【映画レビュー】羊たちの沈黙

羊たちの沈黙(特別編) [DVD]

アカデミー賞主要5部門をすべて制覇した数少ない作品。サイコスリラーの名作です!

「羊たちの沈黙」スタッフ・キャスト

監督
ジョナサン・デミ
脚本
テッド・タリー
原作
トマス・ハリス
出演者
ジョディ・フォスター
アンソニー・ホプキンス
スコット・グレン
テッド・レヴィン

感想・レビュー

今までにアカデミー賞主要5部門をすべて制覇した作品は「或る夜の出来事」「カッコーの巣の上で」「羊たちの沈黙」の3作品しかなく、とりわけサイコ・サスペンス/ホラー系の作品が作品賞を獲ったのは異例ともいえます。

はじめてこの作品を見たのは小学生の頃でしたが、初めの30分くらいで怖くてたまらなくなり、見るのをあきらめた記憶があります。
劇中の精神病棟のあの雰囲気がものすごく不気味で恐ろしかったですね、、、。

鉄格子から伸びる何本もの腕。伸ばす先にいるクラリスと収監されている彼ら。
両者は完全に対称的なのですがまるでその腕はクラリスを引きずり込もうとしているのか、助けを請うているのか、ただの欲望でしかないのか。。。いずれにせよそのさまがとても怖かったです。

・レクター博士の魅力

アンソニー・ホプキンスの当たり役でもあるハンニバル・レクター博士。この映画において避けて通れないところだと思います。
「狩人の夜」のように、犯人が善人で理性的な落ち着いた人間のふりをしている、というのはそれまでも散見されましたが、レクター博士のそれは犯罪者でありながら紳士的であり、趣味も上品という、斬新なものでした。

ただし、レクター博士は単なる殺人者ではなく、「殺した人間を食べる」という異常性も持ち合わせています。

「世に野放しになっている無礼なやつを食らうのだ」というセリフがありますが、基本的には博士に対して失礼な態度や生活するうえで邪魔な人物(ハンニバルでいえばパッツィや前任の司書)が中心のようです。

クラリスに対して失礼な態度をとった囚人のミグスに対しては、それまでの冷静さを失くすほど怒りを露わにしています。
その晩、言葉だけでミグスを死に追いやるという離れ業をやってのけます。

異常者でありながら理知的かつ紳士的な態度。そして論理的な会話で心理的に人を追い詰める鮮やかさ。劇中では最高レベルの監視のついた独居房へ収監されていますが、囚人の身でいながらも専門誌に論文を投稿したり、世界中からファンレターをもらうなど人気も高い描写がなされていますが、現実の世界でもやはり独特の魅力のある悪役ですね。

続編のハンニバルではイタリア語を交えダンテの詩を解説したり、看守のバーニーにフェルメールの魅力を教えたりと教養高い人物としても描写されています。

・ストーリー

そして緻密に練られたストーリーがこの作品の最大の面白さでしょう。
ストーリーの大きな柱はバッファロー・ビルの逮捕ですが、
その目的に進む中でクラリスとレクターの関係はめまぐるしく変わっていきます。

ヒントを提示し、事件への道筋を示してくれる博士はまさに劇中では「父親的」な存在だとも言えるでしょう。
嘘の収容先の変更に関しても博士が寛容でいたのは、それがクラリスの本心ではないことを見抜いていたからではないでしょうか(逆に真の立案者であるチルトンは以前から殺意を抱いていた様子)。

唯一、別れのシーンで指が触れる描写。あれは唯一ロマンスを感じさせる描写であり、訓練生と囚人という関係性ではもはやない(きちんとした信頼関係、特別な感情が芽生えている)ことを示唆しています。

その直後博士の脱走の知らせを聞いた時も心配するルームメイトに「私のところには来ないと思う」とはっきりクラリスは明言しています。

前述したとおりストーリーの大きな柱はバッファロー・ビルの逮捕ですが、
映画の始まりと終わりを比べれば、これはクラリスの成長の物語であり、
レクターの自由を得るための脱出劇であり、前述したようにその両者が関係を構築していく物語でもあります。

特にこの作品のタイトルにもなっている「羊たち」は幼いクラリスが守ることのできなかったトラウマの象徴です。バッファロー・ビルにとらわれた上院議員の娘を助け出すことはクラリスのトラウマから抜け出すための大きな命題でもあるのです。

しかし、ラストシーンで「羊たちの悲鳴は止んだか?」と問うレクターに黙ったままのクラリス。果たして今回の事件をきっかけに羊たちの悲鳴はやんだのかは謎のままです。

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