宮本輝が99年に出版した小説を原作とした映画。成島出監督、佐藤浩市・西村雅彦主演のヒューマンドラマな作品です。
パキスタンのフンザ、カリマバード、スカルドゥなどでこの地域での長期撮影は世界初となる約1か月半に渡る長期撮影が行われました。
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「草原の椅子」の予告編
「草原の椅子」のスタッフ・キャスト
監督
成島出
脚本
加藤正人
奥寺佐渡子
真辺克彦
多和田久美
成島出
原作
宮本輝
製作総指揮
原正人
主題歌
GLAY「真昼の月の静けさに
出演者
佐藤浩市
西村雅彦
吉瀬美智子
小池栄子
黒木華
「草原の椅子」のあらすじ
ある日、憲太郎は幼時に実の母親から虐待を受けていた4歳の少年、圭輔に出会い、その世話を手伝うことになる。取引先の社長で同じ歳の富樫重蔵との仕事を越えた友情に助けられながら、憲太郎は圭輔へのいとおしさを深めていく。憲太郎はまた、趣味の店で出会った篠原貴志子に密かに惹かれる。
憲太郎は富樫とフンザに旅する計画を立て始めたが、衝動的に貴志子をフンザ行きに誘い、さらには圭輔を同行させざるを得ない状況になる。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%89%E5%8E%9F%E3%81%AE%E6%A4%85%E5%AD%90
草原の椅子 – Wikipedia
感想・レビュー
青春映画があるならばこの作品は『大人の映画』
青春映画と呼ばれる映画があります。眩しくて、でもその分だけ小さなことに胸を痛めて、そして成長していく、少し切なかったりする若い子達の映画。
だとすればこの作品は『大人の映画』ということが言えそうです。
紆余曲折を経て手に入れたそれぞれの現在。
しかし、理想だけではない、子供の頃の憧れとは少し違う、大人であること、現実の苦み。
ひょんなことから心を閉ざした四歳の子供、圭介と暮らすことになった遠間。
佐藤浩市
遠間を演じるのは佐藤浩市。
今作のような主役級はもちろんのこと、敵役や脇役、役柄もしがない中年であったり、コメディの作風、そしてドラマ映画まで本当に違和感なく好演されています。
本作でも平凡なサラリーマンの役を繊細に演じています。
遠間は妻とも離婚し、娘と二人暮らし。
人生の折り返し地点を過ぎ、等身大の日常を生きている。そんな印象を受けます。
そして、そんな遠間に50才で出来た親友、富樫。
西村雅彦
富樫を演じるのは西村雅彦。古畑任三郎でのドジ刑事、今泉慎太郎で有名でしょうか。
ただ西村雅彦さんご本人は割とシリアスな役がお好きなよう。
今作の富樫は独特の人懐っこさのあるカメラ店の社長役。表向きはひょうひょうとして明るくも、経営者として非情になりきれずそのために人知れず苦悩する、そんな人間味あふれる役柄です。
日常のリアル
そしてそんな遠間達の前に現れる圭介の存在。
この映画の出来事は夢物語や奇跡でもなく、日常のリアルとして彼らの人生を左右していきます。
妻と離婚し、独りの身で圭介を受け入れるかどうかの狭間で悩む遠間。会社経営の人員削減に胸を痛め、自分を責める富樫。
そして、実の両親から虐待を受け、4歳で見捨てられた圭介。
誰しも明るく振る舞いながらもどこか心に暗い影をもっている。
彼らだけではなく、この現実に暮らす私たちも、大なり小なりそうではないでしょうか?
圭介との最後の思いで作りとしてのパキスタン、フンザの旅行はまた、さまざまな大人の思いや悩みが導かれ、たどり着いた場所だとも言えます。
人生というのは捨ててしまうにはあまりにもったいない
どこまでも続く白い砂漠。その地域で世界初となる長期ロケが行われたフンザ。その雄大な風景は一見の価値があります。日本の雑踏から離れ、自分の人生を見つめ直す3人。
遠間役の佐藤浩市さんが本作のインタビューでこう発言されていたのが印象的だったのですが、
人生というのは捨ててしまうにはあまりにもったいない
大人だからといって決して生きるのが器用ではない、恋もすれば、傷つき人に戸惑うこともある。それでも人生は美しく、またいとおしい。
この映画を観ると、いつもそんな気持ちにさせられます。
ちなみに主題歌はGLAY。
『真昼の月の静けさに』
人生の苦味を表現したというこちらも必聴です。