンは絶滅し、囚人の一人は生き残ります。『ファイト・クラブ』ではタイラーの暴走を食い止めることには成功するものの、大規模テロ計画であるプロジェクト ・メイヘムを食い止めることは間に合いませんでした。

そんな映画を作ってきたデヴィッド・フィンチャーが人生讃歌を謳うなんて!



F・スコット・フィッツジェラルドの人生

『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』の原作は1922年に書かれたF・スコット・フィッツジェラルドの短編小説。

生まれてすぐ父親に捨てられ、優しい黒人の夫婦に拾われる映画版とは違い、小説版のベンジャミン・バトンはその容姿のために父親から疎まれつつも、家族の中でずっと生きていきます。

映画版では幼い頃にヒロインに出会い、彼女は生涯を通じてベンジャミンのよき理解者であり、パートナーでいつづけますが、原作ではヒロインとベンジャミンは大人になってからであい、彼女は若返り続けるベンジャミンに耐えきれず、自ら家を出て二度と戻ることはありませんでした。

ちなみに原作でのヒロインの名前はですが、映画版ではデイジーになっています。おそらくフィッツジェラルドの小説、『グレート・ギャツビー』のヒロインの名前からの拝借かと思います。

『グレート・ギャツビー』も『ベンジャミン・バトン』も作品の根底を貫くのは人生に対する哀しみです。

それは若くして成功を収めながらも、享楽的な生活に溺れ、堕落していくフィッツジェラルド自身の人生を写したものでもあったのでしょう。

大恐慌を境に人気も没落し、妻は心を病み、離ればなれ。そしてフィッツジェラルド自身は仕事の傍らアルコールに溺れるようになっていきます。

それらのことからフィッツジェラルドの人生観が決して明るいものではなかったことは容易に想像がつきます。

小説『ベンジャミン・バトン』も確かに幸せも描かれてはいますが、読み進めていくごとに、それらは忘却の彼方へ消え去る脆く儚い出来事だったという印象が強まります。

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