【映画 レビュー】俺俺

俺俺 DVD通常版

三木聡監督作。それまでの三木作品からすると異色とも言える内容です。
岩松了、ふせえりなどの常連組に加え、今回は亀梨和也が33役を熱演しています。

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「俺俺」のスタッフ・キャスト

監督
三木聡

脚本
三木聡

原作
星野智幸

製作
長松谷太郎
若林雄介

製作総指揮
藤島ジュリーK.

出演者
亀梨和也
内田有紀
加瀬亮

「俺俺」のあらすじ

ことのきっかけは飲食店での些細な出来事であった。家電量販店で働く“俺”(永野)は、ある日飲食店にて一人で食べていたが、隣にうるさい耳障りな客が居たため、席を移動する。だが、その時、自分のトレイに見ず知らずの携帯電話が置いてあることに気付く。その携帯電話はすぐ隣にいた耳障りな客のものだと分かったが、“俺”はむしゃくしゃしていた為、そのままポケットにその携帯電話をしまってしまう。その後、携帯電話の持ち主の母から電話が来るのだが、“俺”は声マネをしてオレオレ詐欺を働く。

こうして、なりゆきでオレオレ詐欺を働いたその日から“俺”の世界に狂いが生じ始めるのであった。始めは携帯電話の持ち主の母が突然“俺”の家に来て“俺”のことを大樹という携帯電話の持ち主だと思っていて、大樹の母が持ってきたアルバムにはなぜか自分が写っているという出来事であった。そして、どうもおかしいと思った“俺”はすぐに実家へと向かうが、そこには別の“俺”がいた。

その後、実家の“俺”から連絡が来て、“俺”同士で集まる計画を立てる。そして、家電量販店で働く“俺”、実家にいて公務員の“俺”、大学生の“俺”が集まり、心地よい楽園、即ち自分だけのユートピアを築き上げるのであった。しかしそれは長くは続かず、やがて“俺”同士の殺し合いへと発展してゆく。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%BA%E4%BF%BA

俺俺 – Wikipedia

感想・レビュー

時代に寄せてきたなぁ

出来心からのオレオレ詐欺を発端として起きる『俺』自身の増殖。これまでほとんど時代性を作品に反映させてこなかった三木聡監督としては珍しいように感じました。

出来心からのオレオレ詐欺。その後ろめたさからかどんどん増殖していく様々な『俺』。

そして俺以外の俺はやがてお互いを削除するという排除行動へ向かって行く。

俺は何を意味しているのか?

結局この俺の増殖はオリジナルの俺がオレオレ詐欺を告白・謝罪することで収まっていきます。

地獄先生ぬーべーに百々目鬼という妖怪が出てきますが、それは自分の後ろめたさが自分の体に無数の目になってあらわれ、遂には人間としての人格すら奪われてしまう、という妖怪でした。それの意味するところは『自分自身の犯罪行為が誰かに見られているのではないか?』という思いが目となって現れたもの。

では今作における俺の増殖は何を意味していたのでしょうか?

一つはオレオレ詐欺という、『誰かに成り済ます行為』を表したもの。

だから勤め先の家電量販店の加瀬亮の顔もいつしか俺になってしまう。

もう一つは一種のパラレルワールドではないですが、自分の中にある様々な側面が俺といえ形で増えていったのではないでしょうか。

異色です

今作公開の2年前くらいの三木監督のドラマ『熱海の捜査官』も割と死後の世界をテーマにしたシリアスなものでした。

俺俺もどちらかといえばその系統の作品。

『図鑑に載ってない虫』や『転々』など、大切なテーマをくだらないテイストのなかに上手く落とし込み、あくまで明るいエンターテイメントであったそれまでの三木聡作品とは売って変わった作品になりました。

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